最近の若者はなっとらん!
参加メンバー
高城陽介(以下、高城):大学3年。年の割には良識派。
葉山有紀(以下、葉山):大学3年。イマイチ意見に統一性がない。子供なのか、大人なのか?
真崎孝治(以下、コージ):大学3年。かなりの苦労人。演劇部では、いつも悪役。
金谷登(以下、金谷):バリバリ社会人だが、ロックバンドのギタリスト。少年の心を持ち続ける男。
氷河紗織(以下、紗織):去年まで女子高生だった。あんまり今時の子らしくないが……。
星野亜由美(以下、亜由美):大学3年だが、見た目も性格も小学生なみ。 ただし、全て計算づく。
石丸朱美(以下、朱美):メンバー最年長の主婦(大学助教授だが休職中)。オバサン化が始まりかけてる?
高城:今回はいつもとちょっと毛色が違うテーマ、「最近の若者」についてやろうと思う。未成年の犯罪が多発してるし、公共のマナーや言葉づかいの乱れなど、幅広い意味でやっていきたいと思う。
葉山:それはいいけど、今回メンバー多くない? なんか、珍しい人もいるけど。
朱美:私のこと? 私だって、呼ばれてきたのよ。本当なら、晩ご飯の支度しなきゃいけないのに。うふふ、今日はなににしようかな? 昭二さんは、お肉好きだけど、健康のこと考えると野菜も食べなきゃダメだし、魚も大切よね。
葉山:あら? 料理苦手なんじゃなかったっけ?
朱美:そんなことないわよ。昭二さん、私の作ったものなら、なんだっておいしい、おいしいって食べてくれるもの。
金谷:おばさん、年甲斐もなくのろけてんじゃないよ。
亜由美:まったく、いつまでたっても新婚気分なんだから。子供のままごとじゃあるまいし。
朱美:あ、あなた、いたの。休職して、しばらくは顔見なくてすむと思ったのに……。
高城:知らない人に説明すると、亜由美ちゃんは朱美先生の教え子だったんだけど、天敵みたいに苦手にしてたんだ。
コージ:そんなことより、さっさと始めようぜ。
高城:そうだね。それじゃあ、まずは軽めの話題から。電車のなかで、平気で化粧する子についてどう思う?
金谷:ホントに軽いな。でも、これってちょっと前までオバサンの専売特許だったんだよな。
亜由美:そうなんです? 朱美先生?
朱美:なんで私に振るのよ!
紗織:最近は高校生だけじゃなくて、大学生やOLっぽい人もやってるわよ。むしろ、オバサンの方が減ってきたみたい。
金谷:当時のオバサンたちは、もはや化粧する必要のない年齢になったんだろ。かわりに、それを見ていた子供たちが化粧するようになったんじゃない?
葉山:文句言ってるのは、私たちやもうちょっと上の世代だけってこと?
高城:二十代半ばから、三十代までの、比較的発言力の強い層が批判しているだけで、他の人から見たら当然のことになりつつあるのかもね。
コージ:でもなあ、俺は納得できないな。きれいに見られたいから化粧するわけだろ? それなのに、化粧している最中の、みっともない姿は見られても良いわけなのか?
葉山:所詮は他人ってことよ。自分の周りの狭い人間関係のなかでさえ良く見られれば、他はどうでもいいのよ。世間から切り離されているというか、世間に対してなにも出来ないのを、世間なんてどうでもいいと転化してるのね。
朱美:む、難しいこと言うわね。
コージ:ようするに、「旅の恥はかきすて」ってやつに近い感情を、常に持っていると。
葉山:そうよ、旅先ならなにやっても自分に跳ね返ってくることはないと思うから、無茶できるわけじゃない。文化財に落書きしたことを帰ってきてから自慢する人なんていないでしょ? 人に知られたら格好悪いんだけど、記念だと思うってやっちゃう。それとおんなじで、自分の顔に化粧塗るんだって、その場でどう思われようと、結果として化粧できればそれでいいんでしょ。
高城:なんか嫌だな。そう言うのって……。人間関係が希薄って言うか、もうちょっと意識して欲しいって言うか……。
亜由美:そんなこと言ったって、四六時中神経張りつめていたら、疲れちゃうわ。適当に気を抜かなきゃ。
コージ:抜きすぎだっての。電車の中には、少なくとも他の人間がいるわけなんだから、そう言うのはひとりの時にやってくれよ。
紗織:でも、口開けて寝てるよりはまだましじゃない? あっちの方がよっぽど気を抜いてるし、みっともないわよ。
高城:確かに……。結局、みんな同じなのね。「若い女性がみっともない」っていう、一種の差別感情が含まれていたと言うことか……。
金谷:でも、やっぱりやって欲しくねえなぁ。
葉山:それじゃあ、前置きはおしまい。本題にはいるわよ。
高城:ええと、難しく言うと若年層の凶悪犯罪の増加なんだけど、簡単に言うと……。
亜由美:今時の十七歳ってこわぁい。
コージ:それって、簡単に言ってるのか?
葉山:違うでしょ。それよりも、今回の最年少は紗織ちゃんよね? 十七歳に一番近いわけだけど、そんなにおかしいヤツ多いの?
紗織:えっ? そ、そんなことないよ。でも、うちの学校ってエスカレーター式で、受験勉強のノイローゼとかもないだろうし、自由な校風だからストレスため込んでそうな生徒もいなかったからなぁ。
高城:そりゃそうだよ、日本中の十七歳がおかしくなっていたら、この程度じゃすまないはずだ。こういう事件って言うのは、他の事件がきっかけになって連鎖的におきるものなんだ。十七歳がキーワードになってるのは確かだけどね。
金谷:それでもやっぱり異常だと思うね。十七歳ぐらいだったら、いろいろとやりたいこともあるだろうに、それまでの生活を捨ててまで犯罪に走るかな。
紗織:そうよね。黙って学校さえ行ってれば、毎日食事にありつけるし、お小遣いだってもらえる。時間も結構余裕あるから、好きなこともそれなりには出来るしね。バイトしてないと、金銭的にはちょっと苦しいけど。
高城:うちの学校は、バイト禁止だもんね。
コージ:俺はしてたけどね。バイトしなきゃ、食っていけなかった。まあ、そんな話はどうでもいいか。
葉山:……。
高城:……。
亜由美:貧乏だったんですね。
コージ:はっきり言うなぁ!
高城:そ、それはともかく、十七ぐらいだったら、将来の不安もあるだろうけど、それ以上に夢もあったよね。その頃って、なにを目指してた?
葉山:世界一の大金持ち!
金谷:もちろん、ロックスターさ!
亜由美:私はプログラマーって言うか、エンジニアって言うか、とりあえずコンピューター関係ね。アイドルも捨てがたいけど。
高城:後半は聞かなかったことにしましょう。コージは?
コージ:母に少しでも楽な暮らしを……。
金谷:場の雰囲気を暗くするなって言うの!
高城:気を取り直して、紗織ちゃんは?
紗織:私? 私、なんだろうな。学校の先生もいいかなぁとか思うし、葉山さんみたいにバリバリ働くのも格好いいし……。いろいろありすぎてわかんない。
朱美:教師はやめておきなさい。ろくなこと無いわよ。おかしな生徒にはつきまとわれるし……。
亜由美:それって私のことですか? ひどいなぁ。成績は抜群だったでしょ?
朱美:成績の問題じゃないわ。あなたと話していると、ものすごく疲れるの。
亜由美:そう言う先生はどうなんです?
朱美:私は……お嫁さん。
亜由美:良かったですね。二十年かかったけど、夢が叶って。
朱美:十八年よ!
亜由美:十七歳のとときそう思ってたってことは……。それまでの人生の、倍ちょっとかかったんだ。
朱美:……やっぱり、あなたの相手をするのは疲れるわ。
葉山:高城くんは? なんとなくわかるけど。
高城:正義の味方……って言ったら笑われるんだろうなぁ。
コージ:おまえの場合、警察官とかそう言う具体的なんじゃなくて、ホントに正義の味方だもんな。
高城:悪かったな。世のため人のため、ってののどこが悪いんだよ。
葉山:心がけはいいんだけど、実行できなきゃね。
高城:……。なんにせよ、やりたいことがあったからこそ、ブレーキがかかっていたわけだよね。でも、たぶん、犯罪に走る──凶悪犯罪に限らず、万引きみたいな小さな犯罪だって、抑止力が働いてないから、やっちゃうんじゃない?
コージ:なんだよ、正義の味方のくせに、やけに悲観的な意見だな。
高城:残念だけど、僕は人間の本質は悪だと思う。悪って言うといいすぎだけど、しょせん動物だからね。生きなきゃいけないし、欲望もあるのは仕方ないと思う。でも、それを抑えることも知っているはずだ。
葉山:犯罪に走るってことは、それを抑えるべきものがないってわけね。つまらないことして捕まったら、損だもんね。
金谷:夢もなんにもない老人が犯罪に走るのならともかく、将来がある若者が犯罪に走るのはおかしいよな。刑務所にしろ、少年院にしろ、とてもじゃないけど自由な生活なんて出来ないだろ? 夜中にギターかき鳴らして、大声で歌ったりできないだろうしな。
高城:そんなのは、どこだってやっちゃダメ! 近所迷惑じゃない。
金谷:仕事終わってから、職場(ライブハウス)でやってるんだって。防音完璧だから、文句無いだろ?
高城:そ、それならまあ……。
葉山:話を戻すわよ。少年法があるから、未成年の犯罪は名前も公表されないし、将来への影響はないんじゃない?
高城:でも、人間って言うのは、自分のしたことを、都合良く忘れることは出来ないんだ。たとえ、誰も知らなくたって、自分が犯した罪はいつまでも付いてくる。それは、なかなかの苦痛だと思うよ。
コージ:おまえは真面目だからな。みんながそうとは限らないよ。少年法はもうちょっと厳しくしたほうが良いと思うな。
高城:少年法の趣旨って言うのは、将来ある若者の未来を閉ざしてはいけないっていうものだから、単純に厳しくすればいいってもんじゃないんだよ。ただ、少年の定義を変えることは問題ないと思うな。
葉山:そうよね。二十歳、いえ十六歳ぐらいになれば、きちんとした判断が出来るはずだから、もっと厳しくしなきゃ。もちろん、それに見合った権利も与えるべきだと思うけど。
コージ:子供じゃなく、大人として扱うってことだよね。
金谷:大人が子供扱いしてるから、つけあがるんだ。自分のやることには責任を持つよう自覚させるのが必要だし、そうせざるを得ない状況に追い込むことが必要だな。
亜由美:でもぉ、そんなこと大人が勝手に決めたら、子供たちが怒るんじゃない? 自分たちだけ少年法の恩恵受けてぇ、とか。ねえ、金谷さん?
金谷:お、オレは別に恩恵受けてないぞ。
亜由美:えっ? そうなの? 他のみんなは?
高城:ないよ、そんなの。
葉山:私だって。
亜由美:なぁんだ、私てっきり……。
コージ:どういう目で俺たちを見てたんだ?
高城:コージはいいよ。どうせ悪役なんだから。
コージ:それは、芝居だ! 個人的には、交通違反だってしたこと無いのに!
高城:交通違反って、免許持ってないじゃん。
葉山:また、話がそれる。──いまの少年法だって、少年が自分で作ったんじゃないんだから、それは一緒よ。
高城:だいいち、自分がこれから犯罪を犯すことを前提に文句言うヤツがあるかよ。
亜由美:それもそうね。私も犯罪なんか無縁だし、関係ないか。
葉山:それ以前に、あんたもう二十歳過ぎてるでしょ。同い年なんだから。
戻る
2000.7.25