2007/10/08

クローズド・ノート

 主演女優さんが何やらマスコミのバッシングを受けている由ですが、そんなことでこの映画の価値は微動だにしません。

 アパートの同じ部屋に住んでいた住人が忘れていった日記帳、これが物語の中心となる小道具です。アパートに後から住んだ女子学生は、その日記帳は自分が目指しているのと同じ女性教師が残したものだと気づきます。その日記はある年度1学期の最初から始まり、3学期最後の手前で終わっています。教師として新米であるその女性は1年間掛けて子供たちと対話し、自分が成長していく過程を刻明に綴ります。女子学生はそのノートによって女性教師の成長を追体験し、その学習内容を自分のものにしていきます。そして破られていた最後の1ページが物語のラストシーンで意味を持ちます。

 人間はなかなか自分で経験したことしか身に付かないものですが、こうして他人の学習内容を追体験することで経験していないことも学習できます。だからこそ机上での学習には意味があるのだ、という言い古された当たり前のようなテーマですが、それが京都の街を背景に2人の女性と1人の男性が上手く絡んで進行し、おまけに主演・助演女優が上手な上に素晴らしく綺麗なので、観客を上手く引き付ける映画に仕上っています。どうしても女性教師を最後に死なせなければならない必然性はちょっと納得できないものも感じますが、既に死んでいた人の文章で一人の若者を大きく成長させたという筋書きは確かに上手くできています。私も昔から万年筆を愛用しています。それ故主人公のアルバイト先が万年筆専門店という今時珍しい設定になっていることに違和感はありませんでした。この秋、就職を決めてきた息子にやはり万年筆を贈ろうかな、と思わせる良い映画でありました。

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