スタジアムガイドではガイド本体に簡単な資料を添付しています。資料の内容については年に数回更新してガイドの一部として配布しています。
この芝特集は日本平スタジアムピッチ管理者である渡辺建設(清水市)の佐野さんの全面的ご協力により98年から企画しています。2002年までに7回特集を設けました。
みなさん、ご存知の方も多いかと思いますが、日本平スタジアムの芝は今Jリーグの中でもトップレベルにあり、病気や管理上のミスなどによる芝のトラブルを起こしたことは有りません。
これは他のスタジアムではやっていないことがたくさん有るからです(内容は企業秘密とのこと)。
みなさんの目の前に広がる緑の絨毯にはさまざまな秘密が隠されています。そこで、
今回日本平スタジアムの芝(ピッチ)の管理責任者佐野さんに、日本平の芝についてお聞きしました。
(質問1)試合終了直後にスコップで穴埋めのようなことをしていますが、何をしているのですか?また、あのスコップの中味の成分は?(芝にとってはラグビーの選手のやかんの水のようなものでしょうか?)
粒度調整(最大粒径2mmでシルト分を含まないもの)をした砂だけです。
産地は天竜川河口の竜洋町です。昨年は青森県の砂を使っていましたが高価なので今は竜洋町の砂だけです。
芝に出来た穴は人間で言えば傷です、早く手当してあげると再生も早いしデコボコも直ります。試合終了後直ぐにやらないと傷口が乾いてしまい再生が遅くなってしまいます。
(質問2)芝のペイントについては、どのようにやっているのでしょうか。(芝用の塗料をスプレーするのでしょうか)また、ペイントする時は、芝にはどのような影響があるのでしょうか
芝専用のイギリス製ペイントを使用しています。このペイントはウインブルドン、ウェンブレーと言った有名なところで実績があり芝への害は有りません。圃場でペイントの試験はいろいろやっています。
日本では国立競技場と日本平だけがこのペイントを使用しています。因みにジュビロ磐田スタジアムは某国産メーカーの製品を使っています(国立と日本平はイギリスでこのペイントを使っていると紹介されました)。
昨年(1997年)S-PULSEのロゴの型紙をイギリスで作成しオレンジのペイントも特別作ってもらってゴール横にカラーでS-PULSEと描きました、日本で初めての試みでした。今年もやるかもしれませんが何分お金がかかるので?(昨年は両ゴール横に黄色と赤のペイントできれいに描かれていましたね。)(なお、1999年チャンピオンシップにおいても描かれていました。)
(質問3)バックスタンド側(西寄り)のタッチラインの水はけが一時悪いように感じましたが、現状はどうでしょうか?また、どのような対処をされたのでしょうか?
ご指摘の通りバックスタンド側は全体に水はけが良くないです。これはグラウンドの構造上の問題で管理作業だけでは解決しません。日本平はグラウンドに降った雨は暗渠排水で集められ地下タンクに貯まる仕組みになっています。地下タンクが満水の場合は排水スピードが極端に落ちてしまいピッチの上に水たまりが出来てしまいます。
グラウンドは造成後3年目から急激に排水が悪くなると言うデーターが有ります。これは踏圧とサッチ(芝の刈りカスなどの不純物)が主要因です。今年の6月にバックスタンド側3ヶ所暗渠にバイパスをつけました。また直径5cm深さ20cmの穴を特殊な工具(当社オリジナル)で約20,000箇所あけました。これで少しは良くなったと思いますが、完璧では有りません。(大変な作業だったようです)
(質問4)GKの立つあたりが早く芝が傷んでいるようですが、その対処法はどのようにしているのでしょうか。
GKの場所は線審(副審=タッチライン)の場所に次いで傷むところです。毎年禿げているグラウンドがかなりあります。日本平は良い方ではないでしょうか。GKの所は日本平ではゲームだけでは禿げたりしません。(雨天は別ですけど)ほとんど練習で傷み禿げてしまうのです。
ゲーム前の練習とハーフタイムの練習が無くなればかなり改善されるはずです。
エスパルスとはその辺をよく話しているので真田選手はGK位置での練習は少なく、チームはハーフタイムも練習しません。アウェイチームはやりたい放題です。ですからアウェイ側(東側)のGK位置の方が傷みが激しいのです。
禿げてしまったところは張り替えるしか有りません。今年はまだ張り替えていません
10月上旬に張り替える予定ですがはっきりしていません。現在、某メーカーと共同で線審とゴール用の芝を開発中です。来年5月頃試作品が完成します。日本平で試験的に使うつもりです。
成功すれば線審部分の傷みはかなり減ると思います。
(質問5)グラウンド全面全て芝の配合量は同じなのでしょうか(全て同じ質の芝でしょうか)。
全て同じです。
同じグラウンドでも排水の良いところと悪いところ、日当たりの良いところと悪いところなど条件が違い芝生の成育に差が出ます。冬はメインスタンド側は日が当たらないし、夏はバックスタンド側は直射日光で温度が高くなりすぎます。つまり冬はバックスタンド側が良く夏はメインスタンド側の方が良い状態です。
(質問6)今年の様な降水量の多い、また日照不足の際に気を付けていることはどのような点でしょうか?
日本平では、どのような方法で健康な芝を維持しているのでしょうか。
確かに今年は降水量が多く、日照も平年よりかなり少ないですね。
天候不順は私たちにとって避けて通れないことですから、芝の生育不良を天候のせいだけにするのは間違いだと思っています。
私たちは日頃から試験研究を重ね対応策を検討しています。このことは超専門的なことになりますのでこの場だけでは語り尽くせません。日本平では他のグラウンドでは絶対にやっていないことをかなりたくさんやっています。企業秘密の部分もあります。
(質問7)蛇塚も同じように管理されているのでしょうか。また、ホームアドバンテージ(ホーム有利)のために、蛇塚と芝の長さや、種類をあわせる(蛇塚が日本平とあわせる)ことはしているのでしょうか。
蛇塚の管理はやっていません。エスパルスにグラウンドキーパー(エスパルスではグリーンメンテナンスディレクターと呼んでいます)がおり、彼が管理しています。蛇塚にはグラウンドが寒地型と※)ティフトンの2面有ります。寒地型はエスパルス所有、ティフトンは清水市のグラウンドです。管理は両方ともエスパルスのグラウンドキーパーが行っています。
蛇塚と芝の長さは統一していません。同じ寒地型でも蛇塚と日本平では全く違うグラウンドとなっています。蛇塚は練習場、日本平は競技場です。
刈り高については試合の前にエスパルスから要望が来ます。ポイントとなる試合の時のみ、出来る限り協力します。
※)ティフトン: ティフトンは芝生用として、暖地型芝草のバミューダグラスより改良されたもので、米国ジョージア州ティフトンのコースタール・プレーン試験場で育成されました。ティフトン芝は種子を生産せず、繁殖栄養により芝生を造成します。
(質問8)散水やスパイク(穴あけ)はどの程度の間隔(時間)で行っているのでしょうか。
夏場の散水は毎日朝6時と夕方に行っています。朝はたっぷり、夕方は軽い散水です。
これにはいろいろな理由があります。
試合の後も散水したいのですが観客やスタッフにかかってしまうので出来ません。人間も運動した後は水を飲んだり、シャワーを浴びるじゃないですか、芝もおなじです。
穴開けは平均月1回程度ですが、間隔が決まっているわけではありません。今年は人力で大きな穴を20,000ヶ所も開けました。来年もまた20,000ヶ所開ける予定です。
(質問9)グラウンド使用の頻度に関して、目安はあるのでしょうか。
使用日数は年間60日以内、試合数90以内を目安にしています。
これはいろいろな競技場のデーターと実績から出した数字です。
もう一つ使用制限として1日の試合数があります。小中学生3試合まで、高校生及び女子2試合まで、社会人以上1試合です。
(質問10)何か特別に肥料等を与えているのでしょうか。
特別な肥料を与えています(企業秘密です)。
【日本平の芝の種類】(改修前の寒地型の状況です。2003年以降は暖地型に切り替えましたので状況は違います)
芝生の種子はほとんど外国産(アメリカ)です。各メーカーで様々な品種を出しており、正確に何種類あるのか把握できません。約2年周期で新製品が出ますし、生産中止になる芝も多数有ります。日本平で使っている芝で生産中止になったものもあります。
スポーツターフとして使用する寒地型芝は、ブルーグラス類、フェスク類、ライグラス類の3種類です。その中に改良品としていろいろな品種の芝が存在するのです。以下に日本平の芝18種類を紹介します。
◆ブルーグラス類(ケンタッキーブルーグラス)
@デスティニー Aバロン BラムT Cインディゴ Dアルパイン EスノーKBU Fリバレイター
◆フェスク類(トールフェスク)
GジャガーU HジャガーV Iスーパーショートストップ Jミニムスタング Kピクシー
◆ライグラス類(ペレニアルライグラス)
LマンハッタンU MサイテーションU Nエッジ OフェスターU PAPM Qビビットグリーン
全ての種類が成育しているとは限りません。トールフェスクは最近見あたらなくなりましたし、夏場に弱いライグラスは今後播種する予定がないため減っていくと思います。つまりブルーグラス中心ということです。