サンタナ / Santana
![]() サンタナはブルース・ロックにラテン・パーカッションを取り入れるという斬新なアイディアでラテン・ロックという新しいジャンルを確立し、現在のポピュラー音楽に多大な影響を及ぼしたバンドである。 サンタナのリーダー、カルロス・サンタナは1947年7月20日メキシコのナバロ生まれ。 父親がマリアッチのヴァイオリン奏者で伯父がブルース・ギタリストという音楽的に恵まれた環境で育ち、ヴァイオリン、ベースなどを手にした後、14歳の頃エレクトリック・ギターを始めた。 カルロスが15歳の時に家族はアメリカに移住してサンフランシスコに住むことになる。しかし、カルロス自身はアメリカとの国境沿いの町メキシコのティファナに住みサンタナ・ブルース・バンドを結成して音楽活動に精を出した。 1966年カルロス19歳の時に家族の住むサンフランシスコに移り住み、フィルモアでジェファーソン・エアプレインやグレートフル・デッドなどの新しいロック・サウンドと衝撃的な出会いをする。 新しいロック・サウンドに触発されたカルロスはティファナ時代のメンバーをシスコに呼び寄せ自らもこの新しいロック・サウンド創りに励んだ。 そして何回かのメンバーチェンジの末、1967年1月ついにフィルモアのオーディションに合格してフィルモア出演の切符を手に入れることになる。 そ のフィルモアでのライヴ演奏が評判になり1969年CBSレコードと契約を結び、そしてレコード・デビュー前の7月、あの伝説のコンサート、ウッドストッ クで一躍注目の的となった。つまり我々が後にウッドストックの記録映像で観るサンタナはまだレコード・デビュー前の姿なのである。恐るべき新人バンドの登 場である。 この時のメンバーは、カルロス・サンタナ(ギター)をリーダーに、グレッグ・ローリー(ヴォーカル、キーボード)、マイケル・シュリーヴ(ドラムス)、デヴィッド・ブラウン(ベース)、マイケル・カラベロ(コンガ)、ホセ・チェピート(ティンバレス)の6人。 そして10月、バンド名をタイトルにしたファースト・アルバム『サンタナ』をリリースし、余裕でダブル・プラチナム(アルバム200万枚以上)のセールスを記録した。 翌年の1970年、セカンド・アルバム『天の守護神サンタナ』はファースト・アルバム以上の400万枚の大ヒット・アルバムとなり、サンタナの人気は揺ぎ無いものとなった。 ファースト・アルバムではパーカッション隊に押され気味だったカルロスのギターもこのセカンド・アルバムでは、あの粘りつくようなギター・サウンドが全面にフューチャーされ、唯一無二のサンタナ・サウンドがここに確立したわけである。 アルバム2枚で早くも当時主流のブリティッシュ・ロック勢に対抗できる数少ないアメリカン・ロック・バンドとして大物バンドの仲間入りを果たしてしまった。 続く1971年リリースの『サンタナIII』では、当時まだ17歳のニール・ショーン(のちにグレッグ・ローリーとジャーニーを結成し80年代一世を風靡することになる)がギターで参加し、グループは7人編成となった。 ゲストも多彩でタワー・オブ・パワーのホーン・セクションやパーカショニストのコーク・エスコヴィード(シーラ・Eの叔父)などが参加してより厚みのあるサウンドを聴かせている。 そして4作目、『キャラバンサライ』。 ここでサンタナ・サウンドに大きな変化が起きる。ラテン・ロックといえば今もノリの良いダンス音楽というイメージがついて回る。しかし、このアルバムにあるのはそんなものとは一線を画す恐ろしほどに研ぎ澄まされた深みのある音楽である。 1972年発表のこのアルバムは70年代ロックが産み落としたとてつもない名盤のひとつとなった。 このアルバムを最後にバンドの要、キーボードとボーカルのグレッグ・ローリーがバンドを離れ、新たにトム・コスターがキーボード奏者として加入する。 ボーカルはこの後流動的に色々な人物がゲストという形で担当することになる。 74年発表の『ウェルカム』、74年発表の『不死蝶』、バンドでの活動を離れ、ジョン・マクラフリンとの共演盤73年発表の『魂の兄弟たち』、ジャズ界の巨匠故ジョン・コルトレーンの妻アリス・コルトレーンとの共演盤74年発表の『啓示』。 73 年には初来日を果たし、この時期の一番凄いサンタナ・バンドを日本のファンに披露している。ザ・ニュー・サンタナ・バンドと名づけられたこのバンドのメン バーはカルロス・サンタナ(ギター)、マイケル・シュリーヴ(ドラムス)、ホセ・チェピート(ティンバレス)のデビュー当時のメンバーにトム・コスター (キーボード)、リチャード・カーモード(キーボード)、ダグ・ローチ(ベース)、アーマンド・ペラザ(コンガ)、レオン・トーマン(ボーカル)が加わっ た8人編成である。 サンタナの音楽が歌ものから演奏重視になっていくにつれて、カルロスはジャズ畑のミュージシャンと交流を深め、どんどんロックから遠ざかり、いわゆる当時のクロスオーバーとかフュージョンとか呼ばれた音楽に接近していった。 こ の頃のサンタナは新しいファンを獲得した一方でデビュー当時の情熱的なロック・サウンドを好むファンからは受け入れられずセールス的には芳しくなかった。 ただし、カルロス自身はセールス的に芳しくないのは大した問題ではなかったであろう。それほど音楽的には充実していた時期であった。 そんなサンタナ人気を再び取り戻したのは76年発表の『アミーゴ』である。このアルバムで吹っ切れたかのように再び官能的なラテン音楽に戻ってきた。 キーボードのトム・コスターの影響もあって、決して昔のサウンドに戻って売れ線を狙うのではなく、当時のフュージョンやファンクのサウンドも巧みに取り入れた非常にハイ・センスなサウンドを創りだしている。 なお、このアルバムから「哀愁のヨーロッパ」という日本でもおなじみのビッグ・ヒットが生まれている。ただ、あまりに日本人好みなメロディとディスコのチークタイムの曲としてヒットしたという背景があり、ファンの間ではこの曲への評価はあまり高くない。 こ の延長線上で翌年『フェスティバル』が作られた。そしてここまでのサウンドの集大成として77年2枚組アルバム『ムーンフラワー』を発表。ライブ録音の旧 曲とスタジオ録音の新曲が混在した非常に斬新なアイディアであるが、それが何の違和感もなく完成度の高い世界を創り上げている。 このアルバムを最後にサンタナの知恵袋でありサウンドの要であったトム・コスターが脱退、バンドもメンバーを大幅に入れ替えて再出発することになる。 1978 年、バンド名義での11作目『太陽の秘法』をリリース。これ以降80年代に突入してからもアルバムをコンスタントにリリースし、セールス的にもまずまず で、サンタナの名前はより多くの聴衆に知れ渡ることになる。しかし、知名度とは裏腹に70年代のアルバムのように後世に語り継がれるようなアルバムがリ リースされることはなかった。 振り返ると70年代カルロスのそばには片腕となり参謀役を務めた優秀なキーボード・プレイヤーがいた。デビュー当初から『キャラバンサライ』まではグレッグ・ローリー、それ以降はトム・コスター。 しかし、トム・コスターが脱退してから以降90年代に入って元タワー・オブ・パワーのチェスター・トンプソンが参加するまで、サンタナのサウンドは新鮮味を失い明らかに煮詰まっていた。 一見サンタナというバンドはカルロス・サンタナのワンマン・バンドのようなイメージが強いが、実は周囲の優秀なプレイヤーに支えられていたのである。 カ ルロスのギターテクニックはデビュー当時からみるみる上達して、『ロータスの伝説』ではチョーキングやファンガー・ビブラートに加え、速弾きやワウ・ペダ ルなど饒舌なギター・プレイを披露している。しかし、カルロスのギターがカルロスらしい官能的な妖しさを最も発していたのは初期の頃の危ういギター・プレ イの頃であることは多くのファンの認めるところであろう。 |
ディスコグラフィー
![]() |
Santana (1969) A)
1.ウェイティング 2.エビル・ウェイズ 3.シェイズ・オブ・タイム 4.セイヴァー 5.ジンゴー ウッドストック出演と前後して発表されたサンタナのデビュー・アルバム。軽く200万枚を売上げダブル・プラチナム・アルバムになっている。カルロスのギ ターはまだどことなくたどたどしいが、それを補って余りあるほどのラテン・フレーバーがほとばしる。ちなみに、一見ライオンの顔のジャケットは隠し絵に なっている。 |
![]() |
Abraxas (1970) A)
1.風は歌い、野獣は叫ぶ 2.ブラック・マジック・ウーマン〜ジプシー・ウーマン 3.ぼくのリズムを聞いとくれ 4.ネシャブールの出来事 5.すべては終りぬ サンタナの代表作。印象的なジャケットと「ブラック・マジック・ウーマン」の大ヒットで一躍有名になったが、逆にこのヒットがあったが故にこのアルバムの 評価が低くなってしまった気がする。ニュー・ロックどころかこの後マイルス・デイビスの門下生達が創りだすエレクトリック・ジャズ・サウンドの香りさえす る名盤。 |
![]() |
Santana III (1971) A)
1.バトウーカ 2.孤独のリズム 3.タブー(禁断の恋) 4.祭典 パーカッショニスト、コーク・エスコヴィードの協力の下に制作された3rdアルバム。前作のような神秘性は薄れたが、ニール・ショーンのギターやタワー・オブ・パワーのブラス・セクションをフューチャーして全編押せ押せのノリで突っ走る。 |
![]() |
Live (1972) A)
1.マーブルズ(大理石) 2.ラーヴァ(溶石) 3.エヴィル・ウェイズ 4.フェイス・インタールード 5.ゼム・チェンジズ バンド名義ではなく、カルロス・サンタナとバディ・マイルスの名義でリリースされたライヴ・セッション・アルバム。ライヴと銘打ってはいるが当日録音に失敗して後日スタジオで録音し直したといういわく付きの作品。 |
![]() |
Caravanserai (1972) A)
1.復活した永遠なるキャラバン 2.躍動 3.宇宙への仰視 4.栄光の夜明け 5.風は歌う サンタナのイメージを一新させた傑作コンセプト・アルバム。プログレッシヴ・ロックにも通じる知性と気品の高さを感じさせる。当時のミュージック・ライフ誌のレコード・レビューではイエスの『危機』と満点の星5つで勝敗を分け合った。 |
![]() |
Love Devotion Surrender (1973) 1.至上の愛 2.ネイマ 3.神聖なる生命 4.神の園へ 5.瞑想 カルロス・サンタナとジョン・マクラフリンの名義でリリースされたアルバム。当時傾倒していたインドの宗教家スリ・チンモイ師繋がりの二人の共演盤。ロッ ク畑フィーリング派のカルロスとジャズ畑テクニック派のジョンということでどうなることかと心配したが意外と違和感なく聞けるアルバム。 |
![]() |
Welcome (1973) 1.ゴーイング・ホーム(家路) 2.ラヴ・デヴォーション&サレンダー 3.ソウサリートのサンバ 4.君の瞳 5.輝ける光 6.母なるアフリカ 7.聖なる光 8.フレーム・スカイ 9.ウェルカム 10.マントラ 前作『キャラバンサライ』でひとつの頂点を極めたサンタナが、新たな方向性を示した作品。カルロス・サンタナのソロ作『魂の兄弟たち』に通じるジャズ的アプローチが随所で見られる。 |
![]() |
Lotus Live In Japan 1973 (1974) Disc1 Disc2 初来日公演の模様を3枚組LPに収めたアルバム。サンタナが一番脂ののっていた時期の凄みのある最高のパフォーマンスを堪能できる。はっきり言ってこのア ルバムに「ブラック・マジック・ウーマン」のようなヒット曲はいらなかった。横尾忠則氏デザインのジャケットも話題になった。 注)アナログ盤の曲順が不明のためCDの曲順を掲載。 |
![]() |
Illuminations (1974) 1.スリ・チンモイの教え 2.大気の守護神/水の守護神 3.楽園〜不滅なる現在 4.太陽の守護神 5.啓示 カルロスがジャズ・ハープ/オルガン奏者のアリス・コルトレーン(ジャズ界の巨匠ジョン・コルトレーンの未亡人)と共演したインストゥルメンタル・アルバム。2人ともこの時期東洋思想と精神世界にハマっていただけあり、穏やかでスピリチュアルなサウンドが印象的だ。 |
![]() |
Borboletta (1974) 1.春の訪れ 2.花の歌 3.新たなる旅立ち 4.果てしなき世界 5.太陽のもとへ 6.熱望 7.君の教え 8.はかない夢 9.ヒア・アンド・ナウ 10.シナモンの花 11.漁民の契 12.不死蝶 脱ラテン・ロック時代のサンタナが74年に発表した7作目。アイアート・モレイラやスタンリー・クラークらが参加したジャズ指向アルバム。 |
![]() |
Amigos (1976) A)
1.ダンス・シスター・ダンス 2.テイク・ミー・ウィズ・ユー 3.レット・ミー 『キャラバンサライ』から続いた脱ラテン・ロックのサウンドから、再びラテン音楽の持つ情熱的なサウンドに回帰した作品。ファンクやフュージョンなどこの時代のサウンドを吸収した良い意味で聴きやすいアルバムに仕上がっている。 |
![]() |
Festival (1977) A)
1.カーニバル 2.子供達の戯れ 3.喝采(インストゥルメンタル) 4.ギブ・ミー・ラブ 5.真夏の夢 6.レット・ザ・ミュージック・セット・ユー・フリー 前作『アミーゴ』の路線を踏襲した9作目。チェピート・アリアスがパーカッショニストとして復帰し安定したサウンドを聞かせてくれる。 |
![]() |
Moonflower (1977) Disc1 Disc2 緻密に計算されたライヴとスタジオ録音という組み合わせで、躍動感と熱気あふれるサンタナ・サウンドを聞かせてくれる。70年代サンタナの集大成。 |
![]() |
Inner Secrets (1978) 1.ディーラー/スパニッシュ・ローズ 2.ムーブ・オン 3.ワン・チェイン 4.Stormyストーミー 5.ウェル・オール・ライト 6.オープン・インビテーション 7.ライフ・イズ・ア・レディ/ホリデイ 8.ファクツ・オブ・ラブ 9.ワム! ポップ・ロック路線へと方向転換をした作品。それまでの作品に比べると物足りなさを感じるが、この転換が80年代を生き残るためには必要だったのだろう。プロデューサーはデニス・ランバートとブライアン・ポッター、言わずと知れたダンヒル・サウンドの重鎮コンビである。 |