食事を抜いてこの本を読め!!

ジャンル コミック ファンタジー
書名 イティハーサ(全15巻)
著者 水樹 和佳
出版社 集英社 ぶーけコミック ISBN 4-08-860186-6 値段 390円〜410円
名言 人は善神によってのみ救われるのではないのです
それぞれに それぞれの形で救いの道を求めることができるのです
これが私の求めていた答え・・・
感想  これは、なかなか本格的な物語です。
 実は、ボクも、ついさっき読み終えたばかりで、技巧とか構成とかを、ちゃんと分析したわけではなんだけど、この本の感動はいち早く書いておきたいと思いました。

 この「イティハーサ」は古代日本を舞台にしたファンタジーです。
 剣と魔法の大冒険スペクタクルです。

 簡単にストーリーを書くと、

 「目に見えない神」を信奉する部落に育った主人公 鷹野(タカヤ)が、川に流された捨て子の女の子を拾い、透"示古"(トオコ)と名付け、自分の妹として育てます。
 その部落は、真言告(まことのり)という、魔法の呪文を代々受け継いでいます。
 主人公は、その真言告(まことのり)を受け継ぐ神官の見習いのようなことをしています。

 彼らが、思春期を迎える頃、その部落が武装した一団におそわれ全滅します。
 主人公 タカヤと義理の妹 トオコ、そして彼らを兄のように守り育ててきた青比古(アオヒコ)の3人が生き残り、別の武装集団にかくまわれます。

 その集団は、「目に見える神」"正法神・律尊"に率いられており、彼は主人公たちに神々の戦いについて語ります。
 彼が言うには、神には、善神と悪神がいて、自分(正法神・律尊)は善神であり、悪神から人々を救うために旅を続けているのだとのことです。
 その善悪それぞれの神々は、大陸から主人公たちの島国にやってきたと云います。
 そして、それまで平和だった島国に戦争を持ち込んだのです。

 いろいろな葛藤がありながらも、主人公たちは"正法神・律尊"と行動を共にすることにします。
 そして、様々な冒険を繰り広げながら、主人公・ヒロインの出生の秘密が暴かれていく。

という話です。

 筋書き自体は、どうということのないファンタジーですが、その中で描かれる人間描写は、巻を追うごとに迫力を増します。

 話のテーマは、善と悪の間で迷い揺らぐ、人間というものの生き様をありのままに綴ったものです。
 善悪2つの神の戦いとか、昔は自然と調和した日本古来の神がいて、それが大陸からの神に駆逐されていった、というプロットは、今時珍しくもないですね。

 江戸時代に本居宣長が唱えた「大和魂と唐心」を思い出させます。
 太古の昔の日本人は、自然に調和した和を大切にする心「大和魂」を持っていたが、中国から輸入した様々な思想「唐心」のせいで、「大和魂」が汚され、日本人は「真心」を失ったという思想ですね。

 しかし、この作品の魅力は、そういう日本のルーツみたいなところにあるのではないようです。

 読んでいて感じたのは、
 「かつて争いがなかった島国に、善悪の神の争いが持ち込まれた」
というのは
「かつて平和だった日本に、中国の小賢しい理屈が持ち込まれて、日本人らしい心が失われた」
という本居宣長の思想のメタファーというより
 「かつて無邪気に暮らせた子供時代から、善悪の狭間に悩む思春期を迎え、それを統合した大人に成長する」
という、人間の成長のメタファーのように思えます。

 実際、ボクが読んでいて、心が引かれたのは、主人公やヒロイン、そして彼らの周囲の人々が、悩み苦しみながら成長していく様子が、非常にまっとうに正直に書かれていることです。

 そして、それぞれのキャラクターがそれぞれに自分なりの答えをもとめ、ある人はそれを見つけ、ある人は見つけられない中で、それぞれに自分の人生を生きていく様に、非常に勇気づけられました。

 この本については、また機会をみつけて、きちんと評論したいと思っています。

 稚拙な感想文におつきあいいただき、ありがとうございます。

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