2009/07/11

難聴日記

 難聴は、近視に比べるとずっと格好悪いものというイメージがありますが、しかし隠して隠し通せるものでもありません。むしろコイツは難聴なんだという事を知っておいて貰わないと、“聞こえない振りをしている”と思われる危険があります。これは本当に危険なんです。そんなわけで、私がいかに生まれ付きの難聴に気付き、どうやって工夫し、それと戦ってきたかを、大いに端折ってご紹介します。ご理解いただければ幸いです。


【記憶の彼方】

 小さい頃、何となく「おにーちゃんは、ボクより耳がずっといいらしい。」と気付いていた記憶があります。どんなに抜き足差し足しても、兄にはすぐ見つかってしまうからです。また私がTVやラジオを聴いていると、父から「音が大きい」と注意されたことが何度もあります。今から思えばこの段階で難聴に気付いても不思議はなかったんですが、ちゃんと気付いて貰ったのは次の状況です。

【最初の発見】

 小学4年生頃でしたか、お医者さんが気付きました。「あれ、この子耳が悪いな。」って。流石にプロですね。微かに55db(注)と言われたような記憶があります。暫く治療に通い、ある程度は回復したようです。
注:db:デシベル 音の大きさの単位。これが大きいほど大きな音を表す。聞こえる最低の音が大きいという事は、逆に言えば聴力の弱さの単位でもある。

【現状】

 後述するデジタル補聴器or集音マイクの助けを借りて、取り敢えず大きな支障無く暮らせています。これに後は耳栓さえ手放さなければちょっと見には健常者と大きく変わらないつもりですが、本人がそう思っているだけかも知れません。

【不便なこと】

当然不便なことは沢山あります。
1.小さな音が聞こえない(言うまでもなく)。
2.音の来る方向が分からない。電話がどこで鳴っているのか分からない。
3.複数の音から目の前にいる人の声が選り分けられない。故に賑やかな呑み会には参加できない。
4.騒音に弱い。

1.だけは補聴器である程度何とかなりますが、
2.以下はお手上げです。遠くから呼ばれてもどこから呼ばれたのか分からずぐるぐる見回したり、目の前の電話が鳴っているのに全然気が付かなかったり、逆に人の電話が本人の目の前で鳴っているのに代行受信で取ってしまったりするのはそんなわけです。
3.も困ったもので、目の前で話している相手の声と、周りで話している人々の声が混じり合ってしまって、音としては聞こえても意味をなしません。従って賑 やかな呑み屋では目の前1mにいる人が何を喋っているのか全く解りません。この状態で呑み会に参加しても、参加しているのは体だけです。話しかけられても返事をしていないはずです。これでは健常者の皆さんに失礼と思い、ここ数年の呑み会は殆ど欠席し ています。最近心ある人が小人数でかつ個室の呑み会を企画してくれました。1年2ヵ月ぶりの呑み会でした。私が参加できるのは殆どこのパターンだけです。 小人数&個室、特に後者が問題なんです。飲食業界で個室といえばとにもかくにも隣の席と何かの仕切りがあればそれを個室と呼びます。私の場合、個室は文字どおりの個室、つまり防音の個室でないと意味がありません。そういう個室を備えた飲食店は本当に少ないです。
4.は健常者にはなかなか想像しにくいでしょうね。自衛手段は賑やかな場所へ近寄らないこと、そして外出時、特に電車に乗る予定がある時は耳栓を常に手放さないことです。会議の予定がなければ補聴器はそれほど必要ありませんが、耳栓を忘れて外出したら酷いことになります。

【補聴器について】

デジタル補聴器「Resound Air」  5年前から使っているデジタル補聴器です。パソコンが2〜3台ぐらい買える値段ですが、アナログと違って大きくすべき音は大きくし、そうでない音は大きくしないとか、元々大きな音はそれ以上大きくしないといった芸当ができるようで、一言で言えばうるさくない補聴器です。アナログの場合はその場の音量に併せて常にボリュームを調整しなければなりませんし、隣の人が大音量で咳払いするとそのまま聴力をハレーションさせてしまいます。その点デジタルは楽です。

 ただし複数の声や音が同時に入ってきたらやはり聞こえません。会議用には指向性の高い集音マイクのようなものが欲しいです。携帯電話ぐらいの大きさで、指向性マイクが内蔵され、イヤフォンで聞くといった製品が欲しいです。

パナソニック製ポケット型デジタル補聴器  そこで見つけたのがこの「ポケット型デジタル補聴器 Panasonic Onwa WH-103JJ」です。両耳イヤフォンの耳部分にステレオ式のマイクが付いていますので、ポケットの中で擦れる音を拾う事もなく、うまく立体音を拾う仕掛けになっています。今までポケット型のアナログ補聴器は複数試しましたが、小さな音も大きな音も同じ割合で増幅してしまい、小さい音以上に大きい音がダメな私は結局使えませんでした。これは本体がデジタルなので、本当に聴こえて欲しい、目の前にいる人の声だけをうまく拾ってくれるはずです。まだ使い始めて数日なので、体も慣れていませんし調整もまだ完調ではなく、まだ価値を理解できるところまで行っていません。

 補聴器製造会社は何故か、補聴器というものはできるだけ目立たないように、着けていることが回りの人に解らないように作ることが正しいと思っています。もし補聴器が完全に機能し、健常者と全く同じように聴こえるならそれも良いのですが、残念ながら補聴器が役に立つのは、1.周りが静かで、2.相手の声だけが聞こえ、3.その声が小さすぎて聞き取りにくい、という場合だけです。賑やかな場所では全く役に立ちません。多分この点は今後どれほどのハイテク補聴器が出てきても変わらないのではないかと思います。そして、補聴器が完全に機能しないのであれば、難聴者がそれを隠すことは非常に危険です。補聴器はむしろできるだけ大きく目立つ色で作り、まわりの人から“この人は補聴器を着けている”と知ってもらう必要があります。その意味でもこのヘッドフォン式デジタル補聴器は、人から見えることもまた性能の一部といえます。 2009/07/11
電話の拡声器「スマイルキッズ」  仕事用の電話機には本体と受話器の間に入れる増幅器を取り付けてもらいました。大阪では内線PHSだったので市販のイヤフォンマイクを使っていましたが、この春東京の本社ビルに戻ってみたら何と普通の固定電話機でした。着任して暫くは余り電話もなく不便も感じませんでしたが、2ヶ月目になってそれなりに電話が増えてくるともういけません。業者さんに色々探してもらい、やっと付きました。電話が鳴った時、この相手は聞こえるように話してくれるだろうか、という不安感がほぼ解消します。これがあるのと無いのとではストレスが全然違うのです。2008/06/09

 そんなわけで私は生まれ付き軽度の難聴者ですが、別に頭が悪いわけでも、何かを怒っているわけでも、ましてアナタを嫌っているわけでもありません。もし私が話しかけても返事をしなかったり、質問と違うことを答えたり(注)した場合は、「コイツは難聴者なんだ」ということを思いだしていただき、ホンの少しだけ大きな声でゆっくり話してください。それだけで何の問題もなく、会話できます。大きさより速さの方が問題です。ご面倒をお掛けしますがよろしくお願いします。

注:私は飛び飛びに聞こえるキーワードと口の動きから“多分こんな事を言ったんだろう”と見当を付けて会話しています。その見当は当たることもあれば、当然当たらないこともあります。

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