| 今をさること三十年ばかり前。ひとりの女性が義妹の誕生日の贈り物に、白い犬のぬいぐるみを選びました。黒くて長い耳と丸っこい鼻をもつその大きなぬいぐるみを、贈られた女性は大変気に入り、子供服を着せて可愛がっていました。 やがて彼女は、その犬の名がスヌーピーといい、アメリカのの漫画のキャラクターであることを知りました。以来、出始めたばかりのコミックを揃え、月刊SNOOPYを定期購読し、週刊朝日の日曜版を切り抜き…。そしてグッズも身の回りにどんどん増えていきました。 そのぬいぐるみの贈り主である女性には、娘がひとりいました。その娘もまた、叔母とそのぬいぐるみが大好きでした。買って貰ったコミックで覚えた知識で鼻を「ビー」と押してみたり、子供の手に余るサイズの彼を抱いて家中を走り回ったり。そんな姪を彼女はことのほか可愛がり、ことあるごとにスヌーピーのカードを贈ったり、父親の仕事の都合で海外に住むことになった時には、折に触れての荷物と共に森永のお菓子やサンリオの文房具を送り、月刊SNOOPYの定期購読も姪の名前で申し込んだりしたのです。 ここまで読めばおわかりでしょうが、その娘、とゆーのが私です。つまり、私のスヌーピー好きは、元はといえば母が叔母のためにぬいぐるみを選んだところから始まっているわけです。 そのぬいぐるみは、今でも叔母のもとで大切にされています。愛されたぶんだけ真っ黒になって、よれよれになっても、幸せそうに笑っています。彼のおさがりを着せられて育った叔母の娘ふたりは、二十歳を超えた今でも彼を愛情こめて「スヌ兄ちゃん」と呼びます。 先日、母と叔母に会った時、母がこんなことを言っていました。 「あのスヌーピーね、ちょっと他のと顔が違うような気がしたから選んだの」 彼は、売り場で母を待っていたのかもしれません。彼が叔母のもとへきたことによって、叔母と私が幸せになれた、ってことがなにより素敵なできごとじゃないかな、と思うのです。 |