本文
マリアの聖霊に感じて孕んだことは羊飼いたちを騒がせるほど、醜聞だったことは確かである。
クリストの母、美しいマリアはこの時から人間苦の途に上り出した。
羊飼いたち・・・ルカによる福音書2章8。
醜聞・・・この言葉にも、<私生児クリスト>が見えてくる。
美しいマリア・・・ルネサンス時代の宗教画はともかく、マリアの美しさに関する記述は聖書に見られない。<美しい>という言葉には、皮肉が隠されているか。この<美しい>という記述は他に2個所見られる。
マリアの出産に羊飼いたちは騒ぎ立てました。ここに<醜聞>と書いたのは、マリアがヨセフ以外の男との間に子供を作ったから、という解釈が成立ちます。マリアの<人間苦の途>とは、
・これから世間の目を気にすること
・夫ヨセフに恥じること、あるいは負い目を感じること
・私生児クリストを育てていかなければならないこと
などでしょう。
ところで、芥川はなぜ、母マリアを<美しい>と書いたのでしょうか。不義を働いたものの、後世は<聖母>としてマリアを崇拝してきました。ここには、そんなキリスト教徒に対する皮肉が込められているのではないでしょうか。