道具屋胡蝶堂
胡蝶《コチョウ》 いわくつきの道具ばかりを集めた店、『胡蝶堂』の麗しき女主人。
花邑右京《ハナムラ ウキョウ》 雑誌記者。
半永久の時間を生きる物に罪を刻むのは、命果てある者。
忌まわしい説話に塗れた道具に囲まれ、女はそこはかとない悲しみを身に纏う。
「私の肩に留まった蒼い蝶が真実を語りだすのサ――」
『血花盗人』
犯罪専門のルポライター、相羽萩一を心の師匠として信奉する花邑。大手ではないものの知り合いのツテでなんとか出版社に就職できたのはよかったが、現実はさらに厳しかった。
廃刊寸前のオカルト雑誌編集部に回されたのである。取材班も取材先も読者も眉唾の輩。真実を白日の下に晒す、というポリシーとは正反対の世界。しかし仕事となると真面目な花邑の記事は評判になり、微妙に売り上げ冊数も増える始末。
このままではオカルト評論家に成り下がってしまう。真剣に辞職を考えているところに、いわくつきの道具ばかりを並べている店があるという話を聞く。
主人は和服姿の美女だという。スケベ心をくすぐられた彼は、これが最後の仕事だと自分にいい聞かせて『胡蝶堂』の主人に連絡を取った。取材はお断り――彼女は一方的に電話を切り、それ以来まったく繋がらない。直接訪れても店は閉まっており、周囲の人々に訊いてみても首を振るばかりだ。
そんな日が続き、突然「いまどこにいるんだい」との電話が。『胡蝶堂』の主人だった。取材を受けてもいいという客が来たのだという。花邑は喜び勇んで『胡蝶堂』に出向く。
依頼人が持ってきたのは、陶器のティーカップ。底に赤い花弁が一枚描いてあるシンプルなものだ。これに紅茶を注ぐと、花弁が増えて五枚になるのだと依頼人はいう。
水面の乱反射でそういう風にみえるのではないか、という花邑を鼻で笑い、胡蝶はそのカップに紅茶を注いだ。確かに、花弁が五枚に見える。そして中身を流した後、図柄はしばらく映ったままだったのだ。「この現実をどう証明するつもりだい」。
カップはアンティークで、熱に反応するようなプリントが使われているはずもない。
「それを解明するのがアタシの仕事サ――」
私立探偵神原神
神原神《カミハラ ジン》 猿顔。怠け者。どうにかなるさ主義。趣味は美術鑑賞。
徒野人《アダノ ジン》 弁護士、犬顔。正義漢。アツい。マメ。機械音痴。
框温之《カマチ ヒロユキ》 神原が入り浸っているバー、『Good For Nothing』のマスター。通称・ヌルユキ。
ミハル 『G.F.N』の常連。ホステス。
檜垣春夜 S県警生活安全課所属の刑事。
『Godless God』
スナックで働いていた女性の調査を依頼された神原。行きつけのバーのマスターから有力な手掛かりを得たが、そこにいたのは変わり果てた姿の彼女だった。
既に死亡してから実に半年がたっており、捜査は混迷を極めた。神原は発見者として警察に協力するうち、彼女が怪しげな宗教に入信していたことを知る。
一方、弁護士の徒野は新興宗教団体を相手取った訴訟を任されていた。話を聞いているとかなり悪どい集団なのだが、被害者の会を作ろうにも脱退した人間は全て行方知れずだというのだ。そして依頼人も忽然と姿を消し――。
二人が出会い手を組んだとき、全ての真相は急速に暴かれていく。
『Lifeless life』
神原は一ヶ月前に姿を消したという子供の行方を追っていた。
手掛かりがないことに腐ってバーで飲んでいると、常連のミハルが携帯電話のアプリケーションを使って遊びだす。それは数年前に爆発的にヒットした携帯型育成ゲームの移植版だった。
その流れで“NETB@BI”(ネットベイビ)が話題に上がる。巷で流行っているという、人工知能を搭載したネットワーク型の育成シミュレートゲームのことだ。一つのプログラムを複数の人間で育てていく仕組みで、コマンドは多数決方式になっている。掲示板やチャットも併設されており、ユーザはここで意見・情報を交換して今後の“育児計画”を練るわけである。
翌日、“NETB@BI”に興味を持った神原はネットカフェに出向く。いざサイトを開こうとしたとき、ポータルサイトのニュースに目を惹かれた。『連続乳幼児誘拐事件』――零歳から三歳までの子供が全国各地で相次いで誘拐されているという。神原の追っている子供もちょうど二歳――。
そんな時、徒野が慌てふためいた様子で電話を掛けてきた。彼の可愛がっている姪っ子が昨日から行方不明だというのだ。
『Ageless age』
四十代の男性が神原に依頼したのは、妻の動向調査だった。写真を見て神原は驚く。依頼人よりも五つ歳上だというのに、異様なほど若々しいのだ。そうなりはじめたのがつい最近のことで、浮気ではないかと怪しんでいるのだった。
一週間彼女に張り付いたものの、それらしい証拠が浮かび上がらない。夫が探偵に相談をしたのを知っていて、しばらく潜伏させているのだろうかと神原は考え、罠を仕掛けようとする。
しかし、妻が突然麻薬所持の疑いでしょっぴかれてしまう。これは夫も神原も予測しなかったことだった。担当になったのはミハルの“王子様”・檜垣刑事。彼は探偵だという神原を毛嫌いする。サスペンスドラマの探偵でもあるまいし、刑事事件には首を突っ込むつもりもない。あんまりな扱いに神原は腹を立てる。
こうなったら腹いせに警察より先に入手ルートを暴いてやろうと、神原は尾行調査で手に入れた情報から独自に調査を始める。妻が以前常用していたサプリメントに常習性の薬物が混入されていたらしいことを突き止め、販売元へ顧客を装って訪れる。
漢方薬などが配合されているという『延寿丹』。試供品を手に入れた神原は、危ないと知りつつ好奇心からそれを口にしてしまう。ふと気が付くと全てを飲みきってしまい、新しい製品を手にしていた――。
浮気製作所
浮気縁《フケ エニシ》 所長、狐顔の謎めいた男。経歴、年齢不詳。
小泉鏡《コイズミ カガミ》 浮気の秘書。
恋のクーリングオフ、致します――。
浮気製作所、一風変った名前のその会社には様々な悩みを抱えた依頼人が来る。
「ときに。あなた、クピドの矢をご存知ですか?」
I /miss kiss kill/ you
高梁橡《タカハシ クヌギ》 哀愁の高校四年生。クールでドライな硬派、に見えるが案外抜け作。
水春人《ミズ ハルト》 謎の多いセクスィ系美人。切れ者でサバサバしているが、どこか危なげ。
英田辰美《アイダ タツミ》 橡を密かに慕う清楚で儚げな美少女。
池田了《イケダ サトル》 橡の元後輩・現クラスメイト。軟派。
出席日数が足りないせいで留年してしまった橡は、新しいクラスで春人と出会う。彼女の変った名前、そしてスタイルと美貌に圧倒された橡だが、ひょんなことから意気投合することに。
その夏休み、大学に進学した辰美が地元に帰ってくる。幼馴染である橡は久しぶりに会いに行くが、そこで見知らぬ男と談笑する春人を目撃してしまう。
以来二人はギクシャクし、クラス内にも妙な噂が広がっていく。橡は人間関係が鬱陶しくなり徐々に学校に通わなくなっていった。しかし了から春人の様子がおかしいと聞いて、久しぶりに登校した橡は、すっかり変貌した彼女を目にすることになる。
そして学校の周囲で起き始める妙な傷害事件。事態は最悪の方向に。
橡の机に刻まれた「お前を殺す」というメッセージ。犯人からの予告なのか、それとも誰かの悪い冗談なのか。予告日時が刻々と迫る中、橡は疑心暗鬼のまま犯人の捜索に乗り出すのだった。
恋はスウィートなメリケン粉
安藤茂策《アンドウ モサク》 何の変哲はない普通の高校生。イラチ。
五月女創《サオトメ ハジメ》 アフロヘアの謎の女の子。
弁当を忘れ、渋々昼食を買いに学食へ下りた茂策は、白い粉を吸ってラリっている変な男子生徒を発見する。次第に人だかりができ始め、生活指導の教諭までやってきた。
するとヤツは電光石火ですぐ近くにいた茂策の腕を取って走り出したのだ! 何故オレが! 問う暇もなく迫り来るパトカー! 結局連行されて事情聴取を受けることに。しかし、件の粉の成分を調べた刑事は大爆笑。「先生、こりゃァただの小麦粉ですよ」。
「やー、まさか本当に警察呼ばれるとおもわなかったぁ」ハジメと名乗った生徒は嬉しそうに頭をかく。「あと十年もしたらアカデミー女優になれるね」、え? あんた女なんですか? なんだかんだで創は茂策に付きまとい、気がつけばいつも彼女のペース。
飛び散る小麦粉! 炸裂するアホパワー! ロマンスなんかクソくらえ! ニヤニヤ笑いが止まらない、だけどちょっとエモい青春小説(の……予定)。
青春テロル A-side
梧桐ナオ《ゴトウ ナオ》 バイト探しに奔走する、元ひきこもりのドロップアウト。
五月女創《サオトメ ハジメ》 アフロヘアの謎の女の子。ドギツイ色の古着ばっかり着てるけど、よくみると結構カワイイ。
安藤茂策《アンドウ モサク》 創の彼氏のようなそうでないような良く解らん大学生。常に軽くキレ気味。
コンビニへバイトの面接にいったナオだが、店長の偉そうな態度がテッペンにきて、捨てゼリフを吐いて店を後にする。勢いで履歴書をゴミバコに捨てると、アフロヘアの変な女の子・創に声を掛けられる。「こういうところに履歴書を捨てるとどうなるか」というアホくさい寸劇を見せられた後、拉致られるようにミニに詰め込まれて何処かへ搬送される。
ついた先はファミレス。先に待っていた茂策が創の代わりに平謝りし、昼飯をおごると申し出た。
「劇団を旗揚げするのが夢だ」という創、名前まで決まっているという。その名も「青春テロル」。「よし、今から始動する!」という創の言葉により、ナオはとんでもない企画に巻き込まれていく……。
青春テロル B-side
小沢カズ 高校受験に失敗して以来、ほぼ無職の状態。刺激のない毎日にウンザリしている。
榛原 カズを裏の世界に誘う青年。
カズは毎日の時間をネットカフェで塗り潰す。バイトもしておらず、家にいるのは気が重いからだ。ネットゲームにも飽きてきた頃、あるサイトで変な広告を発見する。
あなたの捜査力を生かしませんか?――経験、年齢は不問。報酬は相談次第。本気ではなかったが興味本位でカズはコンタクトを取ってみる。どうやら与えられた人物の身辺調査をしろというものらしいが、面接の段で怖くなってカズはブッチを決め込む。
ところが、榛原が教えていないはずの電話を掛けてくるのだった。窓を見ると見慣れない車が玄関に止まっている。カズは逃げ出そうとするが、榛原は神出鬼没、全て先手を打たれてしまう。「君はもう逃げられない」――彼は否応なく裏社会に飲み込まれていく。
そして一年後。ミッチリと教育された彼は榛原の指令で一大作戦を決行する。
学校を標的にしたテロを。
デッドマン フロム サンデー
黄泉ワタル 本名は松永航。
柩チヅル 閻魔庁漂流一課のナンバーワン。人を見下した偉そうな女。
左前カラス 柩の秘書。真っ白な肌と髪と透き通るような赤い瞳の青年。
棺シュウ 三途川から運行されているシャトルバスの運転手。
誰か、誰か、オレをどこか遠くに連れてってくれぇぇぇッ!
勘違いから嫉妬深い恋人に滅多刺しにされて死んだ航。気が付くと小汚いバスで運送されていた。運転手のパンク野郎は「お前、閻魔庁行きだってな」とニヤニヤ笑い。
どうやらここは地獄で、恨みつらみのある魂が集う場所、らしい。「働かざる者、転生すべからず」のスローガンの許に馬車馬のように働かされる閻魔庁の職員、いまだ姿を現さない謎の閻魔大王。
死にながらにして地獄と娑婆を行き来できるのは、彷徨う霊魂を回収する“漂流課”のメンバだけ(しかも超優遇)。“黄泉ワタル”として一課のレギュラーに抜擢された航は、柩の指令により自分を殺した恋人を百回も殺すハメになる。
持ち前の頭脳とフットワークの軽さで次々とミッションをクリアしていくが、百回目の指令は難関で……。
12
黒いロングコートに皮の手袋、漆黒の橇を引くのは二匹の狼。
煙草の煙をくゆらしクリスマスの夜空を駆ける、彼の名はサンタクロース。
プレゼントなんか配らない。子供なんか大嫌い。
だけど、少し、“一途”には弱い。
ミルク
人間の女性に思いを寄せる野良猫は、来る日も来る日も彼女と言葉を交わせることだけを願った。そして街がとてもにぎやかな冬の日、男は突然現れた。「お前の願い、叶えてやる」。その言葉と共に猫の姿は人間に転じる。期限は一年。「気をつけな、キスをすると魔法が解けるぜ」。男はそう残して消えていった。
彼女に声を掛けることができた猫。
ある時、彼女は猫にキスをしようとした。しかし男との約束を思い出した猫は彼女を突き飛ばしてしまう。はじめのうちはなんとか誤魔化せていたが、とうとう喧嘩をしてしまう。猫は彼女の前から姿を消した……。
Onemore chance, Onemore time
霊感のあった彼だが、二十歳の誕生日を境にぱったりと幽霊が見えなくなった。
見慣れた景色もいつもと違う。先生の背後にくっついていたおばあちゃん、電信柱の影にいた女の子。鉄橋の下に住んでるおじさん。
――駅のホームに立ってる、あのコ。
はじめはうっすらとしか感じられなかった彼女の存在は、彼が気付いた日から徐々に濃くなっていた。最後に会ったのは、彼女に触れられたあの日。
わかっていれば、「さよなら」くらいいえたのに、と恋人とのデートも気が乗らない。
すると向こうから、聞き覚えのある声が……。