フォーカス / Focus

 

 70年代、オランダが生んだ世界に誇るプログレッシヴ・ロック・バンド。 

フォーカスの歴史は1969年11月にThijs van Leer Trioにヤン・アッカーマン(G)が参加したときに始まる。タイス・ヴァン・リール(K)は1969年中頃からマーティン・ドレスデン(B)、ハンス・クレーヴァー(D)をメンバーとしたThijs van Leer Trioを組み、活動していた。そこへ当時オランダの人気グループだったBrainboxのギタリスト、ヤン・アッカーマンが加わりカルテットとなって、Focusの前身バンドが出来上がった。1970年1月、グループ名をFocusと改め、ほぼ同じ頃、オランダのEMI-BOVEMAと契約を結び、Focusとしての本格的な活動が始まった。

Focus結成の中心となったタイス・ヴァン・リールは、1939年3月31日アムステルダム生まれ。父親がクラシックのフルート奏者、母親がピアニストという音楽家庭に育った彼は、小さい頃からクラシックの英才教育を受けた。タイスはクラシックを本格的に学びはしたが、それだけでは満足しなかった。もっと自由に才能を伸ばせる音楽を望んだのである。

彼に初めてのレコーディングのチャンスが巡ってきたのは1967年のことである。シングル盤を作ったが、ほとんど誰からも注目されなかった。しかし、これをきっかけにタイスはキャバレー・バンドを率いていたラムセス・シャフィーに紹介され、彼のバンドに加わることにした。そのバンドというのは、ジャズ、フォーク、バルカン音楽などあらゆる音楽をやっていて、タイスはここで様々なことを学んだ。しかし、このバンドを1年ほどで辞め、タイスは自分のピアノ・トリオ、Thijs van Leer Trioを組んだのである。

ヤン・アッカーマンは1945年12月24日にアムステルダムで生まれた。3才のとき、アコーディオンを弾くようになり、6才でギターに持ち替えた。プロとしての活動は18才のときJohnny&The Celler Rockersを結成したのが最初で、そこにはのちにFocusのドラマーとなるピエール・ファン・デア・リンデンもいた。2年間活動したあとThe Huntersを結成したが、そこも2年で辞めている。次にBrainboxに加入、アルバムも残したが、わずか8ヶ月で脱退、そのあとタイスのトリオに参加した。

この2人を中心としたFocusは1970年中頃、デビュー・アルバム『In And Out Of Focus』を発表。1971年2月、ヤン・アッカーマンが突然、昔の仲間ピエール・ファン・デア・リンデンとグループを作ると言い出し、Focusは一時解散する。しかし、ヤンはタイスに自分のグループに加わってくれるよう頼み、ベーシストにシリル・ハーヴァーマンスを加えて、新Focusが誕生した。このメンバーによるアルバム『Moving Waves』はプロデューサーにマイク・ヴァーノンを迎えて、1971年5月にリリース。同年9月にはシリルに代わってベルト・ルイターがFocusに加入した。

ドラマーのピエール・ファン・デア・リンデンは1946年2月19日にアムステルダムで生まれた。14才からドラムを始め、ヤン・アッカーマンのいたJohnny&The Celler Rockersに14才から2年間在籍、プロに転向して、ZZ and The Maskersに18ヶ月、Toni Boltini Circusのバンドに7ヶ月、ヤンのいたBrainboxに2年間在籍し、ヤンの誘いでFocusに加わることになる。

ベーシストのベルト・ルイターは1946年11月26日生まれ。12才のときギターを弾き始め、19才のときThe Jay-Jaysに加わり、プロになった。そこを1年でやめ、自分のバンドThe Full Houseを結成、さらにHarman van Veerのバッキング・バンドに参加したり、ジャム・セッションなどをしていたが、1971年Focusに加入した。

タイス、ヤン、ピエール、ベルトから成るFocusは1972年2月、初めてのイギリス・ツアーを行った。同年7月、サードアルバム『Focus3』のレコーディングが行われ、11月1日にオランダとイギリスで発表された。『Focus3』のリリースに併せて、1972年10月から11月にかけ、2度目のイギリス・ツアーが行われた。そして、この年にFocusはメロディ・メーカー、ニュー・ミュージカル・エキスプレス両誌でもベスト・ニュー・グループに選ばれ、輝かしい記録を残している。

1973年は1月のイギリス・ツアー、そして2月に初めてのアメリカ・ツアーで幕が開いた。特にアメリカ・ツアーは2ヵ月に渡るもので、ヨーロッパから初めてのツアーで来たバンドとしては異例の扱いを受け、大評判のうちに終わった。イギリスでの人気も相変わらずの勢いで、このころ、Focusの2枚のアルバムと2枚のシングルが同時にチャートにランクされていた。このような中で、同年5月にFocusは4度目のイギリス・ツアーを行った。その5月4日、5日のコンサートの模様をレコーディングしたのが『Focus At The Rainbow』である。Focusが名実共に絶頂期の頃の演奏と言える。

この年9月に発表されたメロディ・メーカー73年度ポップ・ポールでFocusはグループ部門2位、ギタリスト部門でヤン・アッカーマンが1位、キーボード部門でタイス・ヴァン・リールが5位をはじめとして、合計12部門に入賞を果たしている。

同年10月、またもFocusにメンバー・チェンジが起こった。ピエールに代わってイギリスのドラマー、コリン・アレンが加入。ピエールはオランダのグループExceptionのメンバーとTraceを結成することになる。

コリン・アレンは1938年9月5日イギリス、ボースマスの生まれ。Zoot Money、John Mayall Band、Stone The Crowsを経てFocusに参加した。コリンが加わったFocusは1973年11月から12月に3度目のアメリカ・ツアーを行った。

1974年1月から3月にかけてFocusはニューアルバムのレコーディングをした。このアルバム『Hamburger Concerto』は5月にリリースされ、これに併せて5度目のイギリス・ツアーが行われた。同年6月から7月にかけてFocusは初来日を果たし、そのあと夏から冬にかけてはアメリカ、カナダ、オーストラリア、スペイン、スイス、本国オランダなどの全世界ツアーを行っている。

1975年2月、Focusはイギリス・ツアーを計画していたが、すべてキャンセルされた。理由としてコリン・アレンが脱退し、それに代わるドラマーが見つからなかったことを挙げている。同年6月、Focusは2度目の来日を果たしているが、この日本を含むツアーには元のドラマー、ピエール・ファン・デア・リンデンが同行した。

同年10月、6枚目のアルバム『Mother Focus』を発表。このアルバムでは、ドラマーは1曲だけコリン・アレン、他はすべてデヴィッド・ケンパーが参加している。このリリースに併せて10月にイギリス・ツアーが予定されていたが、2月に続いてまたもキャンセル。この頃、Focus内部では、ドラマーの採用に関して、何らかのトラブルが起こっていたらしい。

1976年2月、Focusは2ヶ月にわたるイギリス・ツアーを行うが、その直後、Focusにとって大きな事件が起きる。Focus結成当初からのメンバーであり、Focusのサウンドの要でもあるヤン・アッカーマンが突然グループを離れてしまったのである。彼の後釜にはベルギー生まれのギタリスト、フィリップ・キャサリンが加入し、ドラマーも『Mother Focus』に参加していたデヴィッド・ケンパーが正式に加入してツアーはどうにか行われた。しかし、このあとFocusは活動を停止し、事実上解散することになってしまった。



ディスコグラフィー

イン・アンド・アウト・オブ・フォーカス
In And Out Of Focus
(1970)

1.フォーカス(ヴォーカル・ヴァージョン) 2.ブラック・ビューティー 3.シュガー・アイランド 4.アノニマス 5.ハウス・オヴ・ザ・キング 6.ハッピー・ナイトメア 7.ホワイト・ドリーム 8.フォーカス(インストゥルメンタル・ヴァージョン)

 フォーカスのデビュー・アルバムであると同時に、オリジナル・フォーカス唯一のアルバム。

ムーヴィング・ウェイヴズ
Moving Waves
(1971)

A) 1.悪魔の呪文 2.ル・クロシャール 3.ジャニス 4.ムーヴィング・ウェイヴス 5.フォーカス2
B) 1.イラプション:a)オルフェス、アンサー、オルフェス b)アンサー、パピラ、トミー、パピラ c)アンサー、ザ・ブリッジ d)ユリディス、デイグロウ、エンドレス・ロード e)アンサー、オルフェス、ユリディス

 脱退したヤン・アッカーマンが自分のバンドを新生フォーカスとして活動させてしまったといういわくつきの2ndアルバム。代表曲「悪魔の呪文」を収録。

フォーカスIII
Focus3
(1972)

1.ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ 2.ラヴ・リメンバード 3.シルヴィア 4.カーニヴァル・フーガ 5.フォーカス3 6.アンサーズ?クエッションズ!クエッションズ?アンサーズ! 7.アノニマス2 8.エルペス・オブ・ノッティンガム 9.ハウス・オブ・ザ・キング

 当時は2枚組としてリリースされ、2ndの路線をさらに推し進めた3rdアルバム。全英4位の大ヒット曲「シルヴィア」を含む彼らの出世作。

アット・ザ・レインボー
Focus At The Rainbow
(1973)

A) 1.フォーカス3 2.アンサーズ?クエッションズ!クエッションズ?アンサーズ! 3.フォーカス2
B) 1.イラプション(抜粋):a.オルフェス〜b.アンサー〜c.オルフェス〜d.アンサー〜e.パピラ〜f.トミー〜g.パピラ 2.悪魔の呪文 3.シルヴィア 4.悪魔の呪文(くり返し)

 絶頂期のロンドンでの公演の模様を収録したライヴ・アルバム。シングル・アルバムなのが惜しいくらい、充実した内容になっている。

ハンバーガー・コンチェルト
Hamburger Concerto
(1974)

1.リュートとリコーダーの為の小品(音楽の歓び) 2.ハーレム・スカーレム 3.ストラスブルグの聖堂 4.バース 5.ハンバーガー・コンチェルト:a.スターター〜b.レア〜c.ミディアム1〜d.ミディアム2〜e.ウェル・ダン〜f.ワン・フォー・ザ・ロード 6.アーリー・バース

 タイトル・トラックは、6曲構成からなる超大作で、ヤン・アッカーマンのギターの響きが素晴らしい。オープニングのリュートの静かな調べも絶品。  

マザー・フォーカス
Mother Focus
(1975)

1.マザー・フォーカス 2.アイ・ニード・ア・バスルーム 3.ベニー・ヘルダー 4.ソフト・ヴァニラ 5.ハード・ヴァニラ 6.トロピック・バード 7.フォーカス4 8.サムワンズ・クライング...ホワット! 9.オール・トゥゲザー...オー・ザット! 10.ノー・ハング・アップス 11.マイ・スウィートハート 12.ファーザー・バッハ

 前作とは対照的に小作品ばかりで構成され、バンドの新境地を見せた。しかし本作を最後にヤン・アッカーマンが脱退してしまう。

美の魔術
Ship Of Memories
(1977)

1.Pの行進曲 2.信じがたき出来事 3.フォーカス5 4.ヴェスヴァイアス火山を抜けて 5.グライダー 6.夜に燃える空 7.創造主は語る 8.クラッカーズ 9.美の魔術 10.悪魔の呪文(U.S.シングル・ヴァージョン)

 ヤン・アッカーマン脱退後にリリースされ、それまでの未発表曲で構成されている。全盛期だった彼らの迫力のインプロヴィゼーションが聴ける。 



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