10.ヨハネの言葉

本文

「世の罪を負う神の仔羊を観よ。我に後れ来らん者は我よりも優れる者なり。」――バプテズマのヨハネはクリストを見、彼のまわりにいた人々にこう話したと伝えられている。

壁の上にストリントベリイの肖像を掲げ、「ここにわたしよりも優れたものがいる」と言った、逞しいイブセンの心もちはヨハネの心もちに近かったであろう。

そこに茨に近い嫉妬よりもむしろ薔薇の花に似た理解の美しさを感じるばかりである。

こういう年少のクリストのどの位天才的だったかは言わずとも善い。しかしヨハネもこの時にはやはり最も天才的だったであろう。丁度丈の高いヨルダンの蘆のゆららかに星を撫でているように。……


「世の罪を負う神の仔羊を観よ。〜・・・ヨハネによる福音書1章30<世の罪を取り除く神の子羊。わたしのあとに来るかたは。わたしよりもすぐれたかたである>バプテズマのヨハネは、自分が洗礼を授けていた人たちにこのように話した。なお、バプテズマのヨハネと福音書を書いたヨハネは別人。

この時には・・・のちにヨハネは投獄され、クリストに対して「クリストはお前か、私か」と対決の姿勢を見せる。正編11参照。


天才同士といえど、理解よりも嫉妬の感情を持つことがあります。しかしバプテスマのヨハネには、その様な感情は(はじめは)無縁でした。ヨハネは自分よりも後から来たクリストに対し、その天性を引き伸ばす上で重要な役割を果たしながらもクリストを自分よりも優れたもの、と評価しました。<英雄は英雄を知る>とよくいわれます。律法学者やパリサイ人がクリストの天才を認めなかったのにくらべ、それを見出したヨハネはやはりクリストと同じくらいに天才だったといえるのでしょう。