白の部 01 『おいらは殺し屋』


 おいらは殺し屋。非情な殺し屋。

 ――…これでいい。
 ――ふん。まあ、勝手にするがいいさ。お前が何をしようが、俺には関係のないことだ。

 金さえ積まれりゃ何でも殺すぜ。金がないなら現物でもいい。
 何かをくれりゃあ誰でも殺す。それがおいらのジャスティスさ。唯一つの真実なのさ。

 おっと依頼人のご登場だ、そこをどいておくんなせえ。

 ――誰か来たな。…いや、お前が来させたのか。
 ――関係ないんじゃなかったの?
 ――そういう気分の時だってあるんだ、そういうもんだ。

 ほうほう、的は一人で金はこんなに。これじゃ金が余っちまう、他をあたってくんな。
 おいらは余分な金はもらわないのさ。それもおいらのジャスティスなのさ。

 なになに。ほうほう。的は一人だけど強いやつってか。武器も持ってて経験もあるってか。それは一体どれくらいの奴なのかね? おいらは殺し屋。これでもちっとは名の知られた殺し屋なんだ。
 的の名前を言ってみな。そうすりゃびびびっとおいらには分かっちまう。そうさおいらは顔も広いんだ。

 ――…ふう。
 ――言うように仕向けたのか、依頼人に。
 ――うん。
 ――酔狂なこった…本当に。

 いやいや、ちょっと待っておくんなさい。的の名前、そりゃ、おいらの名前じゃありやせんか。それはつまりアレですかいあんた、おいらを狙ってらしたんですかい。『二年前のことなんだ』って、二年前? 『覚えてるんだろう、その時殺した男を』って言われても。これまでに殺してきた数は両手両足の指の数じゃあききやせんぜ。
 それにね、おいらは殺し屋なんだ。殺した相手のことは覚えておかないようにしてるんだ。それもおいらのジャスティスなのさ。

 でもあんたは依頼人だ。そしておいらは殺し屋だ。
 そしておいらは何かをくれりゃあ誰でも殺す。どんな相手からの依頼も受ける。それがおいらのジャスティスで、唯一つの真実なのさ。だからその依頼、受けることにしようじゃないの、そうだ、そうしないとおいらはおいらのジャスティスに反してしまう。そいつはいけねえ、やっぱりいけねえな、うん。

 じゃあ、こうしやしょう。
 おいらの愛用の銃をお渡ししましょう。こいつでずどんとやっておくんなさい、おいらを。この金なら十分だ。
 銃を使ったことがおありで? ない? そいつはちょっと困りやしたね…何、おいらの銃は殺し屋仕様なんでさ。素人衆がうかつに触れるもんじゃねえ…。
 仕方ありやせん。おいらがこうやって自分で自分に銃を向けやすから。それで問題はねえでしょう。しっかり見てておくんなさいよ。…おっと、照準が合わせにくいもんでやんすね…持ち方が…何かで固定した方がよろしいでやんしょうかね? そこまでお時間がない? 左様で。じゃあ、このままで。こんなもんでやんしょうか。

 そう言えば…。
 おいらがおいらに依頼するってのは…依頼の順序が、ちいっとばかし変わっても、おいらのジャスティスには反しないんじゃないんでしょうかねえ?


 ずどん


 ――何をする気だ。
 ――助ける。
 ――そこまでしていいと思っているのか?
 ――だって、あんなことやると思わなかったんだもん…なんか悪いよ。そうだ、とりかえっこしちゃおう。それならいいよね?
 ――お前なあ…一体何様のつもりだ? 神様にでも…。
 ――よいしょ。
 ――おい、何を勝手に…本当に交換する気か?
 ――おっけい。
 ――おっけいじゃないだろう…知らんぞ、まったく。


 …おいらは殺し屋。非情な殺し屋。

 金さえ積まれりゃ何でも殺すんだぜ。金がないなら現物でもいいんだ。
 何かをくれりゃあ誰でも殺すんだ。それがおいらのジャスティスなんだ。唯一つの真実なんだ…。


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