ガイドライン法案成立。そこに見られる日本の役割。


参加メンバー
 高城陽介(以下、高城):司会進行役。正義の味方として反対。
 葉山有紀(以下、葉山):軍需産業と関わりがある? 法案賛成派。
 真崎孝治(以下、コージ):自衛隊がある以上、ガイドラインは当然。賛成派。
 氷河紗織(以下、紗織):戦争は嫌い。反対派。
 加藤千鶴(以下、千鶴):紗織の親友。誘われて参加。つきあいで反対派。なぜか場を仕切っている。
 エイミ・ワシントン(以下、エイミ):熱血アメリカ人。アメリカはすべて正しい。もちろん賛成派。

高城:久しぶりの更新となったこのコーナー、テーマは日米防衛協力のための指針関連法案──通称ガイドライン法案です。

葉山:なに? もう一度言ってみて。

高城:日米協力……ええと。

コージ:日米防衛協力のための指針関連法案。

千鶴:なんや、ややこしい名前やな。早口言葉みたいや。

葉山:なんであなたがいるのよ。

紗織:私が誘ったんだけど……ダメだった?

葉山:紗織ちゃん、あなたもいたの? 珍しいわね。

高城:僕が読んだんだ。

コージ:部長が呼んだ紗織ちゃんが、千鶴ちゃんを呼んだ……。ややこしいな。なんで呼んだの?

高城:今回のメンバーだと、反対派いないだろ? だから、反対しそうな人呼んだんだけど。

葉山:確かに私は賛成よ。

コージ:俺も賛成。

エイミ:ワタシも賛成でース!

葉山:あなたもいたのね。……まあ、確かに反対派がいないと議論にならないわね。

紗織:でも、私あんまりわからないよ。で、心配だから千鶴ちゃんを誘ったんだけど……。

千鶴:うちもようわからへんで。一緒に来て言われたから来たんやけど、あてにせんといてや。

高城:人選を誤ったかな。でも、他に反対しそうなのは……。

葉山:金谷さんは? ユーゴのときも反対だったし、反対するんじゃない?

高城:今回は、都合が付かなかったんだよ。あと、ちょっとマンネリ気味だし。

コージ:そうだな。うちの連中もどっちかって言うと賛成派だろうし、あと誰がいたっけ?

千鶴:京極はんは?

葉山:あの馬鹿だけは呼ばないで。

高城:僕も嫌だ。

コージ:同じく。

千鶴:そんなら、しゃあないな。さっさと、始めましょ。

高城:ええと、テーマは最初に言ったようにガイドライン法案。まず、多数派の賛成派から意見を聞こうか。

エイミ:ワタシ、からいきまーす。日本は、アメリカの同盟国なんだから、協力するのは当たり前です。考えるまでもありませーん。

高城:まあ、そりゃそうなんだけど、問題はどこまで協力できるかだろ? 無条件って言うわけにはいかないんだからさ。

エイミ:デモ、戦争になったら、ゴチャゴチャ言って、いられないんじゃないですか?

紗織:日本には、憲法……ええと、何条だっけ?

高城:9条、戦争の放棄ね。

紗織:そう! だから、直接的なことは出来ないんだよね。

コージ:まあね。でも、物資の輸送や、空港を使用させることぐらいはしてもいいんじゃないか? それに、憲法9条について言わせてもらえば、自衛隊持ってる時点ですでに違反してるよ。

千鶴:ガイドライン法案で焦点になっとるのも、そのあたりやからな。憲法の改正までしてしまお、言うとんのやろ?

高城:そうだろうね。でも、まあ今はそこまで考えないでおこうよ。とりあえず、今回は日本がアメリカの軍事行動に協力するという一点のみについて、やっていこう。

葉山:そこで問題になるのが、どういう時に協力するか、ガイドライン法案を適用するかよね。

千鶴:法案では周辺事態としか、言ってへんもんな。これだけでは、なんやわからへん。

コージ:事実、これは定義されてないんだから、わからないのも当然だよ。日本にも被害が及びそうな場合ってところじゃないのかな?

葉山:そうなったら、協力どころじゃないと思うんだけど? 被害が及ぶかも知れないとわかってから、国会の承認を得て自衛隊動かしたって間に合わないんじゃない?

千鶴:そりゃそうや。ミサイル飛んできとんのに、のんきに国会ひらいとる場合とちゃうわな。

高城:それはもう周辺事態じゃないよ。直接、日本が関わっているんだから。

千鶴:そやかて、日本に被害が及ぶかも知れへん時言うたら、他にどないな時がある言うねん。

葉山:結局、そこなのよ。なにをもって、危険と判断するかは重大で難解だわ。もし、中国と台湾の間に紛争が起きて、アメリカが台湾側で介入したとするわよね。そうなると、日本に基地がある以上、すでに危険なレベルとも言えるでしょ?

紗織:じゃあ、やっぱり、基地から無くしていかないといけないの?

エイミ:ノー! それは、日本の裏切りです。アメリカと日本は同盟国。死ぬも生きるも一緒です! アメリカの敵は日本の敵、日本の敵はアメリカの敵。アンダスタン?

コージ:中途半端な英語使うなよ。まあ、言ってることには、一理あるけどね。そんなに巻き込まれたくないんなら、アメリカとも手を切って、世界中、どこの国とも対等に付き合うことだな。そんなことが可能なら、だけど。

葉山:あくまでも中立を保つ……ってことよね。口で言うほど簡単じゃないのはわかるわよね?

高城:北朝鮮とも、韓国とも同じ付き合いをしろと……。

葉山:そう、今ある問題はさっさと片づけるか、それが無理なら棚上げにしてでもよ。いつまでも引きずっていたら、韓国側と思われても仕方ないでしょ? 中国と台湾だって一緒。台湾の主権も認めつつ、中国の主張──台湾は中国の領土っていうのも認めなければならない。そんなの不可能でしょ?

コージ:今なら、ユーゴ問題だってそうだ。日本はアメリカ側なんだから、ユーゴスラビアから見れば敵だろ? なにがきっかけで、アジアの国がユーゴみたいに国際社会──アメリカ──の怒りをかうかわかったもんじゃないから、その時にアメリカに味方しないってはっきり今の日本が言えると思うか? それが言えないってことは、その国から見たらアメリカの味方なんだ。巻き込まれるのは当然。その時に、日本がなにをすべきか。それを定めたのが、ガイドライン法案だと思うんだけど?

葉山:戦争の放棄なんて、しょせんは綺麗事よ。どこの国だって「国際的な問題は武力で解決する」なんて憲法は持ってないんだから、まずは政治的な解決を目指すわけでしょ? それがダメだから、武力行使になるわけだから、よっぽど追い込まれなきゃ、戦争なんてするはずないわ。まあ、今のアメリカは、かなり軽はずみに武力使うけどね。あれは例外よ。

高城:でも、国外において軍事行動をとらないっていうのは、戦争の放棄が定められているからだろ? それだけでも価値はあると思うんだけど。

葉山:平和なうちはそれでとおるけど、ホントに戦争になったらどうするの? 攻められるだけで、反撃できないの? ミサイルを撃ち込まれ放題で、こちらからは何もしないわけ?

高城:そういうときは、アメリカに任せるとか……。

エイミ:まさかせなさーい! アメリカのォ、軍事力はァ、世界一ィィィッ!

葉山:それじゃ、主権国家なんて言えないわよ。だいいち、アメリカに頼るだけ頼っておいて、「協力できません」じゃすまないことぐらいわかるでしょ? そういう事態になった際に、どういった協力が出来るか、それがガイドライン法案なんじゃなくて?

高城:そりゃそうだ……。いや、僕は反対派なんだから、ここで納得しちゃダメなんだよな。

紗織:先輩、頑張って。

高城:ははは、頑張って、言われても……。

千鶴:ここは退きまひょ。まあ、日本の周辺でなにかけったいなことが起きたとして、そこにアメリカが首を突っ込んだ場合、いったい日本はなにをすべきか……それが次の問題や。

コージ:直接戦闘が出来ない以上、後方支援だけなんだよね。それって、そんなに問題なのか?

紗織:具体的にどういうことするの?

コージ:武器なんかの運搬、負傷者の手当、非難する民間人の受け入れ、そんなところじゃない?

紗織:負傷者の手当や民間人の受け入れなんて、当然やらなきゃいけないことじゃないの? 私、そんなのまで反対しないわ。

高城:でも、それだって立派な戦争協力なんだよ。傷の治った兵士は再び戦場に行くんだし、民間人とはいえ戦争している国の人間なんだから。

紗織:じゃあ、怪我して死にそうな人を、放っておけっていうの? 戦火から逃げてくる人を、追い返せっていうの?

高城:そう言う人もいるね。病院関係者でも、軍人の手当は出来ないって言ってるし……。技術的な問題もあるんだけど、「人殺しの治療は出来ない」って公言してる人もいたから。

紗織:好きで人殺してるんじゃないのに? そんなの酷いよ……。

千鶴:そない落ち込まんといてや。うちまで悲しくなってくるわ。──それはそうと、いきなりシビアなこと聞くで。負傷者の治療や、物資の輸送、その金は誰が出すんや?

高城:そりゃ、日本政府だろ? 協力しますと言っておいて、請求書は回せないでしょ。っていうか、関係ない請求書まで日本に回されそうじゃない? 今までの関係見てると。

千鶴:それは嫌や。やっぱ、金が絡むと、ナニワの商人としてはやな……。

葉山:あなた、お金にしか興味がないの?

コージ:葉山さんに言われたらおしまいだな。

葉山:なによ? どういう意味?

高城:まあまあ、それよりも、ちょっとまとめるね。まず、日本がアメリカ軍の活動に協力しなければいけないかどうかについては、日本の周辺で、しかも日本に関係があることについては、協力しないわけにはいかない。──そうだね?

紗織:それは仕方ないわよ。そりゃ、少しは日本のことも考えてやってくれてるんでしょ?

千鶴:問題は、何を持って日本に関係あるかっていうことやろ? その定義が曖昧なままでは、その場その場で好き勝手に判断されてしまう危険があるゆうことや。

葉山:もちろん、そのあたりはこれからの議論で煮詰めていくでしょうね。今、国会は他の法案で忙しいみたいだけど、このまま放っておいていい問題じゃないからね。

高城:で、協力する以上は、中途半端なことは出来ない。

紗織:だって、困っている人を放っておけないもん。

千鶴:あかん! 情で物言うたらあかん! 問題は銭や銭!

コージ:……言い方はともかく、それも大切だよね。実際、どれくらいの額がかかるのかも、考えてみないと。

葉山:だいたいねぇ。日本人は平和ボケしてるのよ。いざとなったら、「協力できません」じゃ済まされないってことを、きちんと認識しなきゃダメ。お役所仕事みたいに「規則ですから」じゃすまないのよ。人が生きるか死ぬか、非常事態って言うのは、そういうことなんだから。

高城:非常事態に慌てないための法案か……。やっぱり”非常”なんだから、普通の感覚で論じるのは無駄なのかな? 綺麗事は通じないと……。

コージ:でも、出来るうちに議論だけはしっかりしておかないと、いざというとき乱用されたり、使い物にならなかったりするからな。何が起きても大丈夫なように、しっかり準備しておかないと。

葉山:乱用の恐れがあるという理由で法案そのものに反対する人がいるけど、しっかりした内容の法案を作り上げれば、それ自体が乱用の防止になるわ。なんの対策もとらずにほったらかしよりは、乱用できないルールを作る方が現実的ってことね。


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1999.6.10