『雨が降った日』
雨が降った日
白くて小さな花が倒れていた。
可哀相だった。
雨がその手で倒したわけでもないのに。
そっと姿勢をなおしてみたら
すぐにまた、倒れていた。
雨が降った日
君は部屋にいなかった。
さびしかった。
雨がその足で追い出したわけでもないのに。
ずっとドアの前で待っていたけれど
君は帰って来なかった。
雨が降った日
紫陽花の色が変わっていた。
みじめだった。
雨が直接変えたわけでもないのに。
そのままじっと見ていても
何も変わらなかった。
雨が降った日
僕は雨に濡れていた。
怖かった。
ぼたぼたと落ちてくる雨の粒が怖かった。
軒先で少し、雨宿りしてみたけれど
傘のない僕に雨は怒っていた。
雨が降った日
川に子犬が浮いていた
哀れだった。
突き出した四つの脚がぬいぐるみみたいだった。
どうにかしようと思ったけれど
そのまま流されて行ってしまった。
雨が降った日
何もすることがなかった日
何もできなかった日
明日は晴れるだろう。
僕はそう思って軒下にテルテル坊主を吊るした。
彼は泣いていた。なぜかは知らないけれど。
©2002 江ノ口信天 AllRightsReserved.
Materials:
MiraclePage
, 幻影素材工房, 信天庵