1970年10月4日、27年9ヶ月という若さでこの世を去った不世出の女性ロック・ボーカリスト。搾り出すような彼女の歌声は60年代後半のロックそのものの叫びであった。 ジャニス・ジョプリンは1943年1月19日にテキサス州のポートアーサーという街で生まれている。いわゆるミドル・クラスの家庭でこれといって不自由もない子供時代を過ごしたが、なぜか学校では孤立した存在だった。 そんなことも原因してか、早くから酒やドラッグを知った彼女はベッシー・スミスやオデッタといった同年代の少女たちとはまったく異質の音楽にのめり込んでいった。 その後、地元の大学に入ったものの、授業にはほとんど顔を出さず、コーヒーハウスに入り浸る日々が続いた。その後、LAでしばらく生活した時期をはさんで、1961年の暮れに初めて人前で歌うということを体験している。 さらにオースティンの大学に入ってフォーク系のバンドに参加したあと、1963年のはじめにサンフランシスコに向かい、そこで、のちにジェファーソン・エアプレインを結成することになるヨーマ・コーコネンとフォーク・ブルース・デュオを組み、夏にはモンタレー・ポップ・フェスティバルにも出演した。 こうして新しいタイプの女性シンガーとして彼女は次第に評価を高めていくわけだが、それと比例するようにドラッグに浸る度合いがヘヴィなものになっていく。 その療養にためポートアーサーに戻った彼女はふたたび大学に入ってリハビリを続けたが、そんな静かな日々も長くは続かなかった。 かつてジュニスと共にサンフランシスコに向かい、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーというバンドのマネージャーになっていたチェット・ヘルムズが、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーに参加しないかと誘ってきたのだ。 ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーはハイト・アシュベリーから自然発生的に生まれた、当時のヒッピー・ムーヴメントを象徴するようなバンドだった。チェットはそこにジャニスを加えることで、一般的な人気と評価を集めることを狙った。 この狙いは見事に的中し、1967年夏のモンタレーをきっかけにレコード契約を獲得した彼らは1968年9月にセカンド・アルバムとして発表した『チープ・スリル』とそこからカットされた「ピース・オブ・マイ・ハート」の大ヒットで一躍、新しいロックの時代を代表するバンドとしての地位を手に入れてしまう。 しかし、このバンドとジャニスとの関係は長く続くことはなく、シンガーとして圧倒的に高い評価を集めることになった彼女は、レコード会社の勧めもあって、優秀なスタジオ・ミュージシャンを中心に、ホーン・セクションをフィーチュアしたコズミック・ブルース・バンドを組み、アルバム『コズミック・ブルースを歌う』を1969年に発表する。 さらにそのバンドを発展的に解消させた彼女は後期のメンバーだったギタリストのジョン・ティルを中心にザ・フル・ティルト・ブギー・バンドを結成し、何度かライヴを経験したあと、1970年8月の末にスタジオ入りして制作を始めたのが悲劇のアルバム『パール』だった。 『パール』は彼女のそれまでの音楽活動の集大成として、そして70年代への飛躍を予感させる彼女の最高傑作になるはずだった。 だが、『パール』制作中の1970年の10月4日、彼女はハリウッドにあるランドマーク・ホテルの一室で27年9ヶ月というその短い生涯に終止符を打ったのである。 それまで録音された曲と、演奏トラックだけが出来ていた「Buried Alive In The Blues(生きながらブルースに葬られ)」をインスト曲として収録して『パール』は発表され、彼女の遺作となった。 ちなみに、『パール(Pearl)』とは当時の彼女の愛称である。 |
ディスコグラフィー
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Cheap Thrills (1968) 1.ふたりだけで 2.愛する人が欲しい 3.サマータイム 4.心のカケラ 5.タートル・ブルース 6.オー、スウィート・マリー 7.ボールとチェーン 8.通行止め 9.フラワー・イン・ザ・サン 10.キャッチ・ミー・ダディ 11.マジック・オブ・ラヴ ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのセカンド・アルバム。全米チャートNo.1に輝き、ジャニスがロック・シーン初の女性スーパースターとしての地位を確立した不朽の名盤。 |
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I Got Them Ol' Kozmic Blues Again, Mama (1969) 1.トライ 2.メイビー 3.ワン・グッド・マン 4.素晴らしい世界に 5.トゥ・ラヴ・サムバディ 6.コズミック・ブルース 7.リトル・ガール・ブルー 8.ワーク・ミー、ロード 9.ディア・ランド・ロード 10.サマータイム 11.心のカケラ コズミック・ブルース・バンドを結成して、さらにソウルフルな世界を模索した2ndアルバム。 |
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Pearl (1971) 1.ジャニスの祈り 2.クライ・ベイビー 3.寂しく待つ私 4.ハーフ・ムーン 5.生きながらブルースに葬られ 6.マイ・ベイビー 7.ミー・アンド・ボビー・マギー 8.ベンツが欲しい 9.トラスト・ミー 10.愛は生きているうちに 11.テル・ママ 12.リトル・ガール・ブルー 13.トライ 14.クライ・ベイビー 71年に発表された、ジャニスの遺作となったスタジオ・レコーディング作品。プロデューサー、ポール・ロスチャイルドとのセッションを通じて、その可能性をさらに広げつつあった未完の傑作。彼女の代表曲「Move Over(ジャニスの祈り)」収録。 |