水辺の環境情報

 
ここでは,都市の水辺について「環境情報」をキーワードに様々な側面からみていきます.水そのものがもつ自然から人文分野に至る幅広い特性を考慮し,単に「ノスタルジー」の空間ではなく,「機能」を持つ空間としてとらえるために空間を読み解く「情報」の重要性を指摘することができます.以下では,水辺における環境と防災の両側面からの情報提供や解析方法,また情報アクセスについても検討していきます.

CONTENTS

−水辺の「まちづくり」「景観」「参加」「環境」「防災」の"情報"
−水害に関する情報公開
−水辺の景観に関する情報・認知
−GIS(Geographic Information System:地理情報システム) その他


●携帯電話のカメラ機能を利用したQRコードによる観光・防災情報発信
 現在,東京都建設局河川部により隅田川における案内地図看板に観光や水防災に関する「QRコード」が実験的に付けられています.QRコードは二次元コードの一種であり,縦横ともに大量の情報をもつことができ,これまでのバーコードにかわり,近年急速に普及してきています.携帯電話に搭載されたカメラでこのQRコードを撮影することにより,手軽に当該URLへのJUMPが可能となり,ユビキタス社会実現のための大きな手段となることが期待されています.

  

北海道オホーツク海・網走湾流域における油流出事故のリスク認知に関する研究
 本調査では,現在石油・天然ガス田開発(サハリン2)の進むロシア・サハリン島からの輸送時の油流出事故を想定し,これを人間生活に深刻な影響を及ぼす負の要因を持つ「環境災害」と位置付け,網走湾流域居住者のリスク認知の特徴を検討しました.また,2006年2月末に発生した本調査地域の海岸息に油の付着した大量の海鳥の死骸漂着報道があったことを受け,この「風評被害」に関する意識調査も同時に行いました.オホーツク海に面する本地域は,世界自然遺産「知床」を有し,これから進む石油天然ガスの海上輸送におけるリスク・事故対策は危急の課題でもあります.

    
オホーツク海の風景

1.風評被害の影響
 海洋における油流出事故は,広範囲に被害が及ぶことが予測されるほか,海産物や地域の観光等へも風評等による被害が派生することが多くあります.本地域における油付着の海鳥大量死骸漂着報道による風評被害にたいする居住者の評価では「海産物等売上減少」「客数減少」とも直接的な影響は30%前後にとどまっており,その影響について「わからない」回答割合が高いことが特徴として示されました.これは,当初原因に関する報道がやや錯綜したことや,その後の報道体制において充分な説明が不足していたことがその要因として考えられます.風評減少のためには充分な説明が不可欠だと考えられます.

2.油流出事故のリスク認知特徴
 下図は,「油流出事故」のリスク認知の特徴を明らかにするためにリスク構成要素として「恐怖感」と「未知性(身近さ)」を指標としてその意識の分布をGISで表現したものです.本図より,「恐怖感」はほぼ全地域において高い反面,「未知性」は海岸から距離が離れるほどその意識が減少する減衰効果がみられました.広域かつ長期に亘る影響が予想される油流出事故は,オイルフェンス等による早期のハード面での対応のほか,化学物質由来の事故を周知したボランティア構成が重要です.
恐怖感 未知性 ボランティア参加意識


●防災模擬訓練−暴風雨の体験型防災教育− 
+対象 明治大学文学部地理学専攻(学部生) 地理学巡検−現地実習講義−
+場所 東京消防庁本所防災館
+日期 2007年7月7日(土)

  

 近年では都市における洪水災害は激甚化している一方,局所的な被害が発生するという特徴を持っており,旧来あったような防災経験の世代間継承が行われにくい状況にあります.降雨の状況は現在ではニュースをはじめリアルタイムでその状況をインターネット,携帯電話でのサイトを通しても見ることが可能ですが,地震災害に比べややそのリスク意識が低いことを指摘することができます.本施設では,風速30メートルの降雨と暴風による模擬体験をすることができます.本体験を通して,「いつ自分が被災者になってもおかしくない」という認識を持つことの重要さを再認識するとともに,防災教育コンテンツのありかたを再考する契機になりました.

●外国語による避難場所案内表示 
 災害時における避難情報の伝達においては,「外国語」による障壁も想定されます.街頭に設置されている「避難場所案内」では,現在「日本語」「英語」「中国語」「韓国語」の4ヶ国語表示が行われています.

  写真は,東京都新宿区・都庁近隣の避難看板です


●降雨情報−東京アメッシュ− 
 わが国は,地勢状,台風の通過地にあたり,毎年豪雨による被害が発生しています.一般に,洪水災害は,天気予報や気象情報などリアルタイムで情報を取得できるため,地震災害に比べ,「リスク意識」が低いことがその特徴として挙げられます.しかし,近年では台風のみではなく,都市部を中心にヒートアイランドの影響が指摘されている「集中豪雨」の頻発化も顕在化してきており,居住者自身が豪雨に備える情報収集を「能動的」に行うことが求められています.事前の対策としては行政による「ハザードマップ」のほか,降雨時においては,インターネットによる降雨情報の取得等が挙げられます.(右図は2007年7月17日 23区西部に大雨洪水警報が発令されたときの降雨情報PC画面です) 東京アメッシュLink



【洪水ハザードマップの全国公開分布状況】

2000年に発生した東海豪雨水害を契機に翌年に水防法が改正され,洪水ハザードマップの作成が全国的に進められるようになりました.2005年末現在において,作成が必要とされる市町村は,直轄の親水想定区域図未公開河川と補助河川を含めた1100自治体に対し,累計作成数は443自治体(整備率40.2%)となっています.近年ではパソコンや携帯電話で閲覧できる形式のものも多く整備されているが,今後は防災教育機会の設定等による実際の活用方法が課題となっています.

【ふるさとの川整備事業の全国実施状況分布】

ふるさとの川整備事業は,河川本来の自然環境の保全,創出や周辺環境との調和を図りつつ,地域整備と一体となった河川改修を行い,良好な水辺空間の形成を図ることを目的として1987年より着手されました.その特徴は,市区町村等がおこなう区画整理や公園整備等のまちづくりと一体となった川づくりや,治水対策の一環としての河川改修を推進するなどの点があり,2005年末現在では全国186河川が事業指定を受けています.
【水辺の楽校事業の全国分布】

1996年より開始された本事業は,小中学校における完全学校週休5日制や「総合的な学習の時間」の実施などを背景に,環境学習や自然体験活動のフィールドとして,身近な自然である河川を利用,活用することを目的としたものであり,2005年待つ現在,全国で244箇所がその指定を受けています.また,1999年より市民団体,教育関係者,河川管理者等が一体となって身近な水辺での子供達の自然体験活動推進を目的とした「子供に水辺再発見プロジェクト」も進められており,水辺での活動を安全かつ充実したものとするための必要な整備が行われています.



神戸市灘区 都賀川における増水危険告知の看板 二度と悲劇を繰り返さないために… 

 親水公園は,その名前が示すとおり,他の街区公園とは異なる「水」の存在を特徴とする公園です.1980年代以降,全国的な整備が進み,快適な空間としての意味合いを大きく持つようになりましたが,一方で,洪水災害とも決して無縁ではなく,リスクを持った空間でもあります.今回の水難事故を契機に,親水公園内の危険告知の看板のほかに警報サイレンの設置が決定され,また,小中学校生向けにも防災講習が実施されることになりました.亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます.

  

  

(撮影:坪井塑太郎 2008/08/17)


● 洪水ハザードマップの新たな取り組み−紙地図からまちごと・まるごとハザードマップへ− 

 東京都江戸川区では,公園内に設置された防災放送(防災無線)用支柱に下記の色分けがなされた潮位が一目でわかるような掲示が行われています.紙地図によるハザードマップは各戸配布が行われ,その認知は徐々に得られているものの,日常から自身が住む地域の危険度を知るための新たな取り組みとして「まるごと・まちごと」ハザードマップの表示が行われています.(下写真の支柱には,それぞれ色分けされたラインが引かれており,自分の現在立っている位置がどれだけ“低い”ところにいるのかを認識できます)

■ AP+7.30m  中川の堤防の高さ
■ AP+5.10m 高潮対策の基準潮位 昭和34年の伊勢湾台風想定潮位
 AP+3.15m キティ台風最高潮位 昭和24年のキティ台風来襲時潮位
■ AP+2.15m  大潮の満潮位 

※ AP=Arakawa Pailの略 隅田川河口霊岸島にあった量水標の零位を基準とした水位表記で,明治6年に荒川の水位を計測するために決められたものです.概ねAP±0.0mは大潮の干潮位になります.(人の身長と比べるとオレンジ色で示されたキティ台風の時の最高潮位がいかに高かったかがわかります…)
 

水位表示


水位表示



 
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