記 2006年9月18日
更新 2006年9月23日
いま、ゲーム業界は次世代機の話題に沸いている。無論、子供の頃からのゲーマーである私が無関心でいることはない。そして、私と同じく興味を抱いて注視している者は少なくないだろう。それというのも、この世代の戦いは、従来の単なるシェア争いに留まらない新しい様相を見せそうだからだ。その両雄がソニーのPS3と任天堂のWiiである。
スーパーコンピュータに匹敵する驚異的な演算能力、新鋭ゲームPC級のグラフィック能力、在来ゲーム機に倍する価格、オープン化を目指すプログラミング環境、充実したネットワークと外部インターフェイス。PLAYSTATION3(以下PS3)は明確に高性能機である。一方のWii、敢えてコンピュータとしての能力を追求することはせず、極めて特徴的なUIを備えた。この両雄の、一目でそれと判る性格の違いが、従来と異なると思わせる核心である。


(c)任天堂
任天堂/Wiiのコンセプトは明白でわかりやすい。彼らは複雑化を極めた操作システムが初心者に敬遠されていると考えた。彼らは長年の研究を積み重ね、DSを経てWiiに極めて特徴的なコントローラを備えることとした。遍く全ての人に直感的操作性をもたらし、敷居を下げ、家族で楽しめるように。さらに、旧来ゲーム機上のソフトをWii上でプレー可能な環境を整える。価格を抑え、購入を容易とする。ゲーム機として極めて真っ当なアプローチであろう。ただし、コンピュータとしての性能を抑えているため、もし、「PS2改」が現れたら対抗できるのか、という感想はある。折しもそのPS2、値下げしている。付け加えると、一人であのリモコン(加速度センサが入っている)を振り回している姿を想像すると、少々滑稽な気がしないでもない。

(c)SCEI
しかし、ここの主役はもう一方、PS3である。ゲーム機として真っ当な戦略に則ったWiiとは全く性格が違うというのだから、PS3は極めて特色ある野心的な存在であると考えなければならない。
随所で見られる久夛良木氏(SCE社長 PS開発部隊のボス)の発言をまとめると、PS3はゲーム機の枠を超え、AV/エンターテインメント全般を守備範囲とする開かれたコンピュータになって欲しい…、という風に言っているのだと私は理解している。そうすると最初からLinux(OS)が搭載されているのも納得がいくし、よく目にする「Cellプログラミング講座」という存在も理解できるわけだ。そして、フルハイビジョン規格の作品を創り出し、あるいは加工するには、あの高性能がどうしても必要なのだと。
これを達するに当たって、最早従来のゲームハードのビジネスモデルは成立しないという。多くの人がPS3上で自由にソフトを開発し、公開し、それが新しく人を呼び込むという循環を起こすには、「PS3対応」の全ソフトから金を取るなんて真似はしていられない。4万円の壁に捕らわれることなく、本体のみでバランスを取らなければならない。その結果が、あの価格なのだという。高いと取るか、安いと取るか、これは微妙な問題である。ゲーム機としては極めて高価で、(NECのナニやらネオ○オとかはあったにせよ)本命と目される機種としては前例がない。だが、パソコン的な視点から見れば異常に安価と言える。そして、実際にPS3はこんな価格を宣言した。従来のゲーム機ではないというSCEの主張だろう。それは、PlayStationがPLAYSTATIONに変わったところからも推察できる。
では、構想はいかに仕様となっただろうか。まず、圧倒的な演算能力、要するにCellである。開発はソニー/SCEの他、IBMと東芝。このCellであるが、コア(計算をするところ)が9つもあるのは周知の通り。8つのSPEが計算を担い、1つのPPEが全体を制御する(のが基本)。さらに強烈なのは、ネットワーク経由で他のCellの計算能力を借りられること。それも、リアルタイム(1/60秒)で。これはPS3だけでなく、各種デジタル家電にも搭載され、CPUレベルのネットワーク形成を志向するものだ。そこを考えると、東芝が噛んでくる意味が何となく分かる気がする。(もちろん家電に積むには大袈裟なので、廉価版になるのだろうが)
そう、ネットワークである。PS3は当初よりSCEが用意するネットワークへ無料で接続が可能となる。どういう事をするつもりなのか私は知らないが、このプラットフォーム上で、例えば格ゲーのネットワーク対戦が出来たり、チャットやメッセンジャーのようなものがあったり、色々配信したり、もちろん計算能力を借りたりも出来るようになるだろう。エンタメ汎用機として考えるなら必要に違いない。ただし、あまり効果的な宣伝はなされていないようだ。
次にインターフェイス。PS/PS2のコントローラ・メモリーカードスロットが廃止されているのが目を引く。せっかくPS/PS2のソフトも遊べるのに何たる事かと思うが、メモカはアダプタ(同梱/別売り未定)で対応らしい。その代わり、USBはもとよりBluetoothやらMiniSDやらに対応して、PC然としている。メモカやコントローラを削ってこれらを組み込んだのも、やはりコンピュータを目指すの一言か。コントローラは専用品(無線版デュアルショック2)が同梱されるから良いとして、メモカ…。対応アダプタの同梱か否かは、かなり重大な問題となるのではないか。私は以前買ったPAR3にメモカ読み出し機能が付いてたから要らないが(何)。話題のブルーレイディスクはソニーとしては当然といったところだろう。DVD/CDの読み出しは主要全フォーマット対応(だよな?)なので、個人的には問題ないが。

さあ、ソフトである。良いソフトがなければ、どんな高性能コンピュータも単なる箱に過ぎない。ここでもCellの特殊な存在感が出てくる。Cell OSは下層部分と上層部分に分かれ、下層部分の上に既存のOSを載せることが出来る。つまり、PS3専用ゲームをしながら、別にLinuxを走らせて別画面で作業などという真似が可能だ。その気になればWindowsを走らせる事だって出来るらしい。そして、仕様はオープン。コンパイラは無料(多分)。7万円で高性能マシンのプログラミング・実行が出来るのなら、なかなか魅力的では無かろうか。プログラマーとしては。
まあ、PS3でプログラミングなんてマニアックな事をする人は少ないだろうが、その産物には興味があるわけだ。面白いフリーソフトが現れて盛り上がることが、恐らくSCEの狙いだろう。私も興味津々。大化けする可能性があるわけだが、これはもう、すっかりPCの発想である。
この辺りは意外と野望の匂いがするところで、世界でそれぞれ1億を売り上げたPS/PS2に乗っかって、ソニー、IBM、東芝のグループで、Intel、Microsoftから新世代コンピュータの世界を一気に奪い去ろうという意図を感じるのは、私だけだろうか。つまり、ゲーム機として何千万か売れる→面白いフリーソフトが出てる→(・∀・)イイ!→パソとゲームとDVDプレイヤー兼用で購入者増=PC市場を喰う。エンタメ機とは言いつつ、実際にはそれが出来るのならPCの作業は全てこなせるだろう、というのがミソだ。…まぁ、上手く行けばの話だが、そんなシナリオが予期されていたりしそうだ。
とは言っても、絶対的な数値として6〜7.5万円は高い。いくらPC比で安いと言っても、おいそれと払える金額ではない。少なくとも初動、短期的な動向で言えば、PS/PS2ほどの普及にはならないだろう。Wiiを下回る可能性も高いと個人的には思う。そして、最終的にどうなるかは、実績としてゲーム機の枠を超えていけるかに掛かってくるわけだ。息の長い戦いになるだろう。
個人的にMicrosoftは好きになれない。だから、PS3には期待しているとか結論したら妄想乙といったところか。いずれにしても、期待しているのは事実である。
初期不良さえなければ。
追記
9月22日づけで、HDD20GBモデルが5万円弱に値下げとなった。さらに、HDMI端子も付属するという。60GB型も値下げだと思うが、今のところ私は確認していない。
千年帝国