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| ジャンル | 純文学 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 書名 | ねじまき鳥クロニクル | ![]() |
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| 著者 | 村上 春樹 | |||||
| 出版社 | 新潮文庫 | ISBN |
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値段 |
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| 名言 | ひとりの人間が、他のひとりの人間について十全に理解するということは果たして可能なことなんだろうか。 | |||||
| 感想 | この作品はボクを激しく揺さぶって動揺させた。 正直、村上春樹の文章力に感服したし、かなわないと思った。 妻の微妙な行動の変化から、読者に少しづつ疑惑を感じさせ、突然の失踪で謎を深める。そして、残酷な手紙で絶望感すら感じさせるのだ。 ボクが、クミコの裏切りに対して感じた嫉妬は、もしかすると村上の才能に対する嫉妬かも知れない。 さて、この作品のタイトルは「ねじまき鳥クロニクル」です。 人々はとくべつな人間にしか聞こえないその鳥の声によって導かれ、避けがたい破滅へと向かった(文庫版第3部 P345) という鳥なのです。 クロニクルというのは、年代記のことだから、この作品は、そういう鳥の年代記です。 みなさんは、どんなストーリーを想像しますか? 歴史の片隅で人々の生と死が繰り返されている。戦争や陰謀や権力闘争を通じて、多くの人々が損なわれていく。その生と死を見つめながら、世界のねじを巻続ける、ねじまき鳥を通じて、人の生のはかない悦びと悲しみを描く う〜ん、なにか似た作品を思い浮かべません? 彼がこの作品のモチーフに選んだのは、妻の裏切りと失踪でした。 この「ねじまき鳥クロニクル」も、ある日突然、妻が何の知らせもなく去ってしまった主人公が、妻を取り戻すため、夢と現実の狭間をさまよう話です。 物語は、1本の電話から始まります。 そして、ある日、主人公の妻クミコは失踪してしまいます。 一度は、加納クレタと新しい人生を始めようと考える主人公、しかし、彼は不思議な夢を通じて、クミコが彼に救いを求めていること、彼がクミコを愛していること確認し、日本に残りクミコを救い出すことを決意します。 僕は逃げられないし、逃げるべきではないのだ。(文庫版第2部 P322) そして、邪悪な存在である綿谷昇と主人公のクミコをめぐる対決の幕が切って落とされます。 この作品では、主人公の対となる邪悪なもの、欲望や死や権力と云ったもの象徴として綿谷昇という人物が登場します。 「綿谷ノボル様は岡田様とはまったく逆の世界に属している人です」と加納クレタは言った。それからしばらく口を噤(つぐ)んで言葉を探していた。「岡田様が失っていく世界で、綿谷様は獲得していきます。岡田様が否定される世界で、綿谷様は受け入れられていきます。またその逆のことも言えます。だからこそあの方は岡田様のことを激しく憎んでおられるのです」(文庫版第2部 P260) もちろん、最後は主人公が勝利します。 「もし僕とクミコのあいだに子供が生まれたら、コルシカという名前にしようと思っているんだ」と僕は言った。 そして、笠原メイと別れ主人公は日常へ帰っていくのでした。 し〜か〜し〜、めでたし、めでたしでは、すまないんです。 もっとひどいことにだってなりえたのだ(文庫版第3部 P507) つまり、この結末は、まだましだ、と言っているわけです。 クミコは保釈中も誰にも会おうとしなかったという、それなら主人公の元にクミコが返って来るという保証はないんじゃないかと思うのです。 もちろん村上春樹が、予定調和的な大団円を嫌ったという側面はあると思います。でも、それにしても、主人公が何からクミコを救ったのかハッキリしないのです。 作品を読めば、綿谷昇が邪悪な存在であることは書いています。 それと、もう一つ。 日中戦争の話に出てくる、間宮中尉と皮剥ボリスの相克は、上手く描けば主人公と綿谷昇の相克に対比でき、物語に深みが出たように思えるのです。 間宮中尉と皮剥ボリスの話は、掻い摘んで言うとこういう話です。 シベリア抑留で強制労働させられた間宮中尉は、残酷な拷問を行う秘密警察の幹部ボリスに取引を申し出られます。 ボリスに、「呪い」という超自然的な力があったのか、単なるハッタリかは分かりません。そこをハッキリさせたほうが、わかりやすいのにと思います。 クミコと主人公がおかしくなった原因は3年前、クミコが子供を堕胎したことに始まっています。彼女は、綿谷家に流れる暗い血をおそれて子供を堕ろしたのです。 綿谷家が、日中戦争当時の満州に関係があるという記述はあります。
そういう筋立てにしてしまえばいいのに、と感じてしまいます。 まあ、村上春樹は、そういう予定調和を嫌ったのかもしれませんね。 ただ、この作品は、ものすごくボクを揺さぶったし、ボクのいろいろな想像力を刺激したのは確かです。 読むことが時間の無駄にならない数少ない作品の一つかも知れません。 (2000.11.11) |
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