イエス / Yes

 70年代前半のブログレッシヴ・ロックを代表するグループ。高度で個性的な演奏技術と西欧の古典音楽の影響を受けた高い音楽性はロックという範疇には収まらない独創的なサウンドで多くのファンを魅了した。

イエスはジョン・アンダーソン(Vo)、クリス・スクワイア(B)、ビル・ブラッフォード(D)、ピーター・バンクス(G)、トニー・ケイ(K)の5人によって1968年秋イギリスで結成され、翌年『イエス・ファースト』でアルバム・デビューを果たした。デビュー当初はジョン・アンダーソンを中心とした独自のコーラス・アンサンブルと当時主流のブルース・ロックから距離をおいたサウンドは異色ではあったが、まだ後に『危機』を生み出すほどの才能は開花していなかった。

イエスがその才能を開花させるのは3作目の『サード・アルバム』からである。このアルバムからピーター・バンクスに代わって、スティーヴ・ハウが加わった。EL&Pからも誘われていたという、その驚異的なギター・テクニックとオリジナリティーはイエスをより高みへと導いた。

続く4作目『こわれもの』からはトニー・ケイに代わってリック・ウェイクマンが加入。

ジョン・アンダーソンのヴォーカル、クリス・スクワイアのベース、ビル・ブラッフォードのドラムス、スティーヴ・ハウのギター、すべてが研ぎ澄まされたナイフの刃のような鋭角なサウンドを奏でる中、リック・ウェイクマンのクラシックを基調とした確かなテクニックと、ピアノ、オルガンの他、シンセサイザーやメロトロンを駆使した壮大なオーケストラ・サウンドはイエスのサウンドに奥行きと広がりを加味することになった。
また、マルチ・キーボード・プレイヤーとしての彼のプレイ・スタイルはその後のキーボード・プレイヤーに多大な影響を与えた。 ここにジョン・アンダーソン、クリス・スクワイア、ビル・ブラッフォード、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマンの5人が出会い、至高のイエス・サウンドが完成したのである。

そしてこのメンバーで5作目『危機』が1972年9月、世に出た。A面1曲、B面2曲という大作で占められたこの『危機』によりイエスの実力と名声は揺るぎないものになりクラシックやジャズのプレイヤーからも一目置かれるようになった。

『危機』が発表された後、オリジナル・メンバー、ビル・ブラッフォードはキング・クリムゾンに参加するためグループを脱退し、替わりに日本でも人気の高いドラマー、アラン・ホワイト(ビートルズの「ラヴ・ミー・ドゥ」のシングル・バージョンのドラムスは彼が叩いていることは有名な話しである。)がイエスに加入したが、このメンバー・チェンジによりサウンドに変化が表れる。

ライヴ・アルバム『イエスソングス』を挟んで7作目『海洋地底学の物語』がジョン・アンダーソン、クリス・スクワイア、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマン、そしてアラン・ホワイトの5人で制作された。
2枚組片面1曲20分以上にも及ぶ大曲4曲で占められたこのアルバムでは、『危機』のような緊張感は薄らぎ、雄大で大きなサウンドへと変わった。名盤『危機』の後だけに噂だけが先行し、このアルバムにファンは『危機』以上の期待をしたが、残念ながら『危機』以上の評価を得ることはできなかった。

初期のベスト盤『イエスタデイズ』を挟んで9作目『リレイヤー』ではリック・ウェイクマンが脱退して、パトリック・モラーツが参加。ますます、イエスのサウンドは変化していくことになる。
パトリック・モラーツはレフュジーというEL&Pタイプのトリオ・バンドでキーボードを弾いていた。リック・ウェイクマンのように後ろへ下がってアンサンブルの中でサウンドを彩るのではなく、前へ出てリードを奏でるキース・エマーソン・タイプのプレイヤーである。ベンダーを多用したシンセ・ソロはスティーヴ・ハウのギター・ソロに真っ向から対決するものであり、それはそれで緊張感があって良かったが、ファンがイエスに求めていたものとは食い違いがあった。このアルバムも『危機』以上の評価を得ることはできなかった。

内容は悪くないが、セールス的にどうしても『危機』以上のものを作れない彼らはしばらくの沈黙の後、リック・ウェイクマンを呼び戻して1977年『究極』を発表する。曲もそれまでの大作主義をやめてコンパクトにした。しかし、世はディスコ全盛の時代。イエスのサウンドは時代に受け入れられなくなっていた。それでも原点回帰を目指して翌年『トーマト』を続けて発表するが『危機』の時のような魔法をファンにかけることは出来なかった。
ついにはイエス・サウンドの要ともいえるジョン・アンダーソンまでもがイエスを脱退。バグルズのトレバー・ホーンをボーカルに、ジェフリー・ダウンズをキーボードに迎えて『ドラマ』が制作されるが、ジョン・アンダーソンのいないイエスがイエスである意義はなく、ここにイエスは実質的にその生命を絶たれることになる。

80年代に入って、ジョン・アンダーソンをはじめとするメンバーが集結してイエス名義でアルバムを発表し『ロンリーハート』というビッグ・ヒットを放ったりもするが、そのサウンドはイエスの本来の姿とは大きくかけ離れたものであった。

最後にイエスといえば『こわれもの』、『危機』、『イエスソングス』、『海洋地底学の物語』、『イエスタデイズ』、『リレイヤー』などの美しいジャケット・イラストが印象に残る。これらのジャケットを描いたのはロジャー・ディーンというイラストレーターである。ほかにもオシビサ、ユーライアヒープ、バジャーなど、この時代のレコード・ジャケットに数々の作品を残している。



ディスコグラフィー

イエス・ファースト
Yes
(1969)

A) 1.ビヨンド・アンド・ビフォア 2.アイ・シー・ユー 3.昨日と今日 4.ルッキング・アラウンド
B) 1.ハロルド・ランド 2.エヴリ・リトル・シング 3.スウィートネス 4.サヴァイヴァル

 イエスのデビュー・アルバム。独特のコーラスとバックのヘヴィなサウンドによるそのスタイルは当時すでに異彩を放ち、若いメンバー達の才能あふれんばかりの新鮮な演奏を聞くことができる。

時間と言葉
Time And A Word
(1970)

A) 1.チャンスも経験もいらない 2.ゼン 3.エヴリデイズ 4.スウィート・ドリームス
B) 1.予言者 2.澄みきった日々 3.星を旅する人 4.時間と言葉

 オリジナル・メンバーで制作された2作目。大作主義に走る前のこの辺りのサウンドの方がイエス入門には最適では。オーケストラを導入したりと、サウンド面での充実が図られた。 

サード・アルバム
The Yes Album
(1971)

A) 1.ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス 2.ザ・クラップ 3.スターシップ・トゥルーパー
B) 1.アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル 2.ア・ヴェンチャー 3.パペチュアル・チェンジ

 ギターがピーター・バンクスからスティーヴ・ハウに代わっての第一弾。スティーヴ・ハウのギターが縦横無尽に活躍する。これほどブルースの影響のないロック・ギタリストは存在しなかった。

こわれもの
Fragile
(1972)

A) 1.ラウンドアバウト 2.キャンズ・アンド・ブラームス 3.天国への架け橋 4.南の空
B) 1.無益の5% 2.遥かなる想い出 3.ザ・フィッシュ 4.ムード・フォー・ア・デイ 5.燃える朝焼け

 キーボードがトニー・ケイからリック・ウエイクマンに代わっての第一弾。その後のイエスを代表する楽曲「ラウンドアバウト」「南の空」「遥かなる想い出」「燃える朝焼け」とメンバー個々のソロ小品で構成されている。どの曲も聴き応え十分であるが、ビル・ブラッフォードの作品「無益の5%」はリズム・アレンジが凝っていてビルの才能の一端を垣間見ることができる。ついにこのアルバムで運命の5人が揃った。

危機
Close To The Edge
(1972)

A) 1.危機
B) 1.同志 2.シベリアン・カートゥル

 いわずと知れた70年代ロックの名盤、と同時にロックの範疇を逸脱した問題作。このメンバーでしか表現できない芸術的な演奏が収録されている。ロックン・ロールの誕生から20年、ロックはついにとてつもない音楽に変貌した。

イエスソングス
Yessongs
(1973)

Disc1
A) 1.オープニング 2.シベリアン・カートゥル 3.燃える朝焼け
B) 1.パペチュアル・チェンジ 2.同志

Disc2
A) 1.ムード・フォー・ア・デイ 2.ヘンリー八世の六人の妻から抜粋 3.ラウンドアバウト
B) 1.心の光〜オール・グッド・ピープル 2.遥かなる想い出〜ザ・フィッシュ

Disc3
A) 1.危機
B) 1.ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス 2.スターシップ・トゥルーパー

 スタジオ録音でみせた完全無欠なサウンドをライヴでどこまで再現できるかが注目された。オープニング・テープで流れるストラビンスキーの「火の鳥」とそれに続くリック・ウェイクマンのメロトロンに導かれて始まる「シベリアン・カートゥル」、クラシックの優雅さとロックの力強さが見事に融合した最高のライヴ・パフォーマンスを聞かせてくれる。当時はLPレコード3枚組の大作。ロジャー・ディーンのイラストも存分に堪能できる。

海洋地底学の物語
Tales From Topogtaphic Oceans
(1973)

Disc1
A) 1.神の啓示 B) 1.追憶

Disc2
A) 1.古代文明 B) 1.儀式

 2枚組でリリースされて片面1曲ずつの計4曲収録。アラン・ホワイトの加入によりエッジの尖ったイエス・サウンドが少し丸くなった印象を受ける。

イエスタデイズ
Yesterdays
(1974)

A) 1.アメリカ 2.ルッキング・アラウンド 3.時間と言葉 4.スウィート・ドリームス
B) 1.ゼン 2.サヴァイヴァル 3.星を旅する人 4.ディア・ファーザー

 ファースト・アルバムとセカンド・アルバムからの抜粋とオリジナル・アルバムに未収録曲の寄せ集め。「我々は最初からイエスだったんだ」と主張しているかのような好アルバムである。最大の目玉は10分間に及ぶサイモン&ガーファンクルのカバー曲「アメリカ」。フォーク調のこんな曲もイエスの手にかかると緊張感のあるイエス・サウンドに変貌してしまう。スティーヴ・ハウのカントリー風のギター・ソロが秀逸。

リレイヤー
Relayer
(1974)

A) 1.錯乱の扉
B) 1.サウンド・チェイサー 2.トゥ・ビー・オーヴァー

 キーボードがリック・ウェイクマンからパトリック・モラーツに交代。アルバムの作り方は「危機」同様の大作主義ではあるが、リック・ウェイクマンとは異なり、パトリック・モラーツのベンダーを多用したシンセ・ソロやローズ・エレクトリック・ピアノは、イエスの新しいサウンド作りに貢献している。

究極
Going For The One
(1977)

A) 1.究極 2.世紀の曲がり角 3.パラレルは宝
B) 1.不思議なお話を 2.悟りの境地

 リック・ウェイクマンが再加入。ジャケットもロジャー・ディーンからヒプノシスになって心機一転、前作までの大作主義は影をひそめサウンドも心なしかポップになっている。この聴きやすさを良しをするかどうか賛否の分かれるところだろう。

トーマト
Tormato
(1978)

A) 1.a)輝く明日 b)歓喜 2.クジラに愛を 3.マドリガル 4.自由の解放
B) 1.UFOの到来 2.天国のサーカス 3.オンワード 4.自由の翼

 前作の挑戦をさらに進め、かつてないほどバラエティに富んだサウンド、ストレートな歌詞へと移行を遂げた作品。新しく生まれ変わったイエスが感じられる1枚。

ドラマ
Drama
(1980)

A) 1.マシーン・メシア 2.白い車 3.夢の出来事
B) 1.レンズの中へ 2.光を越えて 3.光陰矢の如し

 中心メンバーであったジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンの2人が脱退し、新たにトレバー・ホーンとジェフ・ダウンズが加入してリリースされた唯一のアルバム。トレバー・ホーンは見事にジョン・アンダーソンになりきっているが、ジョン・アンダーソンのいないイエスをイエスと呼べるのかどうか・・・・。サウンドは心なしかエイジアのような気もしないではない。

イエスショウズ
Yesshows
(1980)

Disc1
A) 1.パラレルは宝 2.時間と言葉 3.究極
B) 1.錯乱の扉

Disc2
A) 1.クジラに愛を 2.儀式 パート1
B) 1.儀式 パート2 2.不思議なお話を

 パトリック・モラーツ在籍時の貴重なテイクから、リック・ウェイクマン復帰後の10周年記念コンサートまで、70年代後半のステージの模様を収録した2枚組ライヴ・アルバム。バンドは活動停止状態だったのであまり話題にはならなかった。


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