Oct 14, 2005
未定稿、追加、変更がありえます。

社会民主主義についての質問への お答え
渡辺秀美

Q1 社会党から民主党に行った人たちは社民主義者か否か?
   彼らは民主党で何をしようとしているのか?

A1 正確な意味での社会民主主義者とは言えません(個人的に少数の社会民主主義者がいた/いるとしても)。社会民主主義に限らず現代の政治的潮流にとって(正 誤は別として)、政治体制の認識、評価、変革の方向、その根拠となる学理、政治哲学などを欠くことはできません。体制に関しては、市場経済(資本主義)、 民主 主義制度(階級支配か市民参加か)、学理では、近代経済学かマルクス経済学、哲学・歴史観では、(基本)価値か歴史的必然などが、諸政策、路線の根拠とし て当然求められます。しかし、社会党から民主党に行った人たちは全体としては、少なくともこのような理論、思想体系をもって行きませんでした。その後も もっ ているようには見えません。
 旧社会党から民主党へと分離、移行する時、私は社会党内論議を多少見たのですが、民主党へ行った人々は米型共和・民主2大政党をイメージし、イズムとし て は「民主リベラル」という旗を掲げていたと記憶しています。論議の過程では「社民リベラル」という提案もあったと記憶していますが、これはすぐは無くな り、「民主リベラル」となりました。「社会」の旗を拒否したことにも現れていますが、この「社会主義」をさらに正確に言うと、「科学的社会主義」(主に協 会)を拒否して民主党へ行った判断することができます。
 旧社会党から「社会主義」を除くと、労働組合主義(または労組利益の擁護)と、「護憲」(平和、人権、福祉、憲法擁護などを仮にこう纏めます)、政権獲 得の 目標が残ります。
 労組との関係は支持基盤として保持するのですから、思想、理念、路線のidentity として「護憲」と、2大政党による政権交代目標が綱領的位置を占めます。政権交代目標は自民から来た人たちと同じですから、旧社会党出身者の idenntityは「護憲」ということになります。
 たとえば横路孝弘氏の次のような見解に表れています。
 「この9条は、国際社会、国連の大きな目標であり理想であるということ、そして日本の国としてそれを決して放棄することなく、それを掲げて日本政府も日 本国民も努力していくということが大変大事なことなのだということを忘れてはいけないと思っております。」1
 「9 条を守ること、9 条を日本の国会の目標として、国連を中心とする世界の目標ともなるように努力していかなければなりません。」2
 横路・小沢の安全保障基本合意においても、「憲法の範囲内で国際貢献するために、専守防衛の自衛隊とは別の国際貢献部隊を作る。」と3、 横路側の「護憲」方針が保持されているといえるでしょう。
 しかし、党内1グループが「護憲」で路線、政策を展開するののは無理があり、結局、一貫、整合、明晰などを欠いてくるのです。なぜなら、憲法は一国内の 上部構造の一部を規定しているのであって、下部構造、文化的要素、国際条件等は所与として受入れているか、covering の外に置いているのです。上部構造は、下部構造、国際条件等の強い影響を受けるのです。それらは常時変化します。だから仮に憲法典を改正し ない時でも、変化した(認識の変化も含む)下部構造、国際条件等に憲法典が対応(適応)できているか常に点検しなければなりません。これは憲法条文だけの 演繹的解釈では決してできません。この作業をするには、下部構造、国際条件の認識、問題の把握と対策が必要ですが、これには経済理論、国際関係理論、その 元になる歴史観などが必要なのです(理論の名前が付いていなくとも経験則などとして存在しています)。
 下部構造理論の(ほとんど)欠如は、総選挙で民主党の郵政民営化に対する方針で大きく露呈しました。この点は既に進行時に指摘してきしました。4
 また、政治的思想にまで行き着いていない路線は、一般党員の結集を困難にしているようです(社民党より少ないように見えます)。 「平」党員といえど も、進んで参加し、何ら負担をするのですから(以前は「献身」と言った)、政治理念、将来の社会についての見通しが必要です。
 社民党内の護憲路線は、民主党内のそれと共通部分もあるのですが、相違もあります。社民党に関しては繰り返し指摘してきました。
 今後の見通しですが、郵政民営化問題の失敗をどれだけ総括できるのか、国際貢献の必要性が続き、高まるとともに、従前の「国際貢献部隊」という民主党案 が実現困難であり、改憲の動きが加速しかねない状況で、この案をどれだけ改革、深化できるか等によって大きく変わると思います。いまの状態を続ければ政治 への寄与は縮減していくものと思われます。


Q3  社民党内の「科学的社会主義者」たちは、情緒的にマルクス主義をひきずっているだけなのか、それとも社民党をマルクス主義政党にしたいと思っているのか?

A3 
社民党内の「科学的社会主義者」たちには、社会主義協会に属さない人も含まれ、「情緒的にマ ルクス主義をひきずっているだけ」の人もいることは事実です。
 しかし、より大きな問題は、彼らの活動家部分がマルクス・レーニン主義への確信を保持していて、次のような見解をもっていることです。

 社会民主主義は改良主義だ。
 資本主義は生産力発展の桎梏になるなど、社会主義革命の(客観的)条件は成熟している。
 資本主義の修正や改良によっては現代の問題は根本的には解決できない。

 革命によって階級を廃止し、プロレタリアート独裁をおこない、生産手段の共有を通じて人間が解放される。  
 現代社会についての科学的で唯一の正しい理論はマルクス主義である。
 マルクス・レーニン主義に基づいて民主的平和的に社会主義へ移行する道は、「民主的社会主義」だ。

 こうした諸命題は、明らかに社会民主主義と背馳しているのです。しかし、党内
「科学的社会 主 義者」たちは、こうした点は個人の思想信条に係ることであるので、党の会議(機関)で取上げたり、論じたりする必要がないとしているのです。ところが勢力 を拡大した60年代に、党の綱領的文書「日本における社会主義の道」にこれら の命題(の幾つか)をに取り入れられ、86年まで続いていたのです。
 彼らは現在、これらの命題を持ち出すことなく、社会保障、雇用の確保、自衛隊違憲、安保廃棄といった諸政策を「護憲・平和」のスローガンにまとめた政策 的路線で社 民党は連合戦線的として結集すべきだと主張するのです。このやり方は一見「情緒的にマ ルクス主義をひきずっているだけ」の観を呈します。
 「道」にある、次の世界および日本の現状規定を考えてみてください。
 「今や資本主義体制は、世界史的に 見てその歴史的使命を終り、社会主義体制にその道を譲らざるを得ない段階にきているということである。」
 「日本の国家独占資本主義は、同時に資本主義の基本的矛盾が最高度に発展している独占資本主義であって、この意味で国家独占資本主義は資本主義最後の段 階であり、社会主義の前夜であるとい うことができる。」5
  この規定は、誰でもが認める自明な事実ではなく、マルクス・レーニン主義の思想、哲学、学理に基づいて得られる命題(認識)です。党内「科学的社会主 義者」たちは全員ではないが、「新宣言」で廃棄(歴史的文書と)された「道」の回復を要求しています。そもそも、哲学、学理に基づく基本命 題を簡単、単純に捨て去ることなどできるはずがありません。情勢が変化したのか、学理は正しいが適用を間違っていたのか、学理を修正したのかなど、何らか の深刻な総括をして命題を変えるか、そうではなく、「道」は正しいが、党内で強引に廃棄へと押し切られたのであって、この綱領(的文書の)変更に未だ賛成 していないという見解かであるはずです。どうも後者のようです。
 そうならば彼らは「道」を回復する綱領(宣言)を明確に要求すべきです。ところがの彼らの主張を反映したある「社会民主主義宣言」案(全国連合案ではな い)は、(本格)綱領ではなく「行動綱領」的にせよとして、自衛隊解消、安保廃棄を含む護憲・平和に集約される政策を並べているのです。つまり「道」に あった資本主義段階についての規定、革命への道筋などを抜いているのです。
 彼らは、「行動綱領」とする理由として、選挙などの政治日程、短期に作成する必要などをあげています。ということは条件が整えば本格綱領策定を提起しう るということです。条件には当然、社民党、左翼が厳しい環境にあることもはいっているでしょう。
 以上、私が言いたいことは「科学的社会主義」などと言いながら、国民に語る時は融通無碍だということです。これを「原則は堅持しつつ、戦術・対応は柔軟 に」などと、彼らは言っていますが、「都合のよい」部分を強調して語り、「都合の悪い」(「情勢に合わない」と言う)部分は伏せておくのです。これは、支 持を得られる政策を訴えるのは当然であり、わざわざ理解を直ぐには得られない政策・見解を述べ、反発を買い、支持を失い、孤立する必要はない、などと表現 されます。どの政党も、こうしたことはしており、ある程度は必要です。
  しかし、どの程度(そのcriterion)が大問題なのです。こう言うと、政党にとっても、グループにとっても、個人にとっても、何を語り、何を語らな いかは全く自由ではないかという反論が聞こえそうです。自由であることは確かですが、他人(国民や「同居」している党員)が信用できるかという問題が別に あるのです。
 身近な例で話しましょう。ほとんど知らなかった人とルーム・メイトになったり、一緒に旅行するとします。彼が一緒にいる間は、暴力を振るいません、大声 を上げません、支払いを割勘にします、プライバシーに立入りません、などと約束するだけで信用できるだろうか。それだけでなく、どのように育ち、何をして きたのか、どのような親兄弟か、どのような人生観なのか、どのような仕事をしているのか、何をめざしているのか、などを知り、彼(のある程度全体)を理解 して、またそれらがある期間続いていることを知って初めて(一緒に旅行するほど)信用できるようになります。人を言うことでなく行動で判断せよといった格 言にもなっています。
 政治は国民が生命、生活、権利、財産の保障や管理(の一部)を委託するものですから、信頼(信用)が基礎に必要です。どの政党内グループも一般論として このことを認めるでしょう。しかし、選挙で成功し、勢力を伸ばすためとして、基本学理、基本路線をを語らず、その時々の情勢に応じた要求の宣伝に専念しが ちです。する と国民の信用を失います。社会保障給付の引上げを要求するが、負担や財源については不明確であったり、要求した諸政策を合算した場合の財源を示していな い、ある団体の特権、外国での虐殺、飢餓、人権抑圧を黙過すること等に現れます。
 つまり、社会保障や雇用の約束を信用してもらうには、国全体の生産(GDP)の維持・成長をどのように確かにするか(その前提として経済体制の安定と改 革)が求められます。マルクス・レーニン主義からは「道」が言うような「資本主義の基本的矛盾が最高度に発展している」中でこれができるのか十分な説明が 必要です。要はどのグループが社会保障の充実を言おうとも、経済体制の指定、その上での改革と運営を明示しなければ信用されません。社民党はこれを示して いません。
 加えて、経済的根拠や理論的背景を持たない個別政策は、容易に実施時期を延期したり、環境の変化を口実にもちだしたり、新たな条件を付加して、代替措置 もなしに事実上廃止したりすることができます。この意味においても経済体制、統治原理をも組み込んだ政策体系が重要なのです。これは論理的関連、数量的整 合性、代替可能性などを含んでいますので、環境、条件によって部分的修正は行なわれますが、個別政策の代替無しの恣意的延期、廃止をしにくくしています。 全体主義下で多くの国民が権力者による恣意的政策によって悲惨な目に会ってきました。
 社民党は、社会民主主義の思想、理念、理論に基づいた路線、政策体系を持っていません。そうであるから「科学的社会主義者」たちは、個別政策を「護憲」 の旗のもとに持ち込むことができるのです。それは非実現性、不整合をも露呈して国民の信頼を失わせる結果となっています。彼らは社民党内において少数派で はなく、多数派であり、政策、路線に決定的な力をもっているので、党に与える影響からみると決して「情緒的にマルクス主義をひきずっているだけ」ではあり ません。そして「社民党をマルクス主義政党」にすることは、彼らの保持する学説から選択肢の1つでありうることは間違いありません。


Q4 日本共産党が今後、構造改革路線から社民主義へと転換する可能性はあるのか?
この問に関しては拙稿を参照ください。6
ここでは少し補足します。
 共産主義(科学的社会主義、マルクス・レーニン主義も同義とします)は、「真理」(と彼らが認識すること)に基づいて政治(「真理原理」と言います)を 行 います。
 社会民主主義は、国民(社会の構成員)の「同意」に基づいて政治(「同意原理」と言います)を行います。
 両者が提案する政策の幾つかとその実施がほとんど同じ内容のことはありえますが、いつも一致するとは言えません。また、「同意」にもとづく政治の方が、 「真理」に基づく政治より、常に国民に多くの福祉をもたらすとは限りません。しかし、両者が原理的に異ります。
 とくに、体制や政権、政府の正統性(正当性、根拠)は、社会民主主義理論では国民の「合意」であり、共産主義理論では「真理」です。事例を挙げ ましょう。
 中国1978年憲法の第1-3条は次のようになっていました。

「第一条 中華人民共和国は、労働者階級の指導する、労農同盟を基礎としたプロレタリア階級独裁の社会主義国家である。

第二条 中国共産党は全中国人民の指導的中核であ る。労鋤者階級は、自己の前衛である中国共産党を通じて、国家に 対する指導を実現する
 中華人民共和国の指導的思想は、マルクス主義・レーニン主義・毛沢東思想である。

第三条 中華人民共和国のすべての権力は人民に属する。人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会および地方各級人民代表大会である。
 全国人民代表大会、地方各級人民代表大会およぴその他の国家機関は、一律に民主集中制を実行する。
8[p.383]

 中国現行(1982年)憲法の対応条文は次のとおりです。

「第一条 中華人民共和国は、労働者階級によって指導され、労農同盟に基づく、人民の民主的独裁(dictatorship)の下にある社 会主義国家である。社会主義体制は、中華人民共和国の基礎である。いかなる組織または個人による社会主義体制に対するサボタージュは禁止される。

第二条 中華人民共和国のすべての権力は人民に属する。人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会および地方各級人民代表大会である。人民は、法 に従って多様な経路と方法をとおして、国家行政を管理し、経済的、文化的、そして社会的業務を運営する。

第三条 中華人民共和国の国家機関は、民主的中央集権の原則を適用する。全国人民代表大会および地方各級人民代表大会は、民主的選挙によっ て構成される。それらの機関は、人民に対して責任を負い、人民による管理にしたがう。」9

 旧第2条の規定(共産党の指導)は、次のように前文に移行しました。

 「わが国の今後の基本的課題は、社会主義現代化に努力を集中することである。中国共産党の指導と、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想の 導きの下に、全中国人民は、人民による民主的独裁(dictatorship) を堅持して社会主義の道に歩み続け、そして中国を高い水準の文化と民主主義の社会主義国にするために、社会主義機構を着実に向上させ、社会主義的民主主義 を発展させ、社会主義法体制を改善し、工業、農業、国防、科学と技術を一歩一歩近代化するために勤勉に自信をもって働いていく。」10

 この部分は(少なくとも2度)修正されている。
 1993年03月29日の修正で該当箇所は次のようになった。
 「わが国の基本的課題は、中国的特色をもつ社会主義を建設する理論によって、社会主義現代化に努力を集中することである。中国共産 党の指導と、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想の導きの下に、全中国人民は、人民による民主的独裁(dictatorship)を堅持して社会 主義の道に歩み続け、改革と開放をやりぬき、そして中国を高い水準の文化と民主主 義の社会主義国にするために、社会主義機構を着実に向上させ、社会主義的民主主義を発展させ、社会主義法体制を改善し、工業、農業、国防、科学と技術を一 歩一歩近代化するために勤勉に自信をもって働ていく。」11

 1999年03月15日の修正で該当箇所はさらに次のようになった。
 「わが国の基本的課題は、中国的特色をもつ社会主義を建設する理論にしたがって社会主義現代化に努力を集中することである。中国共産党の指導と、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想 とケ小平理論 の導きの下に、全中国人民は、人民による民主的独裁(dictatorship) を堅持して社会主義の道に歩み続け、改革と開放をやりぬき、そして中国を 高い水準の文化と民主主義をもった強力で繁栄した社会主義国にするために、社会主義機構を着実 に向上させ、社会主義市場経済を発展させ、社会主 義 的民主主義を前進させ、社会主義法体制を改善し、工業、農業、国防、科学と技術を一歩一歩近代化するために勤勉に自信をもって働いてていく。」12

 中国憲法における基本規定を変遷を追ってみました。激しく変化しているが、「マルクス・レーニン主義」「独裁(階級独裁から人民独裁に変わったが)」、 「中国共産党の指導」が一貫していて、「民主主義」、「ケ小平理論」、「中国的特色」と「社会主義市場経済」が付け加わりました。後3者はともかく「民主 主義」が一貫した共産主義原理にどのように組み込まれるのでしょうか?この民主主義は、「民主的独裁」(プロレタリア民主主義とも言われた)を内部に含ん でいても、文脈から自由な意思表明の下での人民の同意に基づく政治と解するのが妥当です。ここでマルクス・レーニン主義という「真理」と、民主主義という 「同意」原理の並存(混在)なのか、マルクス・レーニン主義の許容範囲内での同意原理(民主主義)なのかということが大問題があります。

 敷延しますと、マルクス・レーニン主義には、ブルジョア独裁(資本主義)を革命で打倒した後は、プロレタリア(労働者階級の)独裁であり、この段階は、 残存反動勢力(旧資本家等)を抑圧し、国外帝国主義の介入を阻止し、中間層を味方につけ、人民内部の遅れた意識(旧社会の残滓)を改造しなければならない が、これにはプロレタリアートの中で最も進歩的で訓練された前衛=共産党(1国に唯一)の存在と指導を必要とするという、学理、すなわち「真理」命題(の 連鎖)があるのです。
 この学理が存在する以上、いくら民主主義と言っても、「真理」命題の範囲内でのことです。したがって、政権の根拠(正統性)はこの命題に基づいていて、 必ずしも国民の同意を必要としません。中国共産党は50年以上にわたって国政レベルの(自由)選挙をすることなく正統性を主張しているのです。
 
 さて、日本共産党の問題に戻りましょう。
 同党は04年1月、新綱領で次の項を新た加えました。
 「国会を名実ともに最高機関とする議会制民主主義の体制、反対党を含む複数政党制、選挙で多数を得た政党または政党連合が政権を担当する政権交代制は、 当然堅持する。」13  
 こうした路線そのものは社会民主主義に接近していると言えます。
 しかし、学理である科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)を改定したとも、階級独裁(執権)、共産党指導などの諸命題を廃棄したとも言っていませ ん。実態は綱領で次のようになっています。
 「科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として、創立された。」
 「科学的社会主義を擁護する自主独立の党として、……断固としてたたかいぬいた。」
 つまり、「科学的社会主義」はすべて過去形で語られていて、中国共産党のように現在と将来においてマルクス・レーニン主義を指導原理として堅持するとは 書いていませ ん。この書き方は両義的です。創立においても闘いにおいてもマルクス・レーニン主義を指針にし、かつ廃棄が書いていなのだから継承しているとも、現在と将 来に ついて規定していなののだから、マルクス・レーニン主義から離脱または脱却が綱領上の選択肢をしてあるりうるとも解釈することができます。
 しかし、実態はマルクス・レーニン主義が同党の指導的思想・理論・路線となっています。また将来に含みを残したとはいえ、マルクス・レーニン主義の「真 理」原理と、民主主義の「同意」原理と間の関係は不明なままです。つまり、複数政党制や政権交代制が、階級独裁、共産党指導という「真理」原理と相容れな くなった時どうするかが書かれていません。 


Q5 社会民主主義の経済理論とは?

A5  とりあえず、拙稿をご覧ください。7  その上で議論したいと思います。
  なお、同稿で使用した数学の説明は近くuploadする予定です。


Q7 現在の党首はじめ社民党の国会議員諸氏は「社会民主主義者」なのか?という疑問です。
福島瑞穂氏、辻元清美氏、阿部知子氏、保坂展人氏、大田昌秀氏などは「科学的社会主義」か「社会民主主義」か、といった議論となじまないように思えるので すが。おおざっぱな捉え方をすれば現状は(護憲,リベラル)連合ということでしょうか。
 いまだマルクス・レーニン主義の影響下にある党活動家たちが党勢の衰退と議席の消滅をなんとかくいとめるために、市民派を担ぎ上げているという状態?
 議員は市民派、党活動家の多数はマルクス・レーニン主義、党名は社会民主党、議員と活動家たちの間で齟齬は来さないのでしょうか。

A7 ご質問の第1点、社民党国会議員の多くは「護憲,リベラル連合」として国民に見えるというのは当たっています。
 ただし、阿部知子議員は、社会民主主義と護憲とは違うこと、憲法を社会民主主義の中に位置づけるべきであることを対談で次のようにはっきり述べていま す。
 「95年、 社民党から参議院に立候補する前、 当時の党の関係者から党員になるよういわれて 「憲法を守り広める」 という趣旨の規約を見たとき、縛りが少なくて安心する一方、 社民主義イコール護憲なのかという疑問を持ちました。 本来は、 自分たちがイメージする社民主義をきっちり説明して、そのなかに憲法を据え直していくことが必要なのではないかと思っています。 」14
 また、同じ対談で憲法と下部構造との位置づけを正確に行なっています。
 「社民党は経済が弱いとよくいわれます。 社民主義をすすめるには、 人一倍経済を理解し、市場経済のひずみを修復したり、市場経済の中での論理に合わないものを正していくことが必要です。 護憲にしても、 位置づけ方、護憲を支えるインフラを提案しなければなりません。 政党は、 主観的な思い込みではなく、 客観的な世の中の流れを見ながら、 10年、 20年後のあり方を考えなければなりません。 」15
 私はこの2つの発言に100%賛成です(このサイトでは他人への批判が多いのですが)。私はこの考えを実行し、推し進めればよいと確信しています。過半 の社民党国会議員は、表明していないとしても、このような認識をもっていないと断定することはできません(私が寡聞にして知らないだけかもしれません)。 協会、マルクス・レーニン主義者を除いた一般党員にも同じように感じ、考えている人々がいます。
 しかし、社民党が社会民主主義へのこの方向がなぜ進まないのでしょうか?その答えも阿部氏の見解の中にあります。「 本来は」という副詞は全体を修飾しているようですが、まず「自分たちがイメージする社民主義をきっちり説明」することが「本来」になっていないことが問題 なのです。「社会民主主義」とは、「民主主義を発展させ、市場経済を改革・改良することだ」などと言おうものなら、党内外のマルクス・レーニン主義から 「それは資本主義の改良だ。それには限界があり、それを目標にするのは改良主義だ。」と軽くあしらわれ、優越感あらわに軽蔑されても、反論ができず、しゅ んとなるのが落ちです。
 ここで落胆したり、なげやりにになるのではなく、反論と立論に必死にならなければなりません。なぜ、彼らが優越感をもつのでしょうか。それは、弁証法、 私的唯物論、資本論などによって、人間解放の歴史的必然性を確信し、そこへの道程として、改良や革命を位置づけているからです。ですから、それらの理論の 誤りを指摘し、自らの哲学(一意でなくてもよい)から経済理論と政策を創りあげ(または獲得)、改良政策を位置づける必要があるのです。まさに彼らの思 想、哲学、理論、現状認識と1対1に格闘(dog-fighting)し、勝っていく必要があります。「汝らの義、彼ら(パリサイ人)に勝らずば、天国に 入ることを得ず」とはここでも真実です。
 正にマルクス・レーニン主義哲学・理論と1対1対決した内容が社会民主主義の「イメージ」なのです。社民党の現状(マルクス・レーニン主義が強い影響を もつ)において、これ以外の社会民主主義「イメージ」の形成方法はありません。当サイトはこのために努力しています。
 ところが、社民党の宣言を行動綱領に限定することにみられるように、党内マルクス・レーニン主義は党内論議と合意を、政策と政策的路線に閉じ込めている のです。この枠内で思考するかぎり、社会民主主義の思想、哲学、理念は決して獲得できません。改良政策だけを目標とする限り、それは改良主義であることは マルクス・レーニン主義に教えられるまでもなく当り前です。党内思想状況をこのようにしておくことは、マルクス・レーニン主義者にとって「好都合」かもし れません。こうした政策(と路線的政策)の「上に」自分達だけが思想、哲学をもち、影響を与えることができるからです。
 しかし、より重要な問題は党内社会民主主義者の側にあります。社会民主主義者には、「社会民主主義のイメージ」形成のため実際に(口先だけでなく)作業 し、論争し、広めていく行動が決定的に不足しています。それは阿部氏の発言「自分たちがイメージする社民主義をきっちり説明して……いくことが必要なので はないかと思っています。」にも現れています。氏は国会活動を通じてそれをしていると弁明できるかもしれません。しかし、個々の政策(提案)を積みあげる だけでは、党員や支持者が「「社会民主主義のイメージ」を獲得することできません(現にそうなっていません)。国会議員が何もかもやれと言うのではありま せん。やはり任務分担して「組織的」に行なう必要があるでしょう。

 ご質問の第2(下記)には大よそお答えしました。
 「いまだマルクス・レーニン主義の影響下にある党活動家たちが党勢の衰退と議席の消滅をなんとかくいとめるために、市民派を担ぎ上げているという状 態?」
 私はこの指摘を妥当と判断しています。

 ご質問の第3は下記のとおりです。
 「議員は市民派、党活動家の多数はマルクス・レーニン主義、党名は社会民主党、議員と活動家たちの間で齟齬は来さないのでしょうか。」
 齟齬は多く生じていますが、1点で論じます。そうしないと議論が散漫になるからです(他の齟齬がないという意味ではありません)。それは北朝鮮拉致問題 です。これは社民党にとって決定的かつ重大な齟齬です。
 社民党は00年の総選挙で、議席を1/3に、比例区得票数(率とも)約半減(46%減)させました。表1その最大要因の1つ は、この北朝鮮拉致問題に対する同党の態度であったと考えられます。これについては拙稿で指摘しました。16 

                  表1  社民党の得票と議席
年月
比例区得票数
比例区得票率
議席数
6/10
380万票 6.4%
14
00/6
560
9.4
19
03/11
303
5.1
6
05/09
372
5.5
7

 しかし、それだけの大問題であるにもかかわらず、北朝鮮拉致問題についての同党内での真剣な総括は未だされていません(少なくとも発表がなく、内部討議 の存 在も聞いていません)。これは同様の過ちを繰り返す体質のままでいることを意味します。同党はこうした誤りを犯しやすい性質を一貫してもっています。それ は党内での 意見の相違を放置しておくことです。北朝鮮についてもそうでした。北朝鮮について拉致、飢餓、人権、核兵器などの疑問をもつ人がいても、強く北朝鮮との友 好 を主張する人、あるいは欠陥はあっても社会主義内濃国だからと非難を控えるべきとする人などの間で意見の一致をみることは困難です。違いは放置され、結局 友好を主張する人たちが交流をし、他の意見者は黙過することになります。その上で米帝国主義によるイラク侵略や自衛隊「派兵」では意見がほぼ共通するの で、党はこう した共通できる課題に取組む事になります。
 しかし、結論を回避した問題がいつも国民にとって軽微な問題とは限りません(この理路は誰でも分かるはずです)。
 お座なりの総括からはお座なりの方針 しか導かれないだけでなく、同じ蹉跌の危険をかかえることになります。中国に関しても党内の意見の違いは深く議論されていません。私は法輪功事件に言及し ましたが17、中国の人権問題、軍事力の増強、台湾への武力行使と米軍出動の危険性など、注意深く分析し、判断をもつ必要がありま す。党内に意見の相違があっても、これらは、日本国民の生活、中国国民の生活、日本の政治・経済、アジアの平和などに重大な関係があるからです。これらに ついての正しい分析と見解、方針をもつことは政党の責務の1つです。社民党はこれらについても曖昧にしています。
 同党内で重要問題についても見解の相違を放置するのは、見解を形成する共通基盤(共通な世界認識、下部構造把握など)が薄弱だからです。この基礎認識が マ ルクス・レーニン主義、「純粋な」護憲・平和主義、現実的改革主義、アジア中心主義などに分立し、共通認識を形成するための討議、共同作業を意識的にして いない以上、相違点の棚上げが続くのです。このように党内の自由と不干渉、融和から政治問題を処理するのは誤りです。国民、世界の人々の福祉が第1であっ て、この ために必要なら党内決着もつけなければなりません。


Q2 社民党は社会民主主義政党であるのか否か?

綱領、政策、議会での行動、運動、党員、活動家、議員、支持票、支持者の別に見なければなりません。これらの多くは既に言及しています。
 綱領に関しては、社民党への移行直前にきめられた「社会民主党の基本理念」は、「日本社会党(原文のママ)は、人間の尊厳、公正と公平、自由と民主主 義、人びとの個性と連帯を何よりも尊重する文化と社会を創造します」と、社会民主主義の基本価値の実現を目標としています。18ま た、 「社会民主主義宣言2005第1次草案」は、「二十一世紀の最初の四半世紀までに「宣言」に盛られた指針と内容が現実のものとなるよう日本における社会民 主主義の実現に努力します。」と、社会民主主義の実現を党の目標にし、初めに「社会民主主義の基本理念」の内容を規定しています。19し かし、問題を持っていることは前述のとおりです。
 政策は、各選挙での公約、政策集で分かるように、社会保障・福祉の維持・充実、雇用確保、国民負担増反対、海外派兵反対など平和、憲法擁護などを内容と しています。この多くは社会民主主義の政策とみることができます。しかし、財源、下部構造、整合性に問題があることは指摘しました。
 支持票について1点だけ触れます。これは新社会党の幹部になった友人から直接聞いたことです。社会党が長期低落した(国民の支持を失っていった)のは反 独占(大企業)や自衛隊解消、安保廃棄を曖昧にしたからである、だから、それらを元のように明確にした新社会党を結成したのだと言うのです。私はその時す ぐにそれは事実誤認だと気づきました。当時社会党へ投票したのは、反大企業闘争や、自衛隊の完全解消、安保の即時廃棄を支持したからではなく、社会保 障、雇用、重税反対、平和などを支持し、自民党政治へのcheck機能を期待したからであって、あえて言えば「自衛隊解消、安保廃棄にもかかわらず」支持 したからです(これは世論調査でも分かっていました)。新社会党はこれを見誤ったのです。
 現在の社民党の支持票も基本的に変わっていないと私は判断しています。先の総選挙で護憲の訴えが支持されて回復に向かったのだとし、新社会党のような思 い込みをすると、判断を誤る危険があります。


Q6 社民党が多数派形成をしていく上で立脚すべき支持層とは?

A6 ご質問の問題には未だ作業していません。社会民主主義の思想、哲学、経済理論、政策の辺りまで作業している段階です。この結果の基づいて日本にお ける社会民主主義の路線、戦略を構想するなかで具体化したいと思っています。
 ただし、社会民主主義はマルクス・レーニン主義のような階級闘争理論を採用しないことからも、組織された労働者(具体的には労働組合)に特別の戦略上の 地位をあたえる理由はありません。もちろん量や条件によって労組が大きな役割をすることはあっても、それは他の団体や未組織層についても言えることです。
 社会民主主義の基本価値の実現を求める全ての個人と団体によって多数派を形成していくことが原則であり、その他の制約はありえません。また、基本価値実 現には生産の維持向上が必須なので、生産に係る人々(雇用者だけでなく、経営者、自営業者、研究者、それらの予備軍)は重要な層です。逆に上部構造からみ ると、社会民主主義は、勤労者を含めすべての国民が市民として成長していく(民主主義の向上拡大)として実現されていくのですから、文化を担う人、公正 (平等)と尊厳を強く求める失業者、フリータ、ニート、障害者、高齢者、青年、女性の積極的参加が望まれ、3権に従事する人の役割も大切です。
 今は原理的なことしか言えませんが、その時々の情勢によって特に不公正に曝されている層の参加を訴え、公正へむけた政策的提起と運 動によって、部分的でもよいから、要求を実現して支持基盤を拡大することも重要です。たとえば年金の企業負担ベースを総人件費(付加価値の方がよい)に し、非正規社員へ年金適用 (直ぐ満額でなくとも)を実現するなどです(社民党これに似た政策を発表しています)。こうしたことを少しでも良いからやり抜く強い意志が必要です。

 長々と書きましたが、拾い読み、斜め読みしていただければと思います。
 誤り、欠落、不足、冗長などを指摘していただければ幸いです。


1  横路孝弘「日本国憲法9条について」2005/05/19 HP
2 ―「憲法9 条「おしえて横路さん!」」2005/06/01 HP 
3 ―横路・ 小沢基本合意 「日本の安全保障、国際協力の基本原則」 2004.3.19
4  拙稿「05 総選挙政策争点とその基本にあるもの」
5  日本社会党「日本における社会主義への道」 1964
6 拙稿「共産党の新綱領を論じる」 2004/02/23
7  4 に同じ。 
8  中華人民共和国憲法、1978公布、79改正、80施行、宮沢俊義編『世界憲法集』第3版、1980, 岩波書店
9-12  Constitution of the People's Republic of China, Adopted on Dec. 4 1982, under-line  は筆者による。 english.people.com.cn/constitution/constitution.html, in People's Daily Online http://english.people.com.cn/
  under-line  は筆者による。日本語訳は拙訳です。英文にあたって正確を期してください。
13 日本共産党の綱領は同党のHPによる。
14  阿部知子「曽我祐次さんと語る」2004/04
15 ibid.
16 拙稿「社 民党は教訓から何を学ぶのか」 2003/08/25
17 ―「愛知万博入館拒否に公共の福祉を問う」 2005/10/11
18 日本社会党「社 会民主党の基本理念」第64回大会(1996/01/19)採択
19 社民党「社会 民主主義宣言2005第1次草案」2004/04/10