17.カヤパ

本文

祭司の長だったカヤパにも後代の憎しみは集っている。

彼はクリストを憎んでいたであらう。が、必ずしもこの憎しみは彼一人にあった訣ではない。

ただ彼を推し立てることのクリストを憎みあるいは妬んだ大勢の人々に便利だったからである。

カヤパはきららに袍を着下し、冷やかにクリストを眺めていたであろう。現世はそこにピラトと共に意気地のない聖霊の子供を嘲っている。燃えさかる松明の光りの中に。……


カヤパ・・・クリストが十字架にかかる前に尋問した人物。

意気地のない・・・クリストは彼の質問に対しひとことも答えなかった。彼の目から見れば、クリストは意気地ないものに見えたのだろう。


サドカイの徒やパリサイの徒がクリストを殺すために押し立てたのが大祭司のカヤパでした。

カヤパは<詩的正義>を理解し得ない俗人の一人ですが、大祭司という地位のみでクリストと対峙しました。しかしいくら威厳を保とうとしても、彼は所詮、この<犬>たちの傀儡にすぎません。

なお、後代の<サドカイの徒やパリサイの徒>は寺院を建て、このカヤパを悪人に仕立てています。カヤパよりもむしろ、<抜け目ない処世術を講じ>ている<サドカイの徒やパリサイの徒>に対し、芥川の批判の目は向けられているのです。