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中国の水環境
現在,中国では沿岸都市を中心として政治,経済,文化面で飛躍的な発展を見せています.しかし一方で,都市人口や自動車の急増,産業の大規模開発などにより都市部での大気汚染や水質汚濁など環境質の悪化も懸念されています.こうした情勢を受け,中国の環境問題に関する研究の取り組みは,地球環境問題を背景とした持続可能な開発や経済発展との関係に重点を置く比較的「マクロ」視点からの議論が多くおこなわれてきていますが,しかし,都市環境問題を身近な問題として位置付けていくためには,居住者自身の意識や行動に基づいてアプローチした「ミクロ」視点の研究蓄積が重要であると考えられます.そこで,ここでは,中国における都市環境を把握する基礎的なアプローチとして都市河川を題材とし,河川環境整備に関する諸政策の展開と居住者の評価を関連させ,環境変化とその評価を検討していきます.
CONTENTS
−中国上海市における水環境事業の展開
−上海市居住者による蘇州河の水環境評価
−上海市の生活用水利用行動
−北京市の水−親水と節水(水不足)
−上海外灘(BUND) のウォーターフロント景観
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● 中国上海市における水環境事業の展開
上海市の汚水処理は,1979年の環境保護法により法制化され「三廃(廃気・廃液・廃滓)」の処理が義務付けられました.また,これにより,現在では工場の廃水処理率と排水基準達成率が公表されています.上海市中心部を貫流する蘇州河においては,1988年より下水処理施設整備を主課題とした事業が展開されており,近年では,都心部に近い沿岸の工場移転が進めらるとともに,沿岸緑地帯や親水公園建設が進められるなど,水環境事業の方向性は「汚濁防止」から「環境創造」へとシフトしつつあります.

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● 上海市の生活用水利用行動
中国は2008年に北京オリンピック開催が決定されるなど国際的な脚光を浴びる一方,北部地域の深刻な水不足が懸念されています.こうした事態に対し,揚子江(長江)の水を黄河に引水し,南北の水資源の調整を図る南水北調が計画実施されています.しかし,水の「量」的確保とともに,今後の中国都市を支える上で,良質な飲料水の確保は必須条件であり,現在そのためのインフラ整備も急速に進められています.
上海市では,1920年代から1930年代にかけて数多く建設された里弄住宅地が現在の都市再開発事業により急速にその姿を消しつつありますが,古く7からの上海市民の水利用(生活用水利用)に着目し,現地を見てみると,水道施設(蛇口)が戸外に設置されているものが多く,その主な利用目的は野菜等の食材の洗浄が中心でした.一方,飲用としては,平均的な所得の増大等にともない各家庭で鉱泉水(ミネラルウォーター:20リットル入り)を購入している家庭も多く見られました.一般に中国では水道水を一旦煮沸して飲用する習慣(開水−涼開水)がありますが,最近では市販されるペットボトルの種類も多く,それらの廃棄ごみやリサイクル回収なども社会問題化しつつあります.

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●上海外灘(BUND)のウォーターフロント景観
黄浦江と蘇州河の合流点から南へ約1500mの中山東路沿いの黄浦江西岸(左岸)は外灘(中国語Wai-tang)と呼ばれ,英語では東洋における港湾都市の海岸通を意味する「BUND」が通称の近代上海を象徴するエリアです.河川西岸には1930年代に建設されたネオ・ルネサンス,ネオ・バロック,アールデコ様式の荘厳な建築物が立ち並び,東岸には,奇抜なデザインを持つ超高層建築物群が出現し,河川を境界に新旧の対照的な景観を見せています.現在,西岸の歴史建造物群には,上海市人民政府により「歴史風貌保護区条例」が適用され建築物保存が行われています.(作図・撮影 坪井塑太郎)
| 左岸景観 |
(地図) |
右岸景観 |


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| History |
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Future |
●上海郊外の水辺の風景
上海市を含む中国江南地方は古来より稲作を中心とする農業の盛んな地域で,灌漑用や運搬用の農業用水路が縦横に存在し,その一部は現在でも使用されています.市中心部の水辺景観とは異なり,西瓜を積載した船が係留されていたり,水路の水で洗い物をしたりする,のどかな光景にであうことができます.

●水辺の景観を主題としたマンション販売のイメージ戦略
近年上海都心部では,蘇州河に隣接した高層のマンション販売が盛んに繰り広げられています.その販売戦略は,「利便性」とならんで「水辺景観」を主題にしており,水辺のもたらす良好なイメージが,都市における「価値」として利用されはじめている様子をみることができます.こうした潮流は蘇州河の水質の改善に伴って近年隆盛しています.また中国語でも日本と同様「親水(チンシュイ)」の用語が用いられており,マンションの名称にも「濱江苑」や「水花苑」等の水辺を強く意識した名前が付いています.


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●中国北京市の水資源問題(節水政策)
2008年にオリンピック開催を控える北京市は,経済活動が活況を呈する一方,慢性的な水不足問題が存在し,これにより中長期的には社会経済発展への阻害要因となることが懸念されています.中国は,地勢状,南北間の水資源の偏在が見られ,年降水量では南部長江デルタ地域の1,000〜1,500oに対し,北京を含む北方地域では,400〜800oにとどまっています.また,水源別の供水量割合においても,南北間に地表水・地下水依存度の明瞭な相違がみられるます.こうした水資源問題に対し,中国では,第10次5ヵ年計画において,揚子江(長江)から西北・華北地域へ導水する「南水北調」事業が計画決定され2002年に着工した.本事業では,2008年までに,北京市−河北省石家庄市区間の通水が完了し,北京における水不足解消に一応の成果が見込まれています.
この「南水北調」に対する認知は2006年における北京市民300名を対象とした調査においては84%と高く得られていることがわかりましたが,水資源に対する時系列での主観的な危機意識では,将来的にもその深刻さは継続することが認識されていることも同時に示されています.また,こうした意識を反映し,生活空間で水を利用する主要場所別でも,全体的に高い節水行動率がみられます.さらに,近年では「節水」に関する機器の商品化も進んでおり,節水機種も概ね30%の利用率がみられました.
節水の技術面においては,現在でも生活の高度化により水の使用量自体は依然増加しているものの,節水機器の開発・普及促進や,工業用水のリサイクル技術の導入により節水量も着実に増加傾向にあります.一方,政策面においては,北京では既に時期(季節)・時間による供水制限の実施や,2004年には1立方メートルあたりの水道料金を前年までの2.3元から3.8元へと大幅に値上げするなど,Cost-Incentiveによる施策も講じられています.また.既に試験的に実施されている人工降雨技術の確立による「新たな水源の確保」や,さらには「退耕還林(農業耕地を水源涵養地の造成のために林地に戻す)」の奨励による「水源保護」も進められています.
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| 中国における省別供水量割合(地下水・地表水) |
環境保護・節水の啓発広告 |
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| 廃水処理投資額と処理施設数 |
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COD排出量(工業・生活) |
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| 水質関連訴訟件数 |
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廃水処理基準達成率と再生利用量 |
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●南水北調
| 中国の水資源における南北格差解消を目的とし,第10次五カ年計画(十五計画)において,揚子江(長江)から西北・華北地域へ水を導水する「南水北調」が計画決定され,2002年より着工されています.本事業では,揚子江上流部の「西線」,中流部の「中線」,下流部の「東線」の主要三路線から引水される大土木工事です(右図,赤点線). |
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2006年夏に北京市内で実施した,筆者らによる市民300名を対象としたアンケート調査では,「南水北調」については,全体の84.7%の高い認知が得られていることが明らかになりました(左図参照). |
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| GISを利用した中国都市の水環境地域分析−一人当たり生活用水量の市県級分析− |
中国の水資源は一般的に北部地域の水不足が指摘されていますが,本分析(一人当たりの生活用水量:トン/人)では,より詳細な状況を把握する観点から,省の下のレベル(市県級)での分析をGISを援用して行いました.分析対象地域は,北京市を含む「北部沿岸総合経済区」と上海市を含む「東部沿岸総合経済区」とし,1990年より5年毎の4時期を地図化しました.下図より,1)全体的に東部沿岸総合経済区より北部沿岸総合経済区のほうが一人当たりの生活用水量が少ないこと(=水不足地域),2)2000年にかけて徐々に生活用水量が両地域とも上昇していること(=都市化,生活の高度化)がわかります.しかし,2005年統計地図からは,両地域とも広範な水不足が発生しており,これは,取水源にあたる河川水量の大幅な減少,全国的な少雨等の自然由来要因が考えられます.
●北部沿岸総合経済区(北京市経済圏)
●東部沿岸総合経済区(上海経済圏)
北京の水辺−前海(Qian hai)/後海(Hou hai)  |
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地勢上,大河川がなく,慢性的な水不足が指摘される中国の首都北京市ですが,現在の故宮博物館の西側に連なる北海,前海,後海は,2000年代に入り水辺の整備が進められ,現在ではオープンカフェのほか,遊覧船も登場し,北京の若者のデートスポットにもなっています.
(※ 元来は,京杭運河の終点にあたる船の停泊港) |
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