『アルバム』

「ふざけるな」
「なんで怒るの?」
「俺はな、あんた達のな・・・」
「どうしたの?」
「・・・アルバムじゃない」

 冗談を言うな。
 同窓会だ・・・?いい加減にしろ。
 あいつらが俺を見る目はいつもこうだ。
 ・・・懐かしい。
 ・・・あの頃を思い出す。
 ・・・昔はよかったねえ・・・。

 いい加減にしてくれ。

 俺は大学を卒業してから故郷に戻った。
 就職先がなかったわけじゃない。
 ただ・・・親父のやってる乾物屋が魅力的だっただけだ。
 上の兄貴はどこかで就職してる。下の兄貴も昇進した。断じて言うが、そのせいではない。
 親父も言ってた。
「別にナ、誰かにナ、継いでもらいたいわけじゃねエんでナ・・・」
 親父は一代で店を興した。

 高校時代の仲間はみんな故郷を出て行った。
 そうだ、確かにそうだ、俺も故郷を出て都会の大学に入学したクチだ。
 けどな・・・。
 都会は俺に合わなかった。
 私が、自分が、の社会は俺に合わなかった。
 それだけのことだ。

 四年経って帰って来た時の、あの思いは今でも忘れない。

「ここが俺の生きる場所だ・・・」
 故郷の明り、故郷の匂い、・・・全部が俺に合っていた。
 完全なる一致だ。魂に響いた。
 俺はここに骨を埋める。
 そう決めた。
 俺はそう決めたんだ。
 生活なんかどうにでもなる。

 一度だけ高校の同窓会に出た。
 周りはみんな都会に出てった奴ばかりだ。
 地元は俺一人。
「おう。久しぶり・・・お前、変わんねえな」
「あらやだ、お父さんの店継いだの?ふーん」
「あの頃は良かったよねえ・・・ああ、戻りたい」
 奴らが俺を通して見てるのは高校時代の頃のことばかりだ。
 入学式、文化祭、体育祭、卒業式・・・。

 俺は宴会の途中でキレた。
「ふざけるな!俺はな、お前らの記憶を辿る道具じゃねえんだ!いい加減にしろ!」

 誰も本気にしなかった。酔っ払いのたわごとにしか聞こえなかったのだろう。
 俺の考えなど理解してくれなかった。
 してくれるはずもない。
 都会での奴らの『今』の生活には『未来』がある。
 奴らにとっては俺が『今』住んでいる土地など『過去』の思い出の一部にしか過ぎない。

「それは思い過ごしだよ。みんな言ってるぜ?お前がうらやましいって。あんな風に暮らしたいって」
 俺をとりなしてくれた友人がそう言ってくれた。

 じゃあ、お前らもやればいい。
 人をうらやましがるくらいならやればいい。
 家庭とか子供とか言うくらいなら最初から結婚なんかするな。
 親父の店を継ぐにしたって苦労がなかったわけじゃない。

 俺はお前らのアルバムじゃない。
 俺は俺のアルバムを今から造っていくんだ。
 お前らはお前らのアルバムを造っていけばいいじゃねえか。

 今から造っていくんだ。俺も、お前らも。
 そのアルバムがどこかで交わったら・・・その時は一緒に飲もう。
 ・・・楽しく飲めそうじゃないか。



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