2-1 微分其の壱
How I wish I could calculate pi.
3.141592(円周率)
剛体シミュレーションです。ニュートン力学(以下力学)です。
ニュートンの運動方程式は微分方程式で表されます(表すことができます)。
こいつを扱うためには微分方程式の知識が(当然微積分も)必要です。
まぁ高校数学程度の知識で十分なんですが、忘れてしまった人のために
この章で扱う力学で困らない程度に微積分の説明をやっていきます。
関数とはなんぞや。
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2つの集合の間に対応する規則があるとき、 その規則を関数(function)と呼ぶ。
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xとyという数があり、xとyの間に y = kx という関係があったとします。
kはxおよびyとは関係なく定められた数とします。
このときxの値をを定めるとそれに対応するyも定まります。これをyはxの関数であるといい、
というふうに書きます。
xとyはいろいろな値をとりうるので、これを変数といいます。
kは一定の値なので定数と呼ばれます。xを定めるとyも定まるということから
yを従属変数、xを独立変数と呼んだりします。
f(x)の独立変数の表記を省略して単にfと書くこともあります。
xのとりうる値の範囲を(関数の)定義域、yのとりうる値の範囲を(関数の)値域と呼びます。
変数x、yは一般には複素数なわけですが、とりあえず実数変数の関数のみを扱うことにします。
xがある値aのときのf(x)の値を、f(a)と書きます。例えば f(x) = x
2 とすると、
f(0) = 0
f(1) = 1
f(2) = 4
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といった具合です。
y = f(x)と書かずに、従属変数を表す文字をそのまま使うことも多いです。
たとえば移動する点Pの座標x、y、zは時間tの関数なわけですが、これを
x(t)、y(t)、z(t)などと書いたりします。Pの位置ベクトルr = (x y z)を
まとめてr(t)と書いたりもします。
関数をグラフで表すとこんな感じになります。

(図2-1.1)
xを横軸に、yを縦軸にとり、xに対応するyの値を点としてぷちぷち打ってやれば
y = f(x)のグラフが描けます。
この例は y = x
3 + 2x
2 という関数のグラフです。
xのある値に対しyがただ1つ対応する場合、この関数を1価関数といい、複数のyが対応するものを
多価関数といいます。例えば y = √x は2価関数です。
単に関数といった場合は、1価関数のみを表すことが多いようです。
独立変数が2つ以上の関数もあります。例えば z = xy は2つの独立変数x、yによって
従属変数zが決まります。多変数の関数は、z = f(x, y) というふうに書きます。
関数ってのはまぁ大体こんな感じのものです。
関数 y = f(x) で、xを限りなくある一定の値aに限りなく近づけたとします。
xをaに近づけるにつれてf(x)もある一定の値bに限りなく近づく場合、
x→aでf(x)に極限が存在するといい、bをその極限値といいます。
このことを

(式2-1.1)
と書きます。例えば f(x) = x
2 でx→3とすると、
f(x)→9 (x→3)
となります。…代入してるだけじゃん。などといわないでください。代入と極限は異なる概念です。
まぁ大体の場合代入と極限は等しくなりますが。
f(x)のx→aでの極限とf(a)が等しい場合、f(x)はx=aで連続であるといいます。
直感的に言うと、関数f(x)のグラフに切れ目がなければ連続です。ある点x=aでグラフが
切れれば、f(x)はx=aで不連続であるといいます。例えば y=1/x は x=0 で不連続です。
グラフを描くとこうなります。

(図2-1.2)
f(x)→b (x→a) を言葉を変えて表現すると、
f(x)をbに限りなく近づけるには、xをaに限りなく近づける
ということになります。
この"限りなく近づける"というのは一体どれ位のことなんでしょうか?
"限りなく近づける"というのを厳密に表すと、関数の極限の定義は
任意の正の数εに対して、0 < |x-a| < δならば
|f(x)-b| < ε になるようなδが存在するとき、
f(x)→b (x→a)であるという。
|
となります。この定義は"ε-δ法"と呼ばれるものです。図で表してみましょう。

(図2-1.3)
|f(x)-b| < εというのは、f(x)がbにどれ位近いのかを表します。
"f(x)がbに限りなく近づく"というのは小さなεを選ぶということです。
|x-a| < δはxがどれ位aに近いかです。つまり、どんなに小さな(正の)εを選んでも
0 < |x-a| < δ を満たすxであれば |f(x) - b| < ε となるようなδが存在すれば
f(x)→b (x→a)であるということです。…我ながら下手な説明だ。すまん
ちなみに 0 < |x-a| というのは極限ではx=aとなる点を問題としていないということを意味します。
関数y=f(x)でxをaからa+hまで変化させると、yはf(a)からf(a+h)まで変化します。
それぞれの変化量をxの増分、yの増分といいます。減った場合でも増分です。
xの増分とyの増分の比、つまり { f(a+h) - f(a) } / h は、
xの変化に対するyの(平均の)変化率を表します。ここで極限

(式2-1.2)
を考えてみましょう。この極限が存在すれば、この極限値f'(a)は点aにおけるyの変化率を表します。
この極限が存在する場合、f(x)はx=aで微分可能であるといい、f'(a)を
f(x)のx=aにおける微分係数といいます。幾何学的に言うと、微分係数f'(a)は
曲線y=f(x)の点aにおける接線の傾きを表します。

(図2-1.4)
hを小さくしていけば、青い破線はf(x)の点aにおける接線(青い実線)に近づくのが分かります。
あらゆる関数がその定義域全てにおいて微分できるわけではありません。
例えば f(x) = |x| は、x = 0では微分できません。
が、面倒くさいので、以後出てくる関数は特に断らない限り
全て任意の回数(後述)だけ微分可能であるという前提にします。
(式2-1.2)でaをf(x)の定義域内の任意の点としてこれをxで表し、

(式2-1.3)
とします。このf'(x)をf(x)の導関数(derived function)と呼びます。
導関数を求めることを微分するといいます。
xの増分を凅、yの増分を凉として、凅が十分に小さければ
近似的に
となります。
例として、f(x) = x
2 の導関数を求めてみましょう。
導関数の表記法には次のような流派があります。

(式2-1.4)
dy/dxなどはライプニッツの、f'(x)などはラグランジュの記法で、
数学書では主にこの2つを使います。最後の2つはニュートンの記法で、
力学では独立変数が時間tである場合にニュートンの記法を用いるようです。
微分法は、ニュートンとライプニッツによってほぼ同時期に
独立して発見されたとされています。が、初期の微分法は(式2-1.2)とは
ちょっと異なっていたようです。f(x) = x
2 を例として、
大体次のような感じだったようです。
xの微小変化量をdxとし、xをdxだけ変化させたときのyの変化量をdyとする。
dy = ( x + dx )2 - x2
= 2x・dx + dx2
dxが非常に小さいとするとdx2はさらに小さいのでこれを0とみなし、(ぉ
dy = 2x・dx
両辺をdxで割って
dy/dx = 2x
|
dx、dyは"微分"とよばれるもので、限りなく0に近い量――無限小量です。
導関数というのは微分の比 dy/dx ということになります。ライプニッツの記法そのまんまです。
こう考えると、dy/dxというのは導関数を表すひとまとまりの記号ではなく、
dxとdyはそれぞれ"普通の"数のように扱えるんではないかという気がしてきます。
実際、無限小量という概念は今日ではあまり用いられませんが、dxとdyを
記号操作上普通の数のように扱うというのはよくやります。
話を変えて運動する物体を考えてみます。運動するということは物体の位置r=(x y z)が
時間tとともに変化するということであり、位置ベクトルrは時間tの関数r(t)で表すことができます。
位置ベクトルrがtの関数であるということは、rの成分x、y、zがtの関数であるということですので、
r(t)の微分するにはその成分を微分してやればいいんだな〜というのが分かるかと思います。
位置r(t)の時間微分というのは、位置の時間に対する変化率、すなわち速度を表します。
お次は関数f(x)の導関数f'(x)のそのまた導関数というのを考えます。
f'(x)の導関数を2階導関数といい、

(式2-1.5)
と表記します。同様に3階、4階などのさらに高階の導関数も考えられます。
階数が高い場合は、n階導関数をf
(n)(x)などと表記します。
さてこの2階導関数というのは一体なんなんでしょうか?
導関数を変化率と考えると、2階導関数は変化率の変化率ということになります。
身近な例を挙げると速度の変化率、すなわち加速度は速度の導関数になりますが、
速度は位置の導関数であるので、加速度は位置の2階導関数ということになります。
また、"景気は回復傾向にある"とかいうのも2階導関数のことを指しているのかもしれません。
景気は相変わらず悪化していても、つまり1階導関数が負でも、悪化の度合いが鈍っていれば
2階導関数は上向きです。景気が下向きであることには変わらんのですが。
…などという話をしたのは別に日本経済を憂いてのことではありません。
次のグラフを見てください。

(図2-1.5)
f(a)を極大値、f(b)を極小値といい、これらをまとめて極値といいます。
f(x)がある点で極値を取る場合、その点での導関数の値は0となります。
幾何学的にいうと接線の傾きが0になるということです。
f(x)の導関数f'(x)がある点aでf'(a)=0となるとして、それが極大であるのか
極小であるのかを判断するにはどうしたらよいでしょうか?
ここで2階導関数の出番です。
f(x)がx=aの近くで2回微分可能であり、f''(x)は連続であるとすると、
f'(a) = 0 かつ f''(a) < 0 であれば、f(x)はx=aで極大値f(a)をとる。
f'(a) = 0 かつ f''(a) > 0 であれば、f(x)はx=aで極小値f(a)をとる。
|
f'(a) = 0 であっても、f''(a) = 0 の場合はこの方法では判別できません。
さらにこんなのもあります。

(図2-1.6)
こいつは f(x) = x
3 + a (a:定数) のグラフなんですが、
x=0はこの関数の変曲点なるものになっています。変曲点というのは関数の凸凹が
入れ替わる点です。こいつは3階導関数を用いて、f''(a) = 0 かつ f'''(a) ≠ 0であれば
変曲点であると判別できます。
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2-2.微分其の弐