2009/04/25

グラン・トリノ

 題名は今から30数年前「刑事スタスキー&ハッチ」で主人公たちが乗っていたアメリカ製自動車の名前ですが、これは別に自動車の映画ではありません。自動車は象徴的な意味でちょっとだけ使われます。

 既に引退した主人公は元フォードの自動車組立工で、自分が組み立てた1972年型フォード・グラントリノと愛犬だけを友として一人暮らししています。はっきり言って偏屈老人であり、子供・孫達からも相手にされていません。近所付き合いなど自分から拒否しています。彼は朝鮮戦争で上官の命令によらず人を殺したことに非常な後悔を抱えて生きています。そんな彼が隣家の東洋人家族と打ち解け、そこのひ弱な息子の面倒を見始めます。こういうひ弱な男の子が父親以外の男性から薫陶を受け、だんだん逞しい大人の男に育っていくという話は一つの定番であり、スナフキンとムーミンの関係もその一種です。その男の子は地元の与太者グループから目を付けられてしまい、それを解決するために彼は最後の勝負に臨みます。

 これはハリウッド映画ですが、単純なハッピーエンドにはなりません。しかし見終わってよくよく考えてみれば、これは一種のハッピーエンドでもあると解釈できるような気もします。それは映画というものをどういうものとして付き合うか、という姿勢のようなものによるとも言えます。とても良い映画だから皆さんご覧になって下さい、と単純にお勧めする気にはなりませんが、私に取っては見てよかった映画の一つに数えておきます。これは俳優たるクリント・イーストウッドの引退作品だそうです。

 映画そのものの話ではありませんが、この1972年型フォード・グラントリノを登場させ、題名にまで使っているのは、勿論フォード社のお金も絡んでいるでしょう。しかしこの第1時石油危機の前年に作られた、つまりアメリカ人は燃費なんて余り気にしなかった時代の大排気量アメリカ車でを敢えて選んだのは、この時代遅れの恐竜のような自動車を主人公に見立て、一つの象徴として表現しているのでしょう。映画の中で自動車は単なる道具ではない扱いを受けることがあります。こういう描き方もまた描かれる車にとって幸せな使われ方かもしれません。

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