食事を抜いてこの本を読め!!

ジャンル マンガ SF ファンタジー
書名 天使禁猟区
著者 由貴 香織里
出版社 花とゆめCOMIC(白泉社) ISBN 省略 値段 379円
名言 僕は貴方を告発します セヴォフタルタ様!!
感想 (あらすじ)
 主人公、無道 刹那(むどう せつな)は実の妹、沙羅(さら)に想いを寄せていた。親とも上手くいかず、悪友と放蕩繰り返す刹那の周りで、次々と怪奇現象が起こる。
 実は、彼は太古の昔、神に反旗を翻した天使アレクシェルの転生した姿だった。
 一方、アレクシェルによって地中深く封印されていた、アレクシェルの双子の弟ロシエルの復活のため、上級天使カタンは、少年少女を生け贄に捧げる「天使禁猟区計画」を発動する。
 蘇ったロシエルは、執拗に刹那を襲う。
 天界・地獄・人間界を巻き込んだ、彼らの対決の行方は、そして刹那と沙羅の愛の行く末は
 この作品はロマンホラーの傑作「伯爵カイン」シリーズの由貴 香織里によるオカルト色の強い良作です。
 近親愛や天使・神などディープなテーマを扱っているため、好き嫌いは分かれると思いますが、エンターテイメントとしての面白さ、心理描写の深さなど、大人の鑑賞に堪える作品ですね。(刹那が幼すぎる性格なので、イライラしますが・・・)

 伯爵カインでもそうですが、由貴の作品は、親に愛されていない主人公が冷酷な父親との対決を通じて成長していく、という筋書きが多いですね。ツルゲーネフの「父と子」などに代表される父子相克ものですが、由貴の特徴は決して父は子を愛していないことです。

 例えば、伯爵カインでも、主人公のライバルとして異母兄弟ディズレイリが登場します。カインでは、カインの父は失踪し、秘密結社を作っているのですが(主人公は父は死んだと思っている)、その秘密結社の幹部候補生の一人がディズレイリです。
 主人公の父は、血を分けた子であるディズレイリに「(お前は自分が愛されていると思っていたかもしれないが)私は、愛するフリぐらいはできるんだよ。」とうそぶきます。

 天使禁猟区では、主人公の父は家族を捨てて若い愛人に走っていますし、すべての天使の父である創世神は、ただ自分があがめ奉られることだけを望む狂気の固まりとして描かれます。

 伯爵カインも天使禁猟区も、妹に恋する主人公が男兄弟と争いながら、最後は父親を殺す話なんですよね。
 なんていうか、典型的なエディプス・コンプレックスですよね。病気です。

 伯爵カインは途中で作者が、執筆をやめてしまったので父殺しまではかかれませんでしたが、天使禁猟区ではついに父を殺さざるを得ないところまで来てしまいました。
 ふつうは遠慮するぞ! 

 さて、ボクが由貴の作品を好きなのは、作者のエディプス・コンプレックスの陰で、結構いいエピソードが書かれているからです。
 特に天使ラジエルのエピソード(11巻)は圧巻です。

 エリート天使として成長をしてきたラジエルは、スラム街の調査隊に参加します。そこで出会った少女シャティエルは、羽が片方しかないため(天使だから羽があるんです)、被差別階級としてスラムに住んでいます。彼女は、天使の世界では禁じられている"恋愛"の結果生まれてきた子供"Iチャイルド"(インプロパ・チャイルド:あるまじき子供)の世話をして暮らしています。
 彼らに出会い、スラムの恵まれない現状を改善したいと思った彼は、独裁者セヴォフタルタにスラムへの援助を直訴します。
 受け入れられる彼の願い。
 しかし、救援物資の中にはスラムを全滅させるための爆弾が仕掛けられていた。
 シャティエルを失い深い悲しみを受けたラジエルは、独裁者セヴォフタルタを告発しようとする。その台詞が、名言に書いた「僕は貴方を告発します セヴォフタルタ様!!」です。
 最高権力者に真っ向から刃向かった、彼の運命は?
 ボクは、ラジエルのような純粋な人間って結構好きなんですよね。それは、ボクが不純な人間だからかもしれないけど・・・
  • 社会の弱者へも偏見のない態度
  • 正しいと思ったことは、権力者にも物怖じせず直言する勇気・誇り

 こんな奴が身近にいたら・・・・迷惑だよな (^_^;

  「天使禁猟区」、是非お読みください。

(2000.10.14)

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