2009/11/01
組織の情報共有を阻害する要因
私は十数年前から日本システムアドミニストレータ連絡会という、一種の異業種交流団体のような集まりに混ぜて頂いています。ここに参画している人々が強く考えている事の一つは“自分の所属する組織に於ける情報共有を如何に上手くやって、生産性を引っ張り上げるか”という事です。私もそれをずっと考えています。
情報共有が上手くいかない原因の一つは、メンバーのITリテラシー、つまり情報技術を活用する能力が充分でない事です。それは確かにその通りです。しかし、組織内で情報共有が上手く行かない理由の大部分がそれだ、と考えるのもまた正しくなさそうです。情報共有に対するもっと強力な阻害要因が他にあるからです。横綱級の要因が、多分2つあります。その要素に短く名前をつければ「1.知らしむべからず」と「2.唇寒し」です。 1.知らしむべからず人類が組織と名の付くものを発明して以来、多分一つの例外もなく、組織内には必ず矛盾があります。要するに、建前と現実のズレです。どんな組織にも、そこで公式に掲げている建前と、内部者が実感している現実には、必ずズレがあります。もし、ご自身が所属される組織にそんなものは無いと断言される方がありましたら、是非ともご一報下さるようお願いいたします。その矛盾を余り目立たせず、問題を潜在化させ、つまりは表面的な平和を維持するために、組織は必ずいくつかの平和維持装置を作り上げます。その一番簡単なものが、この「知らしむべからず」です。非常に簡単に言えば、組織内に於ける各種の情報を、できるだけ解り難くしておくこと、つまり情報共有とは正反対です。 ある事柄について、ある側面では「AはBである」とされているのに、別の側面では「AはCである」とされている場合、その情報へ簡単に到達できるようでは、「おかしいやないか!」と言い出す者を招きます。従って、組織内では「AはBである」も「AはCである」も、相当な必要性に迫られ、数々の障害を乗り越えた末、やっとの思いで探し出せるようなところにしか掲示されていません。同時に両方を知るチャンスなど、殆どあり得ないようになっています。この矛盾によって不利益を被る人々が多くても、それを知る機会が極めて制限されている故に、一定の平和が保たれます。もしある組織において、必要な情報が非常に得難い、肝心な事がどこに書いてあるのか、どこに問い合わせれば良いのか非常に解り難いと感じられるなら、まずこの平和維持装置が有効に作用しているのではないかと考えてみてください。しかし、時々この両方を同時に知ってしまう出しゃばり君が現れます。その時こそ、第2の平和維持装置が起動します。2.唇寒し
“物言えば 唇寒し 秋の夜”でしたっけ。有名な俳句から拝借しています。要するに、物を言わない方が得になる、物を言えば、言った本人が損をするだけで、組織は何も変わらない、という状態を維持する事です。また、その事実を広く知らしめることも重要です。これが第2の平和維持装置として機能します。 どんなに力を入れて「知らしむべからず」を実現しても、必ずこの矛盾に気づく者は出ます。その時のために、その矛盾に気づいたとしても、それを口にしないことが個人の利益を約束すること、その約束が言わず語らずの内に共有されていること、早く言えば“大人気ないことを言っても何の得にもならないと、皆が理解している事”が第2の平和維持装置です。これは改めて解説するまでもなく、人類の集団、特に日本人の集団では強力に作用していること、組織内に数年もいたことのある人は一人残らずご存知ですよね。こんな訳で、人々の思いとは裏腹に、組織内に於ける情報共有はなかなか進みません。少なくとも、必要な人々が必要なレベルでIT活用技術を習得しただけでは決して進みません。何しろ情報共有を進めない方が都合の良い要素もあるのですから。組織内の情報共有を進め、生産性を向上させるためには、この“情報共有を進めたくない要素”を如何に排除するか、技術だけでは決して解決しないこの問題とも向き合う必要があります。 そういうオマエは何をやったんだ?というご質問は平にご容赦の程を。