はじめに
リビヤに出稼ぎに行った看護師達とパレスチナ人医師が、リビヤ政府によってスパイと意図的AIDS感染行為の罪を着せられ、死刑判決を受け、最高裁尋問の
段階にまで来ている。
事件の概要
この経緯を International Herald Tribune
紙によって見よう。1紙から長い引用をするが、日本の新聞がほとんど報道していないのでやむを得ない。
「SOFIA発: 1998年自国が超インフレに陥っていた時、ヴァリヤ・チェルヴェニャシュカさんは、娘の大学学費を得るため、ブルガリアの地方の村
を出て、リビヤのベンガジへ看護師として月$250で働きに行った。
今日、パレスチナ人医師1人とともに、チェルヴェニャシュカさんと他のブルガリア人看護師4人は、リビアの刑務所で死刑判決を受け、銃殺に直面してい
る。訴因は、リビア国家の安全を脅かす目的で(目的は最初の起訴状による)、入院中のリビア人の子供400人以上を故意にAIDSウイルスに感染させたこ
とであるとしている。
また、彼ら(被告)は、イスラエル情報機関Mossadのために働いたことでも告訴された。
国家転覆動機はその後取下げられたにもかかわらず、死刑はそのままである。看護師達の最終上訴は11月15日、リビア最高裁判所で審問される予定であ
る。
審問日が近づくにつれ、パルバノフ・ブルガリア大統領は、月曜日[10月17日]に開かれるワシントンでのブッシュ大統領との会談でこの問題をとりあげ
る予定である。
著名なAIDSウィルス発見者である L.
モンターニェ博士を含む国際的専門家たちは、リビアへ行って状況調査し、ベンガジのアル・ファテー病院での不十分な衛生管理の結果、子供たちは感染したと
証言している。看護師達は、逮捕後数ヶ月にわたって(in months) 拷問されたと証言した。
『Mossadの情報員(egents)として動く、ブルガリアの小さな町から来た看護師達ですって?』と、チェルヴェニャシュカさんの娘の1人、アン
トアネッタ・オウゾウノヴァさん(現在28才)は語った。『母がそのために死ぬかもしれないと分かるまで、そんなことは全く奇妙でバカげていると聞きなが
していました。』
この7年間、とくにリビア大統領・カダフィー大佐が2003年にテロリズムと核兵器を放棄して以来、国際政治において棚上げされながら、看護師達の苦境
は続いてきた。
昨年、コンドレッサ・ライス国務長官と、ヨーロッパ委員会(European
Commissin)のロマノ・プロディ当時委員長は会談でこの件について抗議しておきながら、この委員会はカダフィーをブリュッセルで昼食に招き、米国
は貿易制裁を解除した。
しかし、今や時は尽き、くすぶって来た問題は、カダフィーの路線転換を脅かし、沸騰するかもしれない。
看護婦達の釈放を確保するための交渉は『旨くいっていない』と、カルフィン・ブルガリア外相はここでの最近のインタビューで述べた。
ブルガリアとEUの外交官によれば、リビア政府筋は、ブルガリアがAIDSに感染したとされる子供420人に賠償金を1人1000万$[10億円]支払
うよう示唆している。
ヨーロッパ側は、HIV治療と人道援助の申し出によって応対している。
『これらの女性は人質なのです。』と、S. パッシー・ブルガリア議会外交政策委員会委員長は言った。」
1
以上で記事の約1/4である。著作権に係るので、これ以上引用しない。
読売新聞は昨年次のように簡単に報道している。
「【カイロ=岡本道郎】 リビアからの報道によると、同国ベンガジの裁判所は六日、エイズウイルス(HIV)を患者に輸血感染させた罪で、同国で働いて
いたブルガリア人看護師五人とパレスチナ人医師一人の計六人に対し、銃殺刑の判決を言い渡した。看護師らは無罪を主張、欧州連合(EU)も「重大な懸念」
を示すなど、判決は大きな波紋を呼んでいる。昨年12月に大量破壊兵器廃棄を宣言し、急速に欧米との関係改善を進めている最高指導者カダフィ大佐が判決を
どう処理するか、注目される。
リビア検察当局によると6人の罪状は、1990年代後半、エイズ治療法模索のため、エイズウイルスに汚染された血液製剤を400人以上の子供に意図的に
輸血したというもの。この結果、既に23人の子供が死亡したという。6人は99年から拘束されている。」
2
朝日HP版DBでは見出せなかった(ブルガリア AND 看護 で検索)。
日本でも声をあげ、行動しなければならない
感染原因の認定について専門家から重大な異議が表明され、拷問が疑われる裁判について、国際的は無関心でいてはならず、リビアに対して事実認定や拷問に
ついて正確な情報開示を求め、これに十分答えていない以上、イビアに対して制裁を含む必要な対応をする必要がある。
なぜ必要な措置をとらなければならないかは、このサイトでは既に論じてきた。その視点は次にある。
「ユダヤ人が殺されていた時、世界のほとんどは知らなかった。もちろんアルメニア人のことも。殺害者が隠すこともあり、誰でもが現地に行けるわけでもな
い。」
3
これに対して、戦後はユダヤ人虐殺のようなことは起こらないと言った人がいる。そう言う理由を問いただす気にもならなかったが、人数の多寡
を問わず、虐殺、激しい人権抑圧は今も絶えて無くなっていない。
処刑の名目であれ、現に虐殺の疑いが濃厚な行為がされようとしている時、黙過、無関心は言うまでもなく、事実上話合いに応じていない相手に対して「平和
的」話合いだけを求めることや、当該国内で解決せよというアウタルキーや、階級的問題でないとこれを捨象することには、決して社会民主主義の立場ではな
い。社会民主主義は、どの国における虐殺(の容疑)に対しても、基本価値への許されない直接の挑戦として、それを阻止するため実力を含む必要な行動を求め
る。
1 Elizabeth Rosenthal,
Firing squad awaits 6 AIDS fighters in
Libia, International Herald Tribune, Oct. 15-16,
2005、拙訳を用いている。正確には原文に当ってほしい。
2 読売新聞 04/05/07
3 拙稿
「ダ
ルフール難民に政治的関心と救援を」、2004/09/21