〜Jリーグ開催1週間前から開催までのピッチ管理〜

日本一の美しい芝を誇る日本平ですが、試合に向けての管理は1日ではできるものではありません。(ローマは1日にしてならず)そこで、今回も管理者の佐野さんに試合に向けての芝の管理などについてお聞きしました。

2000年5月13日(土)の市原戦を例に土曜日16:00キックオフとした時、前日までの作業工程と開催日の作業工程を表にまとめました。

  開催日前日までの作業工程
 

作業日

作業内容

備     考

5日前(月) 転圧、ブラッシング※
芝刈シングル(刈高26mm)※
 
4日前(火) 特殊液肥、殺菌剤、殺虫剤散布
ターフクォリティー調査(土壌硬度、透水速度)
 
3日前(水) 芝刈シングル(刈高26mm)※
散水(早朝70t、夕方70t)
 
2日前(木) Off 翌日雨予想の時は芝会芝刈実施
1日前(金) 芝刈ダブル(刈高26mm)※
散水夕方63t
開催日雨予想の時はライン引く
開催当日(土) 開催当日の工程参照 開催準備
■芝刈りシングル: 芝刈りを一定方向に1回行うこと。一般に芝刈りと言えばこれを指す。
■芝刈りダブル: シングルで刈った後、刈り方向が直交する方向で続けて刈ること。
2方向連続して刈ることです。2度刈ることで刈りムラが少なくなる。
刈り高が安定する等のメリットがあります。
■ブラッシング: 試合で荒れたピッチにブラシ(ブラシユニットを取り付けた芝刈機)で芝目を整えてやること。合わせて試合でちぎれた芝生を取り除くことも出来ます。
人間で言えば痛んだヘアーを洗髪し櫛でで整えると言ったところです。
  開催日の作業工程(16:00キックオフの時)
 

時 間

作業内容

備 考

08:00〜09:30 芝刈シングル(刈高26mm)  
09:30〜11:00 ローピング、ライン引き  
11:00〜11:40 ゴールセット スポンサー看板設置
11:40〜12:40 プレーイングクオリティー調査  
13:30 開場、前座試合用コーン設置  
14:00〜14:30 前座試合  
14:30〜14:45 ピッチチェック(マッチコミッショナー、主審他) ピッチ管理責任者立会
15:15〜15:45 選手ウォーミングアップ  
16:00 キックオフ ピッチ管理作業員10人待機
17:45 ゲーム終了  
17:50〜19:00 ピッチ簡易整備(ピッチ状態確認)
ゴール撤去
 
19:00 解散  

これらの作業は、ゲーム終了後のピッチ簡易整備(ディポット処理)とゴールの撤去以外は全て2人で行います。芝生にとっては管理作業自体がストレスになるので、作業人員は極力少なくしています。その為に、芝生の刈方、ラインの引き方、ゴールセットの方法など、日本平独特の方法で行っています。特にゴールはネット取り付けから設置まで2人の作業員が40分以内で出来るように、また、芝生を痛めないようにアンカーピンは一本も使わないよう工夫してあります。
ここにあげた工程は標準であり天候によってはこの通り行きません。どの様な事態になってもゲームが出来るよう準備していますが、どうにもならない時もあります。過去に実際にあった思いがけない出来事をいつか紹介します。

■雪のハプニング

平成8年2月18日、前日の夜に雪が降り朝ピッチは一面雪厚さは3〜5cm程度あったと思います。
キックオフは15時、私は午前中には解けて出来るようになると主張しましたが、主催側から
『主催者はどの様な状況でも試合が実施出来るように努力するのが努め、雪解けを待っていては努力したことにならない。何とか出来るようにしてほしい』
との要請で ”芝刈機に回転ブラシを付けて走ることにより雪をいくつかの塊にしてそれを集めて片づける” という方法で雪を処理しました。
まだスタッフが来ておらず全ての作業を4人で行いとても大変な思いをしました。他の会場は殆ど中止になりましたが日本平は試合が出来ました。


■ラインが描けない

昨年ですが、試合前の3日間雨が降り続きペイントでラインが描けない状況になってしまったことがあります。以前に使ったラインが少しでも残っていれば試合は可能ですが全く残っていない状態でした。
そこで、急きょ石灰で描くことにしたのですが日本平には石灰は置いていないため、販売店から届けてもらいました。しかし、石灰でラインを引くラインカーもなく市営グラウンドから持ってきました。ラインを引き始めたのはキックオフ1時間前で、何とか間に合いましたが、ラインの幅はバラバラで曲がりくねっており、情けない状態でした。それでも試合が出来たので良かったと思っています。ハーフタイムに再度引き直した覚えがあります。

■試合中ゴールネットがたれた

いままでに一度だけ、試合中にゴールネットを引っ張っているロープを止めているロープ止めにシュートが当たり割れてしまってネットがたるんでしまったことが有ります。
直ぐに応急処置をしましたが、処置の間も試合は続いていました。
ロープ止めは摩耗していたため割れたので、いまは全て1年で交換しています。

2000年8月 「もっと知りたい芝について」(第5回)