2006/10/17
日本人の大好きな自己犠牲礼賛物語を、ひねくれ者の私は大嫌いです。それ故この映画も余り気が進まなかったのですが、思い立って足を運んでみました。大東亜戦争末期に登場した、神風特攻隊と並ぶ強制自殺兵器である人間魚雷“回天”の話です。良くもまあこんなものを発明したものです。発明したのが我々と同じ日本人であること、私達の体には嫌でもその血が流れていることを知っておかねばなりません。私達は基本的に自己犠牲が大好きなんです。この国で美談と言ったら、それは集団のために進んで自己犠牲を払う個人の姿を意味します。満天下子女の紅涙を絞るに最も手軽な材料と言えましょう。
この映画自体は決して自己犠牲礼賛ではなかったと思いますが、それでも登場人物は淡々と死に過ぎます。主人公浩二は、回天を繰り出しても日本は戦争に負けると解っていながら、親や妹や彼女を悲しませることも解っていながら、まともに走らない回天の中で敵にぶつかることもできず海底で死にます。まさに100%の犬死にで、自分をこんな目に遭わせた馬鹿者の集団に対する怒りと憎しみをぶつけなければ人間ではありません。話に現実感がないんです。あの戦争、とくにミッドウェイでもレイテ沖でもボロ負けし、もう敗戦確実と解った後の大東亜戦争は、人間の集団は一体どこまでお馬鹿になれるかという実験でした。このお馬鹿実験を始めた、そしてお馬鹿実験であることが解ってなおそれを止められず、ひたすら問題の顕在化を1日延ばしにするために若者達の命を犠牲にし続けた馬鹿者達に対する怒りと憎しみを表現しなければ、戦争映画とは言えません。
この映画を敢えて誉めるなら、1999年の【秘密】以来、7年ぶりとなる竹内まりや書き下ろし主題曲「返信」が良かったこと、そして私にとっては「スイング・ガールズ」以来に見る主演女優さんが可愛かったことぐらいです。そういえばこの主演女優さんも【秘密】の主演女優さんと同じく「クレアラシル」CMで世に出た人だそうです。
さて神風特攻隊を描いた映画は数知れず、回天も出ましたので、後はこの2つと並ぶ三愚兵器とも呼ぶべき有人ミサイル“桜花”がその内映画化されるかも知れません。因みに桜花の連合国側コードネームは「BAKA Bomb(バカ爆弾)」または単に「BAKA」だった由。なんの戦果もなく、ただただ目の前で無意味に死んでみせるだけの兵器でしたから。