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年金の問題点

1999.1.27

渡辺秀美

「積立金」をどう考えるか

『社会新報香川県版』新年号は、統一地方選挙政策を発表し、そのなかで年金について、「積み立て金の活用で水準の維持を」と題して次のように主張しています。
「真相は九七年度の保険料納入額は約二三兆円、同年の年金受取総額は約一七兆円で約六兆円の黒字になっているのです。こんな不景気なとき、六兆円も余分に徴収しているのです。その合計金である積立金は九七年度末で一二五兆円に達しています。そこでまず、第一にとりくまなければいけないことはこの積立金の活用です。毎年(年度赤字になってから)二兆円取り崩しても六二年間も耐えられます。」
この「積み立て金の活用」の問題を考えてみます。
はっきりさせるため厚生年金に限定して見ていきます。
厚生年金の黒字が6兆円以上あり、積立金が100兆円を超えていることは事実です。下の表(厚生省の年金ページより)を見てわかるように、黒字額と年度末積立金は、それぞれ1995年度:7.3兆円と112兆円、1996年度:6.7兆円と119兆円となっています。
厚生年金保険 収支状況の推移
年度 収入 支出    
  合計 保険料 国庫負担 運用 国年特会より 合計 保険 国年特会へ 収支差 積立金
        事務費
収入
受入
  給付費
繰入
  年度末
平成元
179,843 104,910 17,303 360 39,159 18,194 133,790 96,284 35,638 46,053 702,175
261,012 130,507 21,834 392 42,152 22,122 194,576 105,031 42,646 66,437
768,605
295,576 142,141 24,139 401 46,652 22,921 224,209 113,230 48,404 71,367 839,970

317,262 149,550 26,481 421 49,554
25,010
245,891
121,460
55,102
71,371
911,340

330,335
153,476
28,802
425
50,772
26,793
262,964
129,055
60,211
67,372
978,705

347,715
163,398
30,244
454
52,621
25,093
281,088
138,277
63,171
66,627
1,045,318

381,237
186,933
28,760
464
55,268
25,689
308,410
150,413
70,154
72,826
1,118,111

393,736
193,706
25,671
501
56,061
25,491
327,226
156,890
74,120
66,510
1,184,579
資料:社会保険庁「事業年報」

このように毎年黒字を計上し、積立金を増やしている根拠を知る必要があります。
それは、「段階保険料方式」に基いているからです。この方式は、「平準保険料方式」と「賦課方式」の中間の性質をもっています。
「平準保険料方式」とは、今働いている人も、将来働く人も、保険料率を同じにする方式です。これは世代間の負担の公平を保つやり方です。1953年までこの方式が実施されていました。しかし、激しいインフレで積立が減価し、1954年から「段階保険料方式」になったのです。
いったんインフレが起これば(その危険は皆無ではありません)、100兆円の積立金のうち10兆円も20兆円も実質上無くなってしまいます(「調整インフレ」などと安易に言うのは大きな危険が潜んでいます)。それなら、今のうちに保険料据え置きなどに使ったほうがよい、という主張が理解できない訳ではありません。
しかし、積立金を取り崩せば、インフレが起きても起きなくても、後の世代により多くの負担をかけることになります。現行の保険料率(「段階保険料方式」)での世代ごとの生涯の負担額と給付額は次図のようになっています(厚生省ページより)。

年金の受給額は、いずれの世代でも6,000万円前後と大差ありません。
しかし、保険料負担額(元利合計、実質、本人分)は、昭和19年生れ:1,300万円,昭和39年生れ:2,600万円,昭和59年生れ:2,900万円,平成16年生れ:3,600万円 と大変な格差、不公平があります。
問題は、今この積立金を取崩せば、負担の不公平をいっそう拡大することです。
これに対して、給付での国庫負担を増やせという主張がなされるでしょう。しかし、保険料であろうと税金であろうと、その世代の負担増としては同じです。
また、防衛費(5兆円)や公共事業費(9兆円)を削減して社会保障にまわすことは当然です。しかし、年金負担の世代間公平という問題と、このこととは別に論じる必要があると、私は考えます。
『社会新報香川県版』新年号は続いて、年金政策について次のように主張しています。
「第二は国庫負担の増額です。現在の三分の一負担を二分の一にする衆・参国会決議は四年前になされています。政府はこの国会決議の凍結を九七年六月の閣議で決定しています。この閣議決定を撤回させることです。  第三は、六〇歳定年制の改訂です。先進資本主義国二九ケ国が加盟しているOECD(経済協力開発機構)のなかで六〇歳定年制は、日本、仏、トルコなど数ケ国で、大半は六五歳〜六七歳が一般的なのです。わが国でも早く六五歳定年制にすべきです。」
基礎年金部分についての国庫負担の引き上げは、1999年度にほぼ実現をみることについては党の先輩の努力をも忘れてはいけないと思います。
定年の引き上げは、年金財政の視点からも喫緊の課題であることは異議ないところです。同時に若年層の就業促進と両立させるべきことは言うまでもありません。
以上、統一自治体選挙を前にした、香川県連合の年金政策について検討し、意見をのべました。わが国においては学問の世界でさえ他人の見解に異をとなえることを嫌う風潮があります。それは、真理のを探求すること以前に、「けちをつけた」「面子をつぶした」などということが主動機になるようです。もし、そうなら見解を公表するべきでないのです。
私が香川県連の政策の一部を検討したのは、それが大切な政治問題についてはっきりと見解をのべているからです。政党にとって、政治路線や基本的政策を明示することは、核心であり、最も大切なことの1つです。香川県連はこの点でも党の模範とも言えると思います。だから異見の対象にもなるのです。逆に大切な政治問題について黙っているようなことがないようにする必要があります。

年金の将来をどう考えるか

それでは今後の年金をどうするのか考えてみたいと思います。
統一自治体選挙政策『政策Q&A』(原稿、改定中)は、「少子社会・高齢社会を迎えて、年金制度は維持できますか。社民党の年金改革プランを教えてください」との問いに次のように答えています。
「社民党は、保険料を引き上げず、給付水準を維持し、その財源として基礎年金の国庫負担を大胆に拡充すべきであると主張してきました。最終的には全額国庫負担方式へと移行させ,未加入、未納による無年金・低年金の解消をはかります。・・・・・・
さらに、働いても「損」にならない年金制度にするため、厚生年金の特別給付(報酬比例部分の支給開始年齢の引上げ)と賃金スライド凍結を許しません。」(改定中)
1999年は年金再計算の年にあたり、年金審議会は1997年12月5日に「論点整理」をまとめ、厚生省は同日「5つの選択肢」を示しました。

5つの選択」は次のように図示されています。 
A案は、現行の給付水準を維持したケースであり、
 
Q&Aは保険料はD案、給付はA案、差額は国庫負担になるのだろうか?
 
1999年度の保険料負担増は全体で三兆円。の引き上げ



「全国民が加入する国民年金(基礎年金)のうち、学生や自営業者ら第一号被保険者が一九九七年度に納めた保険料の割合(検認率)は七九・六%で、制度発足時の一九六一年度を除き最低になったことが、十五日付で社会保険庁が発表した「社会保険事業の概況」でわかった。また、所得が低いことを理由に保険料を免除された人の割合は一八・六%で、不況を背景に過去最高。国民年金は、未納者の増加で「空洞化」が指摘されており、税方式への移行などの議論が高まりそうだ。
 国民年金の検認率は、六一年度が七三・九%だったほかは八〇−九〇%台を維持。九六年度は八二・九%だった。 (『朝日』1999年01月16日朝刊)


 
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