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親水公園
旧来の農業用水路においての,灌漑機能以外に遊び場や動植物の生息地としての「非農業的利用」は自明のこととして特別に意識されることなくその機能を果たしてきましたが,しかし,それらの機能が1980年代以降「親水」という用語により新たに低維持されてきた背景には,都市化により河川・水路の汚濁が進み,水辺空間の質的低下を招いたことに対する反省から生じてきたものと考えられます.最近の都市計画では「緑の整備」と同様「水環境の整備」も重要な位置づけを担うようになっています. ここでは,東京都区部を中心に親水公園の成り立ちや形態的変化をみていきます.
CONTENTS
−親水公園の定義 −東京都江戸川区の親水施設 −東京都江戸川区における親水公園の形態的変化
−土地利用と水路網の変化(東京都江戸川区の1960年から1970年)
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● 親水公園の定義
「親水」の用語は,第25回土木学会(1970年)において,河川が備えなければならない機能として,従来までの「流水目的」「安全目的」と並んで,遊び場利用などの「親水目的」が提唱されたことに始まります.親水とは本来物質と水の親和力(溶けやすさ)をあらわす化学用語(Acquaphily)であり,水の環境利用としてこの用語を用いる際,一般にこれを援用して,水に親しめる状態を表すものとして使われています.また,東京都都市計画用語集(1992)では,親水公園を「都市の海や河川などの水辺を市民に開放し,水に親しむ機能を持った公園,緑地」として定義されていますが,現行の河川法においては親水に関する水利権が明示されておらず,また都市公園法上の位置付けが存在しないという点が指摘できます.そこで今後は,他種水利権との共存を図る点や「遊び場としての水」を有する点から水質管理などについての法的整備を検討していく必要性があげられます.
●東京都江戸川区の親水施設
東京都江戸川区では,現在「親水公園」5路線,「親水緑道」18路線(2路線は現在整備中)の親水施設を有し,旧中川,新川を対象とした「親水河川」とあわせて整備,利用が行われています.右図は江戸川区内の親水施設の位置図です.
※親水公園総延長5路線 9610m 親水緑道総延長18路線 17680m 親水公園 @古川親水公園,A小松川境川親水公園,B新長島川親水公園,C新左近川親水公園,D一之江境川親水公園
親水緑道 1:下小岩親水緑道,2:親水さくらかいどう,3:葛西親水四季の道,4:西小岩親水緑道,5:鹿本親水緑道,6:上小岩親水緑道,7:興農親水緑道,8:新左近川マリーナ,9:流堀親水はなのみち,10:仲井堀親水緑道,11:篠田堀親水緑道,12:鎌田川親水緑道,13:鹿骨親水緑道,14:左近川親水緑道,15:本郷用水親水緑道(整備中),16:椿親水緑道,17:東井堀親水緑道(整備中),18:宿川親水緑道
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「水辺」の定義 環境と防災の共立空間としての水辺…  |
一般に,地域における社会,環境構成要素の一部として「水」を指す場合には,「水辺」,「水辺環境」,「水環境」,「水域」等,さまざまな用語が用いられています.このうち,「水環境」には「建築および都市においてさまざまな形態で存在する水と,それを人々が利用し,また,それから種々の影響を受けている環境の総体」とする日本建築学会の定義があります.そのほかにも,「水」のもつ概念には広範な意味が含まれおり,空間的要素や場所を示す限定的な概念も見られます.
しかし,近年都市部を中心に整備の進む「水辺」には,先行研究で明らかにされてきた「環境面」での機能と同時に,パークシステムの概念の根底をなす「防災面」の機能を併存する空間でもあります.そこで,坪井(2007)では,水辺の用語を使用する際には,その範囲を「水体および縁辺の陸域を含む水の存在によって特徴付けられたまとまりを持った区域」を指すものとしています.その含意は,「自然生態系,周辺地域,人を含めた領域を包括し,河川と人間の生活的,人間的つながりをもつ概念の中で,水域と陸域を一体的に整備することにより,河川の環境的・防災的機能の双方を向上させることができる範囲」を指すものとしてこれを定義しています.
【引用文献】 坪井塑太郎(2007):都市における水辺の環境と防災機能を考慮した居住者評価に関する研究−東京都江戸川区における親水公園を事例として−,水資源・環境研究20,55〜62.
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●東京都江戸川区における親水公園の形態的変化 東京都江戸川区では,現在までに上記のように区内に親水公園5路線,親水緑道18路線が整備されています.親水公園については,新左近川親水公園を除く全てに完成同年より地元の町会・自治会により愛護団体が結成され,定期的な清掃活動や自然観察会,親水公園まつりなどが行われているのが特徴です. 江戸川区でのこうした親水事業への取組みの背景には,1960年代半ばから六価クロムや葛西ごみ,航空機騒音など様々な公害問題に直面したことを背景に,1969年に「江戸川区環境浄化対策協議会条例」が制定され,それまでの「都市基盤整備」から「都市環境整備」を主幹とした都市計画へと転換されたことがあります.1971年に区の環境行政全般に関する総合計画として「環境を良くする十年計画」が制定され,その計画のひとつ「水をきれいにする計画」に基づき,1972年に「江戸川区内河川整備計画」(通称:親水計画)が制定されたことにより親水事業がスタートしています.この計画では親水機能を「レクリエーション機能」「公園的機能」「景観形成機能」「心理的満足機能」「浄化保健機能」「生物育成機能」「空間機能」「防災機能」の8項目に分類し,総合的な整備の必要性が謳われており,これに基づき1974年にはわが国初の親水公園「古川親水公園」が建設されました.親水公園の形態的特長に着目してみると,建設当初は,下水道整備が不充分であったことを反映して,緊急時の貯水・遊水機能をもち,また,親水公園内には浄化された水が通水されるなど「治水人工型」のものであったが,1990年代以降に建設されたものは,ビオトープを併設し,自然水が通水される「自然公園型」のものが整備されています.(左:1974年完成・古川親水公園,中:1984年完成・小松川境川親水公園,右:1995年完成・一之江境川親水公園)
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| 古川親水公園 |
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小松川境川親水公園 |
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一之江境川親水公園 |
| (1974年竣工) |
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(1985年竣工) |
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(1995年竣工) |
東京都江戸川区の親水公園
●古川親水公園 1974年完成,公園延長1200m,水源(旧江戸川)わが国初の親水公園として知られています.夏季には浄化処理水が通水され近隣の子供たちの遊び場にもなっています.護岸形状はやや人工的ながら,建設と同時に地元町会・自治会により「古川親水公園を愛する会」が結成されています.(江戸川区) |
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●小松川境川親水公園 1984年完成,公園延長3930m,水源(新中川)「せせらぎ」「水の庭園」」「水しぶき」「たゆたい」の各ゾーン整備が行われています.2000年より夏季のみ浄化処理水を通水しています.また,本親水公園には随所に消防車による緊急時の取水スポットが設けられています |
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● 一之江境川親水公園 1995年完成,公園延長3200m,水源(新中川)常時,浄化処理を行わない自然水が通水され,親水公園内にビオトープが設けられています.水路内には鯉や鮒などが放流されておりカルガモなどが生息している様子を見ることが出来ます.また最近では親水公園ボランティアによる花壇の保全も行われています. |
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●土地利用と水路網の変化(東京都江戸川区の1960年から1970年)
かつて,一面に水田が広がり灌漑のための用水路が無尽に存在した江戸川区は,一方では東京東部の沖積低地の土地条件に起因する洪水災害の常襲地域でもありました.そのため,水害対策の一環として中川放水路(現:新中川…右図の地図中央部を貫流している水路)の開削がすすめられ1963年に完成しました.同時に,東京オリンピック(1964年)を前後して急速な人口流入による市街地化がすすみ,水田農地の減少と共に,水路も潰廃していきました.(作図:坪井塑太郎)
| 1960年 |
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1970年 |
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| 土地利用図 |
水路図 |
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土地利用図 |
水路図 |
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●親水公園のできるまで…
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| 大量のごみが浮かぶ河川 |
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親水公園整備前の河川 |
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現在の親水公園 |
●東京都区部の親水公園いろいろ
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| 曳船川親水公園 |
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仙台堀川公園 |
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北沢川緑道 |
| (足立区) |
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(江東区) |
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(世田谷区) |
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| 横十間川親水公園 |
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木場親水公園 |
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音無川親水公園 |
| (江東区) |
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(江東区) |
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(北区) |
●親水公園の環境評価−形態の違いに着目して−
下図の「評価プロファイル」は,小松川境川親水公園(1985年竣工)と一之江境川親水公園(1995年竣工)の沿川居住者による親水公園の評価を示したものです.この図からは,概ね一之江境川親水公園のほうに全体的にやや良好な評価が得られていることが分かります.両親水公園は,前者がやや人工的な護岸形態を持っているのに対し,後者はビオトープが公園内に併設され,未浄化通水による自然的整備に重点がおかれている点に特徴を持つことから,一之江境川親水公園近隣居住者による評価においては,「生物の存在感」などに高い評価が得られています.また,高齢者等に配慮したフラットなアクセスが可能なユニバーサルデザインが取り入れられており,この点からの評価も高く得られていることが分かりました.
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| 小松川境川親水公園 |
評価プロファイル |
一之江境川親水公園 |

| 日本唯一! 親水公園の名前のついた鉄道駅…日暮里舎人ライナー「見沼代親水公園駅」 |
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←日暮里舎人ライナー
親水公園の駅名って素敵ですねぇ〜♪ |
これまで必ずしも交通の便のよくなかった荒川区と足立区間を結ぶ交通路線として,都営にて2008年3月30日に開通した路線です.本路線は,日暮里駅と見沼代親水公園駅を約20分で結ぶ全長,9.7キロメートルの路線で,案内軌条式鉄道(新交通システム)が採用されており,この最終駅が日本で唯一,「親水公園」の名前のついた「見沼代親水公園駅」です.この駅名が示すとおり,駅を降りてすぐのところに,かつての見沼代用水を親水公園として整備した公園があり,地域の人たちの憩いの場ともなっています.
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もともと,江戸時代に農業用灌漑ため池としてあった見沼溜井の代替水路として開削されたことから「代用水」の名前がついています.東京都東部の親水公園の多くは,元来の農業用水路が離農などにより不要化し,一時期は多くが埋め立てられたものの,江戸川区での古川親水公園(1974年)竣工を機に,数多くの整備が進みました. |
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