アメリカ──銃社会の罪と罰


編集長:久しぶりの特別会議。そのテーマは、これまで以上に深刻で難しいテーマ、アメリカの銃社会についてだ。

RRR:日本に住んでるオレたちにはピンとこないけど、アメリカでは銃なんてどこにでもあるんだろ? 物騒っていうか、無茶苦茶な社会だよな。そんな国が世界の警察だなんて威張ってていいのかね?

青柳:でも、銃はアメリカの伝統で、象徴みたいな物ですよ。それを他の国の人間がどうこういうのはおかしいです。あくまでもアメリカの問題ですから。

DL:それはそうですけど、人が間違っているのを黙って見ていていいのかしら? アメリカだって、インドが核実験をすれば抗議するし、中国で人権が守られていないとやっぱり抗議するでしょ? 自分は文句をいうけど、いわれたくはないっていうのは、わがままというものですわ。

流しの竜:とりあえず、観光でもアメリカ行くの怖いよな。銃を撃ちに行く奴もいるけどさ。それでもすれ違った奴が銃を持っているかも……なんて考えたら、思わず振り返ってしまうよな。後ろから撃たれそうで。

編集長:そこでだ、アメリカがどうして銃社会と呼ばれるようになったのか、そしてそれが他の国、はっきりいってしまえば日本にどういう影響を与えるか、主にその2点について論議してみたい。

青柳:それじゃあ、歴史的な背景を、僕が説明してあげますね。昔、アメリカ大陸には、ネイティブ・アメリカンと呼ばれる人たちが住んでいました。俗にいうインディアンですね。後にアメリカに移住した人々は、インディアンたちの土地を二束三文で買ったり、奪ったりしながら町を作っていったんです。もちろん、インディアンたちも黙って追い払われたりはしません。必死の抵抗をしました。それでも白人たちは、どんどん陸地深くへと進み、その土地のインディアンを殺しては土地を奪っていったのです。弓や石斧ぐらいしか持たないインディアンに対して、アメリカ人たちには銃があります。銃さえあれば、土地は切り取り放題。早い話、強盗が認められていたみたいなものですね。

流しの竜:身も蓋もない、いい方だな。でも、その時代の名残で、いまだに銃を持っているってわけだよな。

青柳:ええ、もっとも、その銃口はインディアンたちではなく、アメリカ人自身に向けられていますけどね。

編集長:伝統といったって、悪い伝統はやめるべきだ。アメリカは、日本人が刀を持ち歩くことを野蛮だといって、それで日本人は刀を持たなくなったわけだから、今度はアメリカ人も野蛮な銃を持たなければいい。

青柳:理屈ではそうなんですけどね。いろいろ問題があるんですよ。

編集長:全米ライフル協会と、武装する権利だな。

RRR:ライフル協会っていうのはともかく、武装する権利ってなんだ? そんな権利があるのか?

青柳:ええ、アメリカでは憲法に定めらているんですよ。ですよね、編集長?

編集長:ああ、英語にがてだし、アメリカの法律なんか良くわからないけど、憲法の中にそれらしき条文がある。だけど、それって解釈次第なんだよな。訳してもピンとこないわかりにくい条文なんだけど、無茶苦茶簡単にいうと「人民は自分の命と財産を守ることができる」みたいな意味になるのかな? 具体的な手段が明記されてないから、取りようによっては銃を持って自分の身を守れるとか、民兵組織を作れみたいなふうにも解釈できる。否定的に見れば、自分の命を守るっていうのは当然のことなんだけど。

流しの竜:そりゃそうだ。「自分の命を守ることができる」なんて、いわれなくてもわかってる。守りたくない奴なんかいねぇよ。

青柳:でも、有力な意見は、これを自衛権──武装して身を守ると解釈してるんですよ。

編集長:憲法っていうのは、そう簡単に変えられないから、これを覆すのは大変なんだ。政治家たちが、一致団結しないとできることじゃない。

DL:そして、それを妨害するのが全米ライフル協会だと……。

編集長:そう、アメリカ最大の献金組織(こんないい方があるなら)。バックには軍需産業がついているから資金に困ることはないし、実際に銃を持っている人間たちからの支持も当然のごとく強い。

RRR:政治家が金に弱いのは、どこの国でも同じことだよな。しかも、武力持ってるからな。たちが悪いよ。

流しの竜:武器の元締めだから、武力はあるわな。

DL:でも、銃を無くそうって考える政治家だっているでしょ? そういう活動だって盛んなわけだから、そういった人たちを票田にしている政治家たちがいるはずだわ。

青柳:銃規制に本気で乗り出したら、命がいくつあっても足りませんよ。武装するという当然の権利が侵されれば、その権利を守るために戦わなければいけませんからね。そういうときのための銃なんですから。

編集長:ちょっいい方が物騒だけど、そんなとこだろうな。──なんにせよ、銃規制はちょっとやそっとのことではデキやしないんだ。平和ぼけした日本人にはわからないことなんだろうけど、やっぱり銃は必要だとアメリカ人は感じているんだから。

流しの竜:無くすのが無理だとしても、せめてもう少し厳しくはできないのか?

青柳:実はアメリカでも銃を持ち歩くことは違法なんですよ。基本的には銃と弾丸は別に保管し、家の中でも厳重に管理しなければいけませんし、持ち運ぶときは頑丈な鍵付きのケースに入れないといけないんです。もちろん、弾なんか込めちゃいけません。

流しの竜:それが守られてないってか……。

編集長:そうだな。幼児がいたずらして暴発させたり、子供が学校に持っていったりするのは、最初から間違いがあるんだ。

DL:学校に持っていくといえば、最近のアメリカでは中学生や高校生の乱射事件が相次いでいますわね。いったい、どうしたんでしょう?

RRR:おもちゃを持ったら、試してみたくなるのが人情。だけど、試したらどうなるかがわかっていれば、実際に試したりはしない……はずなんだけどな。

編集長:日本の子供もそうだけど、想像力がないっていうのか、将来の夢がないんだよな。

青柳:そうですよね。刑務所に入るっていうのがどういうことかわかっていたら、絶対に犯罪なんかしないと思うんですけど。

DL:そうですわ。お風呂が3日に1回なんて、絶対に我慢できません!

編集長:そ、そういう問題じゃ……。

RRR:いや、オレもそう思う。風呂ん中で、好き勝手がなれないんじゃ、生きている意味ねぇよ。

編集長:だから、そういう……。

流しの竜:刑務所の中って、競馬できるのかな? テレビ中継ぐらい見られるかもしれないけど、馬券は買えないよな。

編集長:……。

RRR:いじけるなよ。……話を戻せばいいんだろ。銃っていうのはさ、返り血がつかないじゃん。だから、乱射事件なんか起きるんだよな。罪悪感が薄いもん。

青柳:そうです。ミサイルの発射ボタンは押せますが、直接人を殺すのは辛いですよ。銃も引き金を引くだけですからね。それだけでは、頭の中で人の死に結びつかないんです。こんないい方はしたくありませんが、ゲーム感覚で撃ててしまうんです。

編集長:最初に戻るけど、そんなものを野放しにしてるっていうのが問題だな。まだ返り血を浴びる刀のほうがましだ。

流しの竜:編集長は日本刀マニアだから……。辻斬りはしないでね。

編集長:誰がするか! そんなことよりも、アメリカが銃を野放しにしているせいで、日本にも影響があるんだよな。

流しの竜:深く考えずに銃にあこがれて、それがエスカレートすると実際に持ちたくなる。

RRR:それだけじゃないぜ。アメリカに行けば、簡単に手にはいっちまうんだ。密輸する奴も出てくる。

青柳:麻薬なんかは原産国でも違法で、時には他国の警察組織も協力して取り締まることもできますけど、違法じゃない銃は取り締まりようがありませんからね。

編集長:でもなぁ、あれだけ事件が頻発していても、いっこうに規制が進まないアメリカっていう国が信じられないよ。

青柳:それは日本にでも同じでしょう。あれだけ汚職事件が相次いでも、規制が進まないんですから。

RRR:所詮、権力持ってる奴にはかなわない。それを変えようと思ったら、それこそインドネシアみたいに、実力行使というか、落ちるとこまで落ちないと。大統領を辞任させるのに、500人以上が死んだわけだからさ。もっとも、直接の死んだ原因は、別のところにあるだろうけどさ。

編集長:そうだね。インドネシアでは方法がまずかったから、大惨事になったけど、あの情熱とパワーは見習わないといけない。あんなの見せられたら、もう選挙で棄権なんてできないな。

青柳:民主主義っていうのは、とかく時間がかかるものですから、ゆっくりと、本当にゆっくりと変えていかなければいけないんですよね。

RRR:しょせん、民主主義なんて、まだ日本じゃ100年、フランス革命からでも200年だ。その間も戦争とかあって、政治形態そのものが成長しきれてないんだよな。試行錯誤を繰り返して、より良い政治と社会を作っていこうじゃないか。それができるのが民主主義なんだから。

一同:おぉー! きれいに締めたぞ。

編集長:でも、自分でまとめたかったな……。


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1998.5.24