ありそうな質問と答え(Q
& A)
1.基礎知識編
石附 澄夫
1-4.「日米衛星通達合意」
質問)「日米衛星調達合意」とは何ですか。
答え)1989年に米国が、日米間の通商摩擦の際にスーパー301条の適用対象に政府関連の実用衛星、すなわち、通信、放送、気象観測、測地などを目的とした衛星を含めるように主張したことによって、1990年に合意されたものです。この合意の結果、これらの「実用」のための「技術試験」のための衛星は開発できますが、「実用」に付するためには、国際競争入札を経ることが必要になりました。しかし、国際競争入札に勝つのは困難で、事実上、日本は実用衛星の製作から撤退することになりました。宇宙化学研究機構の
http://www.jaxa.jp/missions/projects/sat/index_j.html
には、さまざまな衛星プロジェクトが列挙されていますが、「通信・放送・測位」のところには「技術試験」という言葉が付いていること、および、気象衛星「ひまわり」がないことに注意してください。
質問)「日米衛星調達合意」に下で、技術試験衛星はどう運用されますか。
答え)技術の開発や試験のためであり、実用に附されない人工衛星は、「日米衛星調達合意」の範囲ではないので、国際競争入札にかける必要はありません。しかし、試験後に実用に附される「日米衛星調達合意」の範囲に入るので、技術試験をした後は、実用衛星とはなりません。
答え)「きく8号」は、通信放送技術のための試験衛星であり、実用衛星ではありません。例えば、「アンテナを宇宙空間で折りたたみ傘のように開いて電波を送受信できるか」を試験する衛星だったのです。実用には使われません。もったいない話ですが。新聞などの記事をよく注意して読むと、携帯電話の中継にこの「衛星が使われる」とは、絶対に書いてはありません。この衛星が実際の通信や放送に使われないからこそ、「日米衛星調達合意」違反にならないのです。もし、当時の日本政治家が「日米衛星調達合意」を結んでいなければ、そのまま実用に使われたでしょう。
気象衛星「ひまわり」は、実用衛星です。米スペースシステムズ・ロラール社からの完成品を購入したものです。もし「日米衛星調達合意」がなければ、日本の人工衛星のメーカーが製作していたはずです。
質問)日米衛星調達合意が日本の宇宙開発(とくに実用衛星の開発)において足枷になっていると思うのですが、これをなぜ変更しようとしないのですか。宇宙基本法を進める人は日米衛星調達合意があるのに産業利用をどうやって推進しようとしているのか。(重要!!)
答え)実際、足枷になっています。自民党や日本経団連のみならず、多くの関心を持つ人々が日本の宇宙開発を妨げたと言っています。日本の宇宙開発が壊滅的な打撃を受けたという人もいます。
ところが、自民党や日本経団連の議論では、これを変更しようという議論はほとんどありません。理由は書かれていません。これでは、「米国への従属」と言われても仕方ないでしょう。
自民党や日本経団連は、日本の宇宙開発の現状を「研究開発優先」と批判し、これが実用化や産業化がおくれている原因としています。しかし、日米衛星調達合意によって実用衛星の開発を禁じられたら、宇宙科学以外には研究開発しか残らなかったのは理の当然と言えましょう。
将来の産業利用の行く末は、日米衛星調達合意があるかぎり、極めて不透明と言わざるをえないでしょう。
自民党や日本経団連は、「政府が継続的なユーザーとして財政支出を行って宇宙産業界を支援したら、メーカーに競争力がつき、入札で外国のメーカーに勝てようになる」という目ろみのようです。この「継続的なユーザーとしての支援」が、軍事衛星への財政支出というように彼等の主張は読めます。
この、
「日米衛星通達合意」
↓
「目的意識の薄い研究開発優先」
「宇宙産業の閉塞感」
↓
「航空宇宙産業への支援の要請」
↓
「軍事への進出の要請」すなわち「1969年平和利用決議の排除(憲法第9条からの逸脱)」
という構図を認識することは、「宇宙基本法」の問題を考える上で極めて重要を考えます。