何故、少年はきれるのか。


編集長:ホントのこというと、こういうワイドショー向きな話題はしたくないんだけど、あんまりにもひどいから……。

RRR:やらざるを得ないわなぁ。

青柳:でも、いつものペースでちゃかすには、ちょっと重いテーマですよね。

DL:やる前から悩んでも仕方ありませんわ。どうせ、いつもどおりにしかできないんだし、始めましょう。

流しの竜:始めるといっても、どこからやろうか? 「神戸」まで、さかのぼる必要はあるかな?

編集長:ひとつのきっかけにはなったと思うよ。中学生っていうキーワードは、このとき最初に出ているから。

青柳:他の犯人っていうか、容疑者……なんていえばいいんでしょう? 加害者たちには、「神戸」の事件を起こしたのが自分と同じ中学生だっていう感覚が、あの事件以来心のどこかに引っかかっていたんでしょうね。

DL:どういうこと?

青柳:あいつにできるんなんら、自分にもできる。中学生にも、人が殺せるんだっていう知識を与えてしまった。

流しの竜:いじめの自殺が相次いだのと同じだね。全く新しいことをするのは難しいけど、他人のまねっていうのは容易にできる。

RRR:大蔵省だか、道路公団だかの幹部まで連鎖的に自殺するんだから、中学生が他人のまねをするっていうのは、当然だよな。

編集長:真似っていうのは、ようするに集団心理だよな。彼らはテレビや新聞っていうメディアを通じて、集団心理に陥ったわけだ。

流しの竜:集団心理って、昔流行ったあれだよな。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ってやつ。

RRR:そのノリで、殺人(未遂)とはな……。やってらんねえよ。

編集長:どうして、そんなに軽いノリで事件が起こせるんだろう? 「警察官を殺してまで、拳銃が欲しかった」っていう動機をどう思う?

DL:ミリタリー・マニアの柳さん? どう思います?

青柳:別に、僕はガン・マニアってわけじゃないですよ。どっちかっていうと、ナイフのほうが……。そういう話題じゃありませんよね。

RRR:まあ、拳銃とかナイフとか、好きな奴は多いよな。戦車や戦闘機のプラモデルはいくらでもあるし、戦争をあつかったゲームや小説も、いくらでもある。

青柳:でもね、人殺しをしてでも銃が欲しいなんていう人間は、そんなにいないでしょ。そんなことしたら、どうなるかわかっているし、他の夢や希望をすべて失うことになるのも、わかっているから……。

RRR:あの中学生には、それがわからなかったと……。いや、他の夢や希望がなかったのかな?

編集長:ありえるよな。将来の夢や希望がないっていうの……。たとえば、プロ野球選手になりたいとか、総理大臣になりたいとか。

DL:チープな夢……。

流しの竜:でも、夢ってそんなものだろ? 単純に金持ちになりたいとか、偉くなりたいとか。俺だったら……。

RRR:競馬で食っていきたい。

流しの竜:悪かったな! おまえだって、音楽で食っていきたいっていうんだろ?

RRR:食っていきたいっていう低級なもんじゃねぇよ。オレの音楽を聴いて欲しいっていうのが、オレの夢……って、こんなこといわすんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ。

編集長:それはともかく、やっぱり今の子供──中学生は子供かな? そうじゃないような気もするし──には、きっと夢とか目標とか無いんだろうな。

青柳:夢とか目標とか、そんなに大袈裟なものではなくてもいいけど、もっとも望むものが「拳銃」それも、誰かを殺すために必要なんじゃなくて、ただ持ちたかっただけっていうのは悲しすぎますよね。

DL:それだけ、未来が見えちゃってるってことでしょうね。世の中は暗いニュースばかりで、大人は接待と賄賂で好き放題。自分の欲望だけで生きているようにしか見えない。

RRR:未来って、それだけじゃないのにな。楽しいことも、くだらねぇことも、いっぱいあるっていうのに。「銃が持ちたい」でふいにするなんて馬鹿だよ。

編集長:きっと、その楽しいことや、くだらないことを誰も教えてやれなかったんだろ。親も、学校も……。

流しの竜:けっきょく、教育が良くないってことか? 勉強しか教えない学校が、諸悪の根元だと……。

DL:受験、受験って、今の学校もそうなのかしら? わたしたちのころは、いちばん偏差値とか模擬試験とか、うるさかった時だけど、今は偏差値とか廃止されてるんでしょ?

RRR:オレはそれが良くわからない。偏差値なんていうのは、自分の実力の目安であって、別にそれで縛られるってもんじゃないだろ? そんなもん無くしたって、別の目安ができるだけでなんの解決にもならない。好きな高校・大学・会社に行けるっていうんなら、いいけどさ。高校だって入学試験があるし、大学はもちろん。就職だって、大蔵省に入れろっていっても、実際、入れてくれないわけじゃない。それなら、自分の実力に見合った高校、大学に進学できる目安があったほうがいい。

編集長:ロックンローラーらしからぬ発言だな。そういったものは嫌いじゃないのか?

RRR:目安か? 目安は必要だよ。音楽だって、あいつはすごい、っていうのがわかるから、目標になるんだよ。自分の実力が、松本孝弘ぐらいなのか、高崎晃ぐらいなのか、それともイングヴェイぐらいなのか、それがわからなければ、おかしいじゃない。実際はアマチュアバンドのへぼギタリストなのにさ。自分だけすごい技術を持っていると思いこむのは馬鹿だし、そんなことはない。自分の実力に見合うステージは必要だし、いきなり東京ドームでライブやりたいと思っても、できるわきゃないんだ。おんなじように、自分の実力に見合った学校なり、会社に進むのは当然のことで、それには目安が必要だろ?

流しの竜:目安がなければ、競馬も予想できないもんな。

青柳:本当に廃止すべきは、偏差値を重視する風潮だったんですけどね、その存在だけを否定して、風潮だけは残っているんでしょう。

編集長:偏差値の話はそれぐらいにして、話を戻そう。夢がないっていうのは、どうしてだと思う? 本当に学校が悪いのかな?

DL:だから、今の社会が夢を持てるものじゃないんじゃなくて? すでに敷かれたレールの上を進むだけの社会。どんなに頑張っても、中学生の──10代前半で未来が決定されてしまう社会。そんな社会じゃ、夢なんて持てませんわ。

青柳:でも、それが秩序っていうものなんですよね。突然、出世したり、金持ちになったり……たとえ実力や理由があっても、それが許されないのが秩序です。きちんと順を追って、まずは開成高校へ進学し、そして東京大学に進む。そこで初めて大蔵省に入れる。それが秩序です。三流大学から大蔵省に入られたんじゃ、一流大学の立場がありませんよ。そのための一流大学で、三流では大蔵省への入り方は教えないし、一流大学から三流の会社へ進むのはおかしなことでしょ?

RRR:それだよ。オレがもっとも嫌いなのは、その秩序っていう暗黙のルールだ。しかも、タチが悪いのは自分でルールってやつを勝手に作って、勝手に縛られている。

編集長:「どうせ俺なんか」って、思っちゃうんだよな。「どうせ、二流大学だし」とかさ。

RRR:そうだ。自分で限界を作ってしまうから、その壁にぶち当たると実際には乗り越えられる壁でも、乗り越える気力をなくしちまう。まわりからも、無理だっていわれるしな。「身の程をわきまえろ」とかいわれたら、そうなんじゃないかって思ってしまう。

DL:失敗するのは格好悪いっていう風潮がありますしね。

青柳:まぁ、かっこいいもんじゃないけど、やらないよりはましだと思いますけどね。

編集長:さすが公募小説で何度も落選してるヤツがいうと、説得力あるな。

RRR:しかも、落選したやつをこのホームページで公開してるんだから、恐れ入る。今のガキどもも、これくらい面の皮が厚ければ事件を起こすことはなかったんだろうにな。

青柳:ほめてるんですか? けなしてるんですか? でも、デリケートすぎる子供が増えてるんでしょうね。すぐに保健室に逃げ込んだり、キレるっていうのも精神的に細いからでしょ?

編集長:そういった子供のことも「普通の子」とか「目立たない子」なんていうけど、今の「普通の子」は授業に出ないで保健室に逃げ込んでばかりいるのか? 「目立たない子」が深夜0時に外をふらふらしているのか? もし、そうだったとしたら「普通」ってなんなんだ?

DL:そうですね。病んでいるのは、彼らだけではないのかも……。10年前、ほんの10年前にはわたくしたちも中学生だったのに……。

RRR:10年は長いよ。10年前には、事件を起こしたガキたちは4歳や5歳だ。まだ、小学生にもなっていない。

流しの竜:えらそうな顔で今の子供を語る評論家たちは、10年前も大人だった。そんな奴らには、なにもわからないんじゃないかな。

青柳:人殺しの気持ちは、人殺しにしかわからない。たとえ、それが中学生でも……。大人の犯罪者たちは、その気持ちなんて深く考えないまますまされてしまう。だけど、子供だと「どうして殺したのか」とか、「いったい彼になにが起きたのか」なんて話題になる。不公平とはいわないけど、「子供だから」っていう考え方は捨てたほうがいいですよ。

編集長:そうだね。中学生にもなれば、もう子供じゃない。15歳だったら、自分のやることが十分に理解できるはずだし、その責任だって取れる……取らなくてはいけない年齢だと思う。

流しの竜:でも、中学生の頃って、いちばん将来を悩むときだよな。高校進学で人生が半分決まっちゃうだろ? 工業高校とか、専門分野に分かれるし、高校のレベルで大学も決まっちゃうしな。

青柳:そう考えることが、良くないんですよ。それが自分に作ってしまう壁でしょ? せっかく無くした偏差値なんですから、中学からの進学の目安としてだけでなく、高校のレベルを表す偏差値──レベル──も無くしたらいいんですよ。

流しの竜:高校の教育も一貫するっていうか、同じレベルのものを提供すべきっていうんだな。どの高校でも東大に行けるような授業をしろって……。

DL:そんなの無茶ですわ。それに、夢や目標って一流の大学に行くことだけじゃないでしょ? 

編集長:教育や個人の目標なんていうのは、我々がここで論じても仕方ないっていうか、今回のテーマじゃないからそれくらいにしておこう。大事なのは、なにか漠然としたものでもいいから、夢や希望を持つことだよ。

RRR:そして、その夢を摘むようなことを大人がしちゃダメだってこと。そうやってどんどん刈り取っていくと、最後に「拳銃が欲しい」なんていう望みしか残らなくなるんだよ。

編集長:目の前のことしか見えなくなったりな。


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1998.2.3