クローン人間についての考察。
編集長:今回は深刻かつSFを感じさせるテーマであるクローン技術についてやってみたい。これなら知識はともかく興味はあるから、まともな討論ができるだろう。
DL:前回の金融破綻は難しすぎましたものね。
青柳:このテーマなら任してくださいよ。SFマニアの意地を見せてあげます。
RRR:そんなもの見せて欲しくないけど、手頃でいい話題だよな。感情論や宗教論になる危険はあるけどな。
流しの竜:宗教っていうか、倫理の問題だよな。でも、はっきりいってしまうとここにいる連中は倫理感かけてるから、みんな賛成じゃないのか? ちなみに俺は賛成だけど。
RRR:人間が自分に都合いいようかってに作った倫理なんて、クソ食らえだ!
青柳:大賛成。だって、夢があるじゃない。
DL:わたくしは興味ありません。勝手にどうぞ。
編集長:私は……賛成だけど、あえてリベートのため反対派に回ろう!
流しの竜:おっ、やる気だね。これで、まともな討論になるってもんだ。
編集長:それじゃ、早速始めよう。いきなりだけど、人間が人間を作るっていうのはそうかな? 人間を作れるのは神だけじゃないのか?
RRR:にあわねえね。無信心どころか、神や仏なんか大嫌いのくせに。
編集長:まあ、普段はな。でも、今日は別人格だから。熱心な宗教家になるぞ。にらまれると怖いんで、宗教は特定しないけど……。
青柳:暗殺命令が出たりして。
編集長:やめてくれ! だから、宗教は嫌いなんだ!
DL:元に戻っているわよ。
編集長:そうだった、今は宗教家なんだ。
RRR:なんでもいいけどよ、人間を作っているのはしょせん人間だろ? 神様なんてホントにいると思っているのか? それともコウノトリが運んでくるとでも本気で思っているのか?
編集長:そ、そういう問題じゃなくて……。自然に生まれる人間ではなくて、人の手によって作られてはいけないというのです。
RRR:手じゃなかったら、何で作るんだ?
編集長:そういうことじゃなくて……。
DL:品がない……。
流しの竜:ようは生命の誕生に、人が介入してはいけないってことだろ。
編集長:そう! それがいいたかったんだ!
青柳:しっかりしてくださいよ。編集長じゃ不安だから、僕も反対派に回りましょうか?
編集長:いや、このままでいい。──それで、どうなんだ? 人の誕生に、人が関与していいのか?
RRR:逆に聞くが、なんで関与したらダメなんだ? それにクロ−ンっていうのは、遺伝子のコピーだろ。オリジナルが存在しているんだから、存在自体が悪っていうわけじゃないだろ?
青柳:さらにいわせてもらうと、現在の技術ではSF映画みたいにオリジナルの記憶や性格はコピーできません。それどころか、容姿や年齢すら別物ですからね。クローンなんて、名ばかりですよ。これがクローンなら、双子は完全なクローンになってしまう。兄弟もある意味クローンです。そもそも、子供は親のクローンなんですから。
編集長:それは……へりくつです。
一同:はぁ?
RRR:もうちょっと、気の利いた反論はないのかよ? それじゃ話進まないぞ。
編集長:ですから、人の手が……。
RRR:人の手、人の手っていうけどよ。しょせん、ガキなんてやることやんなきゃ、できないわけよ。それが人の手じゃなくて、なんだっていうんだ? そもそも、相手を選ぶっていうのは立派な人の手だと思うぞ。子孫に引き継ぐための優れた遺伝子を選んでいるんだからな。
編集長:ですが、それは自然のことで……。
RRR:誰が、それを、自然なことだって決めたんだ? 今までそれしか知らなかっただけじゃないか。遺伝子操作にしろ、クローン技術にしろ、今まで人間が知らなかった新しい方法っていうだけだと、オレは思うぞ。単に新しいものだから反対するっていうのは、頑固で融通が利かない年寄りの理論だ。
青柳:なんか、燃えてますね。
DL:権威と常識の破壊が、ロックンローラーの使命だとおっしゃる方ですから……。
RRR:どうなんだ? 人間はわいて出てくるもんじゃねえ。そこには人の意志もあれば、手も加わっているんだ。それを否定するっていうんなら、小学生から保健体育をやり直した方がいいぞ。
編集長:しかし、同じ人の手といっても、ものごとには限度っていうものがある。クローンというのは、その限度を超えていると思うんだけど……。
RRR:だから、その限度を決めたのは誰だって聞いているんだ。人間だろ? 神でも仏でもねえ。ただの人間、それも保守的な年寄りだ。
編集長:仮に人間が決めたことだとしても、それには正当な理由があります。
青柳:なんです、その理由って?
流しの竜:聞かせてもらおうじゃないか。
編集長:それは、良心です。
DL:馬鹿馬鹿しい。結局は抽象的な物に逃げるんですわね。宗教の悪い癖だわ。最後には神の意志だとか、運命を持ち出す……。「良心が痛まないか」なんて、人にいわれることじゃありません。自分自身だけの問題なのです。実行前から自分が耐えられないほど良心の呵責があるのなら誰もそんなことは実行しませんし、呵責に打ち勝って実行してしまったのならあとは耐えるしかないのですが……。多くの宗教では、その呵責こそが罪の償いだとしますが、それを感じなければ罪ではないということでしょうか? 人を殺しても、良心の呵責を感じなけれなば罪ではないのでしょうか? 大義名分があれば、殺人も許されるというのは十字軍で見られたことですが……。
流しの竜:テーマがずれていますけど……。
DL:最後まで聞いてください。──いいですか、逆もまた真なり。私は良心の呵責を感じることが、すべて罪かといいたいのです。前回も話題になりましたが、あなたはいくら拾ったら……ネコババしたら、良心の呵責を感じますか?
編集長:5千円。
RRR:ええと、1万円ぐらい。
流しの竜:前はなんていったかな? 2万円ぐらいだったかな?
青柳:僕も覚えてませんよ。そんなことは、そのときの気分しだいでしょう。
DL:おわかりですね。良心には個人差があります。それどころか、その時々の気分でかわるものです。そんなものを物事の判断の基準にして良いのでしょうか。
流しの竜:辛辣だな。なんか、占い師らしいというか、らしからぬというか……。
青柳:なんにせよ、良心がクローンに反対する理由にはなりませんね。実際にやろうとする人間には罪の意識がないわけですから、それに良心を求めることはできません。
編集長:わかったよ。宗教面というか精神面からの反対はもうやめる。だけど、キリスト教にとっては大変な問題なんだよな。男女の交わりなしに産まれる子供っていうのは、キリストだけでなくてはいけないわけだし……。まあ、深くは追求しないでおいて、もっと実務的な問題にいこう。
流しの竜:実務的な問題っていうと?
編集長:権力者や金持ちが自分のコピーを作ることだ。そのまんまコピーが無理でも、後継者としてなら可能だろ。それに、臓器の移植に使われる危険もある。臓器だけ取り出して、さようならってわけだ。
青柳:それは問題ありませんよ。最初にもいいましたけど、記憶や性格はコピーできません。もちろん、能力もね。人間の能力で、遺伝子によって決まるのは、ほんのわずかなことだけでしょう。全く同じ教育、全く同じ環境で育っても、絶対に同じ人間になるはずはありません。クローンも人間ですからね。親の望むとおりに育つはずがない。
流しの竜:それにさあ、子供を後継者につけるのだってさんざん反発食うっていうのに、クローンを後継者につけようなんて、他の人間が許さないよ。どこかの大統領みたいな独裁者ならともかく、会社の社長クラスじゃできないことだね。独裁者だったら、最初からなにいっても無駄だし。
RRR:やっぱり、記憶と能力、それに外見……ってことは、年齢だな。そこまでコピーできなきゃ、別人だもんな。
編集長:そ、それなら、臓器の問題はどうだ? 臓器売買なんて、すっげー問題だぞ。
青柳:もし、赤ん坊の状態で母親から生まれるんなら、それは立派な人間です。それを殺せば殺人罪になりますし、罪に問われても臓器を取ろうというんなら、クローンに限ったことじゃなくなるでしょ。たしかに、拒絶反応がない(遺伝子が同じだから)臓器移植手術は魅力ですけどね。
編集長:そ、それじゃ大人の状態でクローンができたらどうだ? ある意味では人間といえないから、そこからなら臓器が摘出できるんじゃないか?
青柳:直接、大人のクローンが作れるんなら、臓器だけを単独でコピーできますよ。結局のところ、海の物とも山の物ともつかない技術を判断しようが無くて、とりあえず反対しているんです。研究して、実現してから、ヤバイと思ったらそれを禁止していけばいいんじゃないですか? まだ夢の段階の物を、あれこれ議論しても仕方ないと僕は思うんですけどね。
編集長:でも、転ばぬ先の杖っていうことわざもある。
青柳:杖をつくのは結構。だけど、転ぶのがイヤだからって、歩こうともしてないじゃないですか。車椅子の少女じゃあるまいし、歩くのを怖がってどうするんです。
流しの竜:この勝負、賛成派の勝ちみたいだな。まあ、編集長もホントは賛成派なわけだから、当然といえば当然だけど……。
編集長:他に気の利いた反論が思い浮かばなかったんだ。もし、他に問題点があるっていうんなら、あらためて議論してみる価値はあると思うんだけど……。あっ、宗教的な問題は無しね。すべての人類に共通する問題点だけに限定します。
RRR:とりあえず、今はクローン賛成派の勝利! 文句あるやつは、かかってこい!
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1998.1.9