報道とプライバシー、そして知る権利。


編集長:それにしても、先日のダイアナさんの事故、というより事件には驚かされた。

DL:そうですわね。まさか、こんなことで彼女の生涯に幕が下りるとは、思いませんでしたわ。

RRR:あのパパラッチっていう奴らは、なんとかならないのか? 日本のワイドショーよりたち悪いじゃないか。

編集長:まあ、どちらがたち悪いかはともかく、報道の姿勢というものには疑問を持たざるを得ないな。

青柳:とはいえ、彼らの行動の背後にはその写真を買う出版社と、それを見たがる一般市民がいるんですよ。

編集長:そうなんだ。人間ってやつは基本的に好奇心旺盛だから、他人──特に有名人のことを知りたくて仕方ないんだよな。

RRR:そんなのは、好奇心っていわないぜ。スケベ根性っていうんだ。

流しの竜:いえてる。知りたいからって、知っていいことと悪いことがある。誰が、誰とつきあおうと、そんなのは個人の問題であって、俺たちがどうこういうことじゃないよな。

編集長:でも、やっぱり知りたい……。

DL:奥さん、聞きました? 隣の奥さんったら……っていうやつね。

RRR:えらくリアリティがあるな。普段からやってんじゃないのか?

編集長:話をそらすな。このコーナーは、真面目にやってくれ。

RRR:わかったよ。──それで、一般市民なんだけど、本当に知りたいのかな?

編集長:と、いうと?

RRR:めんと向かってひとりづつ、現在の報道の姿勢について質問すれば、たいていの人は批判的なことをいうんじゃないか? 現に世論調査では、そういう結果になっていたと思うぞ。

DL:聞かれれば、そう答えるでしょうね。世論を敵に回したくないから。

青柳:世論って、みんなが嘘をついて出来上がるものなんですか? 本当は違う意見なんだけど、みんなにあわせようとする。でも、みんなは本当は違う意見で、他のみんなが装っている姿に合わせている……。本当は芸能人のスキャンダルを知りたいけど、そんなこといったら悪者扱いされてしまうから、表向きそういう報道を批判しつつも、週刊誌を買う。

RRR:最低だな。

青柳:民主主義なんだから、多くの人が望めば、その望みはかなえられなければならない理屈なんだけどね。

編集長:それはちょっと違うんじゃないか? きちんと、手続きを踏んで法律になればともかく……。

青柳:そうですよ。きちんと手続きを踏んで、法律になってしまえば、何だってできるんです。

流しの竜:でも、憲法ってものがある。

青柳:憲法も変えられます。国民の8割も9割も賛成すれば、変えざるを得ないでしょう。それでも憲法を改正しなければ、それはそれで問題ですから。

RRR:そう考えると、民主主義ってやつもあやういな。

編集長:民衆ってやつは流されやすいし、直接の責任がないと思うと無茶もするからな。古代ギリシャは、そうやって滅んでいったんだ。

DL:古代ギリシャ……。でも、そんな時代になったら大変ね。たしか、古代ギリシャにはオストラコンだっけ? 陶片追放ってやつ、そんな制度もあったわよね?

青柳:ええ、気に入らない人物の名前を書いて投票するんです。そして、投票数が一定数以上だと、その人物が追放されるっていう制度です。本当は危険人物を密告する制度なんですけどね、やっぱり悪用されちゃいました。

RRR:現代風にするならば、気に入らないやつは片っ端から死刑ってところか。ついでに、ワイドショー的にいうならば、美人はみんな裸にされるな。

DL:そんな、こまりますわ。

一同:……。

編集長:そ、それはさておき、写真を撮る側の問題はどうだろう?

流しの竜:金だよ、金。まさか、本気で「報道の自由」や「国民には知る権利がある」なんて、いってりゃしないだろ。もし、それが本気なら、芸能人なんか追っかけないで、政治の不正を暴くとか、戦場カメラマンになってるはずだからな。

編集長:そのとおりだ。

RRR:誰かがてめえ(カメラマン)のカミサンののケツの穴を見たいっていえば、やつらは報道するかな?

編集長:したら立派なもんだ。

青柳:あのう……もうちょっと、品のあるたとえは無いものでしょうか……。

流しの竜:でも、そういうことを想像してみるのはいいことだよ。

RRR:なんだ? ケツの穴か?

流しの竜:違う! なんで、そんなもん想像するんだ! 自分の身内が報道の犠牲になったら、ということだよ。

青柳:それができたら、あらゆる犯罪がなくなりますよ。盗まれたらいやだし、殺されるのもいやでしょうから。

流しの竜:追っかけ取材や、盗み撮りそのものを犯罪にするという意見もあるだろ? それはどう思う?

編集長:難しい問題だよな。報道が規制されれば、その陰で悪事を働く奴らがでてくる。特に政治家なんかは、そういうことが得意だからな。

青柳:ある意味では、犯罪もプライバシーですからね。現行犯でなければ写真の一枚も撮れないとなると、報道機関の力は極端に弱くなります。報道の規制は法律で行うべきではないでしょう。あくまでも、自主的に行うべきです。撮る者も、買う者も、そして見る者もね。

DL:みんなが、くだらない週刊誌や、ゴシップばかりをあつかう新聞のたぐいを買わなければいいってことよね。そうすれば、自然に出版社も姿勢を変えざるを得ない。持ち込まれるスキャンダル写真や記事を買わなくなる。

RRR:まあ、それが理想だな。これからは、くだらない週刊誌を電車の中で読んでいるやつがいたら、白い目で見てやろうぜ。

編集長:日本人は他人の視線を気にしなさすぎるからな。人前でキスしたりするのがけしからんっていってるオヤジたちは、電車の中や職場でヌードの掲載されているような週刊誌や新聞を平気で読む。

流しの竜:スポーツ新聞なんかおもてうら無いから、そんな写真がこっちむいてたりするんだよな。

RRR:そんなやつは電車の窓から、放り出しちまえ!

DL:セクハラオヤジには、こまったもんです……。

RRR:これまた実感がこもっているな。

編集長:結論としては、低俗な週刊誌や新聞は買わないということだな。報道よりも、むしろ国民ひとりひとりがモラルを持つことだ。

青柳:低俗週刊誌を読んでいるあなた。あなたの先をずっとたどっていくと、パパラッチがいるんですよ。それをお忘れ無く。

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1997.9.3