ホイールアライメントとは? 車のそれぞれのホイール(車軸)には、サスペンションによって、さまざまな方 向に大小の角度がつけられています。これらの角度を適正な状態にそろえる事を ホイールアライメントと言います。 トー(トーイン)・キャンバー・キャスターなどがそれです。(本来はこれらを 整列させることをアライメントと呼びました。)また、アライメントの角度は、 車両を使用するにあたって何らかの不具合が生じた場合に、その不具合を解消す る、または低減することを目的として開発されています。 アライメントは、四輪自動車が出来るもっと以前から存在していました。(大昔 に、木の車輪を使った荷車の時代にすでに開発されています。)1952年にア メリカのFMC社が世界ではじめてアライメントテスターを、世の中に送り出し たことからわかるように、世界では古くからアライメント作業は一般的に行われ ています。そして、現在の日本でも自動車を正常に走行させるために、アライメ ント作業が一般的に行われています。車は4つの車輪が適正な位置で的確に動作 して、初めて本来の性能を発揮することが出来ます。そこで、四輪トータルのホ イールアライメントの測定が必要になってくるわけです。 四輪のトータルホイールアライメントとは 単純に考えれば、自動車はハンドル(前輪)によって操舵されます。しかし、推 進方向/進んでいく方向(スラストライン)には、その車がFF車であってもF R車であってもリアアクスル(後軸)により決定されます。 自動車を左右真っ二つに分けるセンターラインがあるとします。リアアクスル が、正しい方向にセットされていれば、車の進む方向(スラストライン)はこの センターラインと一致します。しかし、もしリアのアクスルの方向が正しくない 左右どちらかにセットされていれば、車の進む方向(スラストライン)はセンタ ーラインを外れ、ずれている方向に進みます。フォークリフト(後輪操舵の車 両)をイメージしてもらえば理解しやすいかと思います。 この、進む方向「スラストライン」を測定・調整することを、四輪のトータルア ライメントと呼んでいます。 今日では、アライメントといえば4ホイールアライメントの事を指すものだと思 われがちですが、アライメントの測定・調整方法にもいくつかの種類がありま す。 アライメントの種類 今日では、アライメントといえば4ホイールアライメントの事を指すものだと思 われがちですが、アライメントの測定・調整方法にもいくつかの種類がありま す。 各角度個別のアライメント トータルトー前輪・後輪(トーインゲージ) 1mm単位で測定するので、精度的に不正確。トータルトーのみしか測定できな いので、車両直進状態に対してハンドルのセンターを出せません。 フロントホイールアライメント 前輪のキャスター・キャンバー・トーの測定 車両のジオメトリックセンターライン(幾何学的中心線)を基準として、前輪の トーを測定・調整する方法。この方法が従来使用されてきた方法であり、後輪が 幾何学的中心線に対して直角に取り付けられていれば満足できるアライメントを 提供することが可能です。しかし、もし車両の後輪が幾何学的中心線と異なるス ラストラインを形成している場合、フロントエンドのステアリング系のセンター が狂うので、車両直進状態に対してハンドルのセンターは出せません。 4ホイールスラストラインアライメント 後輪で決定されるスラストラインを基準に前輪のアライメントを測定・調整する 方法です。スラストラインアライメントでは、まず左右後輪の個々のトーを測定 し、これらのトーによって形成されるスラストラインを基準線としてフロントア ライメント(トー)を測定・調整する方法です。結果として車両直進状態に対し て正しいハンドルのセッティングが行えます。ただし、左右ホイールのトー(前 輪、後輪とも)は、車両の幾何学的中心線に対して左右対称にはなりません。し たがって、スラストラインと幾何学的中心線が食い違うときには、車両が直進し ているときに後方から見ると斜めに走っているように見えます。 デラックス4ホイールアライメント デラックス4ホイールアライメントは、現在最も進んだアライメントサービスで す。まず後輪の個々のトーを(車両の幾何学的中心線に対して)測定し、次にメ ーカーの仕様にあわせ調整します。この調整をすることにより、後輪のスラスト ラインを車両の幾何学的中心線に一致させます。従って、前輪は、幾何学的中心 線に一致したスラストラインを基準に測定・調整されることになります。この結 果、デラックス4ホイールアライメントでは、4輪すべてを平行(幾何学的中心 線に対して左右対称)な状態にセットし、直進状態におけるハンドル及びステア リング系のセンターを確保します。 4ホイールアライメントの必要性 ・近年・自動車メーカーによる足回り機構の技術革新が進み、4WS・4WD等従来の整備技術 では対応できない車両が増加し、また後輪アライメントの調整機構を備える車両が増大 している為。 ・現在の乗用車では燃費を改善する為に軽量化が進み、モノコックボディが大半をしめ、 構造上シャシ構造の車両と比べ、前後輪両方のアライメントが狂いやすくなっている 為。 ・サスペンションの四輪独立懸架化にともない、縁石への乗り上げ、悪路走行等により、 各々のホイールが単独で勝手な方向に向いてしまい、アライメントが狂ってしまう為。 ・FF車の場合・前輪が後輪を引っ張って走行する為、後輪アライメントの狂いが高速走行 安定に大きく影響を及ぼす為。 現在の自動車は乗り心地をよくする目的から、多くのゴム製部品を使用し、路面からの 衝撃を和らげています。これらのゴム製部品が経年変化により変形したり、磨耗するこ とによりアライメントが狂ってしまいます。 ※新車購入時から数ケ月すると、これらの部品が馴染んできてアライメントが変化する こともあります。 ・車両の高級化・高性能化にともない走行性能及び走行安定性を求めるユーザーの声が多 く聞こえるようになり、これらユーザーの要望に応える為。 ・上記にともない高価な高性能ワイドタイヤを装着するユーザーが増加している為。 これらのタイヤは一般的にグリップ性能向上の目的からやわらかい材質を使用している ため、従来のタイヤに比較して15〜30%早く磨耗してしまいます。 また同じキャンバー角であった場合・ワイドタイヤの方が片べりがめだちやすいため、 より正確なアライメント調整が必要となります。 近年生産物保証制度(PL法)が施行され、これにより運悪く事故が起きた場合、車の販 売店や事故車の整備をした整備工場はその車の足回り、特にアライメントが、完全なも のであった事を証明しなければならなくなっています。これにより車のオーナーの了解 が得られない場合には、PL法により訴訟を起こされる事がある為。 上記の事により安心と安全の確保に大きな影響力を持つ4ホイールアライメントシステ ムを導入し保証販売を実施する、そんな時代が訪れたと言えます。 キャンバー ホイールを上方からみると、一般に傾けて取り付けられており、垂直線との角度を キャンバーといいます。上部が外側に開いていればプラス(ボジティプ)キャンバ一、 逆に下部が開いているとマイナス(ネガティブ)キャンバーとなります。キャンバーの役割 ●ステアリング操作力の軽減 キングビン軸延長線の地面交点とタイヤ接地中心との距離をキングピン オフセットと呼ん でいます。一般にオフセットが長くなればなるほどタイヤの向きを変えようとする時、より 大きな力が必要となります(タイヤはキングビン軸を中心に旋回するため)。そこで、キャ ンバーをプラス側に設定することでオフセット値を小さくし、ステアリング操作力を軽減す ることができます。 ●荷重時の適正キャンバー サスペンションの違いにより程度の差はありますが一般に荷重が加わるとキャンパーはマイ ナス側へずれます。そこで、あらかじめプラス側にキャンバーを設定しておくことで荷重 時、タイヤが下開きになることを防げます。 ●旋回性能の向上 旋回時、外側のタイヤには大きな横荷重と縦荷重が加わります。そのため、キャンバーはプ ラス側に引き込まれ路面との接地性が悪くなります。そこで、あらかじめマイナス側にキャ ンバーを設定しておくことで、旋回性能の向上が図れます。マイナス キャンバーはFF車に 多く見られます。 キャンバーによる不具合 ●過度のキャンバー プラス側にキャンバーが設定されていればタイヤの外側が、逆にマイナスであれば内側が早 く磨耗します。偏磨耗の防止という面から考えるなら、キャンバー−はゼロが最も適切とい うことになります。ただし、実用的には約1°以下の角度であれば大きな偏磨耗は発生しませ ん。 ●過度の左右差 キャンバーの左右差が約30′を超えると、よりプラス側の方向へステアリングは流れます。 ドライバーはこれをおぎなうため、常に反対側へステアリング ホイールを切ることになる ため、ステアリング機構の磨耗を早めることになります。 キャスター ●クルマの横から前輪をみるとこキングピン軸は上部がやや後方へ傾いています。 この傾斜角をキャスタといい、上部が後方側に傾いているものがプラスに設定されています。 国産車は全車がプラスキャスタとなっています。
キャスタの役割 ●キャスタトレールによる直進性 キングピン軸延長線の路面交点とタイヤ接地中心との距離をキャスタトレールといいます。 キャスタトレールによってキングピン軸上には常に復元モーメントが発生しており、直進時 はタイロッドで打ち消し合っています。旋回時になると、外側車輪のモーメントが大きくな り、直進しようとする復元力となります。 ●キャスタ角度による直進性 プラス側にキャスタを設定すると、旋回時、内側車輪のスピンドルは路面との距離が短くな ります。ところが、車両本体の荷重による反カでスビンドルは上方へ持ち上げられようとし ます。その結果、内側車輪に復元力が発生し直進性を高めることになります。 キャスタによる不具合 ●マイナスキャス夕 現在では外車の一部にしか採用されていません。マイナスにすることで、直進性はおろか巻 き込み現象が発生します。これは、椅子などに付いているキャスタを後ろから押すと、すぐ に反対側に向くのと同じ現象です。ホイールがキングビン軸によって引かれるのではなく、 押されるために起こります。わずかなマイナスキャスタを付けても走行安定牲が得られるの は、キングピン角度による方向安定性を初め、スタビライザなどの装着によっても助けられ ているためです。 ●ゼロキャスタ キャスタによる走行安定性は全く得られません。クルマは常にウェーブぎみとなります。 ●過小キャスタ 特に旋回後のハンドル戻りが悪くなります。直進時にはワンダぎみとなります。 ●過大キャスタ 旋回時、ステアリングホイールを保持するのに大きな力が必要となります。また、常にステ アリング機構に大きな力が加わることになるため、各部のガタやゆるみを早めることにな り、低速シミーの発生原因にもなります。従って、ステアリング機横のガタやゆるみからく る低速シミーは、キャスタを減少させることである程度まで改善できても、根本的な解決に なり得ません。まず、ポールジョイントを交換してステアリング機構のゆるみを修正し、ホ イ一ルのバランスを正しく修正してあげなくてはなりません。なお、リヤスプリングをたる ませるような荷重が加わるとキャスタも増加し、不具合の発生原因になることもあります。 ●左右不等キャスタ 一般的に左右の差が約30′を超えるとクルマは小さい方へ流れます。また、高速時にワンダ ぎみになることもあります。後部のどちらか一方に重い荷重を積ませたりするとキャスタの 左右差が発生してステアリングホイールの流れが生じます。 キングピン角 クルマの前方からキングビン軸をみると上部が車両内側へ傾けて取り付けられています。 この傾きをキングビン角度といいます。キングピン軸延長線の路面交点とタイヤ接地中心との 距離をキングビンオフセットといい、路面交点がタイヤ接地中心より内側にある場合、 ネガティブキングビンオフセットと呼びます。
キングピン角度の役割 ●ステアリング操作の軽減 一般にキングビンオフセットが長くなればなるほど、タイヤの向きを変えようと する時、より大きな力が必要となります。(タイヤはキングビン軸を中心に旋回 するため)。そこで、キングビン角度を設定することでオフセット値を小さく し、ステアリング操作力を軽減することができます。 〔キングビン軸〕 前輪は旋回時ある中心軸を中心に向さを変えます。この軸を一般にキングビン軸 と呼んでいます。ただし、車軸懸架装置の場合は確かにキングビンが存在します が、Wウィッシュポーン型やストラット型は実際上キングビンが存在しません。 そこで、Wウイッシュポーンではアッパとロワーのポールジョイントを、ストラ ット型ではサスペンションサポート中心とロワーポールジョイントを結ぷ仮想線 がキングビン軸となります。ヨーロッパでは特にそれらの角度をキングビン角 (K・P・I)とはいわず、S・A・I(ステアリング・アクシス・インクリネ ーション)と呼んでいます。 ●キングピン角度による復元カの増大 キングビン角度があると、ステアリングホイールを切ったとき、スビンドルの先 端は直進状態より下がることになります。ところが、キャスタ角による復元力の 場合と同様に、車両重量による路面からの反力でスピンドルは持ち上げられよう とします。これがステアリングホイールの復元力として作用します。 ●タイヤからの衝撃(キックパック)の軽減 ブレーキをかけたときや障害物などにより、ホイールに大きな力が加わるとキン グビン軸上にモーメントが発生します。このカはキングビンオフセットの長さに 比例するため、キングビン角度をつけてオフセットを短くすればするほど、衝撃 をステアリングホイールに伝えにくくすることができます。 「インクルデット角」 タイヤを前方からみて、キングビン軸との傾きを表します。従って、インクルデ ット角はキングビン角とキャンバー角をたした数値となります。 ●駆動力によるモーメントの低減 FF車は一般にキングビンオフセットがたいへん短く設定されています。理由は、 キックバック軽減の他に、駆動力による回転モーメントを極力小さくするためで す。急発進時や急加速時、オフセットが長いと、キングビン軸を中心にモーメン トが発生し、ステアリング機構に大きな力を加えます。 トーイン 左右のタイヤを上方からみると、前端が後端より若干、短くなっています。 この差をトーイン(単位mm)といいます。逆に前瑞が開いていればトーアウト となります。一般にほとんどのクルマはトーインに設定されています。
トーインの役割 ●タイヤの抵抗によるトーアウト化の防止 前輪にプラスキャスタがつけられていると、直進時でも駆動力に応じて常に前開きになるよ うにモーメントが働きます。そこで、あらかじめトーインをつけることで走行中、トーアウ トになることを防止しています。 ●キャンバによる、トーアウトの防止 プラスキャンバが付けられているタイヤはクルマの外側に進もうとします。ところが左右の 車軸は前輪の場合、タイロッドで連結されているため、外側に進もうとする力は横すべりと なってタイヤの磨耗を早めることになります。そこで、トーインをつけタイヤを内側に進ま せようとすることでたがいに打ち消し合い、結果としてタイヤを直進させます。 トーによる不具合 ●トーイン過大 タイヤは常に外側から内側へこすられている状態となるため、内側に向かった羽根状のギサ ギザができます。また、前輪の左タイヤだけ磨耗が早いケースもあります。これは、トーイ ンがそれ程過大でない場合に発生します。かまぽこ状の道路では車両本体が路面の低い左側 にずれます。ドライバーはこれを直すため、常に右側ヘステアリングホイールを切っている ことになり、この結果、右前輪は走行方向とほぼ同じ向きになりますが、左前輪はかなり内 側にこすられながら進むことになります。 ●トーアウト過大 タイヤは常に内側から外側へこすられる状態となるため、外側に向かった羽根状のギサギザ ができます。また、前輪の右タイヤだけ磨耗が早いケースもあります。これは、トーアウト がそれ程過大ではない場合に発生します。かまぽこ状の道路では車両全体が路面の低い左側 にずれます。ドライバーはこれを直すため、常に右側へステアリングホイールを切っている ことになり、この結果、左前輪は走行方向とはぼ同じ向きになりますが、右前輪はかなり外 側にこすられながら進むことになります。 ホイールアライメント整備はどんな時に必要? ◎アライメント調整が必要なときは? 1.事故やクルマの仕様変更にともない、アライメントの数値(角度)が変ってし まった時 2.各サスペンションパーツの変更や、タイヤ・ホイールのサイズの変更にともな い、クルマとの状態が適切でない時。 上記の内容などが原因となり、色々な不具合(タイヤの偏磨耗やステアリングの センターのずれ、ステアリングのとられや振動など)が発生した時、または、予 め予測できた時にホイールアライメントが必要となります。 ◎ホイールアライメントはいつ狂うのか? 1.事故(縁石に軽く接触した時も含む)などで、クルマに衝撃があった時 2.タイヤサイズやホイールサイズの変更をした時 3.スプリングやショックなどの変更をした時 4.何らかの理由で、サスペンションパーツを固定しているボルトやナットを 緩めた時 5.バネ上の重量が変った時 6.車高が変った時 上記の内容でなくても、クルマが走行を繰り返せば各パーツの劣化や磨耗から も、アライメントに狂いが出る場合もあります。 ※メーカーにより各点検時(1000km・3ケ月・1年・車検)にアライメントの測定 調整の義務ずけを行なっているところもあります。 ◎ホイールアライメントが適切でないとどうなるのか? クルマに対して、アライメントの各々の角度が適切でないと様々な不具合が発生 し始めます。 大きく分けて、ハンドルのとられ・振動・タイヤの偏磨耗の3つがそれです。 また、それはドライバーにとって不快なだけでなく、⇒《快適性》の妨げ クルマの各パーツに障害を与え、それを進行させます⇒《安全性》の妨げ タイヤの寿命を縮め、燃章の向上も望めません。⇒《経済性》の妨げ この快適性・安全性・経済性を向上させる大きな鍵をアライメントは握っていま す。