シアターからの帰り道は、見回りを兼ねて色んなところを回る。
それはもうすっかり新次郎の日課になっていた。
うん、どこも異常なしだな。
ハーレムの路地裏に来たところで、ふといつかのように星空を見上げた。
「わぁ・・・綺麗だなぁ」
そこには満天の星空。
季節は秋。丁度美しい星団、昴の見頃だ。
「天球儀もいいけど、やっぱり本物は綺麗だなぁ・・・」
・・・そして本当に本当の昴さんは、もっと綺麗なんだよなぁ・・・
そんなことを考えて、思わず笑みがこぼれた。
大切なあの人のことを考えるだけで、こんなにも幸せな気分になるなんて不思議だ。
「星は、すばる。 ひこぼし。 ゆうづつ。
よばひ星・・・すこしおかし。
尾だになからましかば、まいて」
「おっ、しんじろー!・・・今の何だ。呪文か?」
「あぁ、リカ。
これはね、日本の清少納言って人が・・・って、リカに言っても分かんないか。
えぇとね・・・『星で一番きれいなのは昴』って意味だよ。」
「ん?そうだな。すばるは美人さんだぞ。」
「そうじゃなくて・・・って、それはそうだけど・・・うーん。
あのね、ぼくが言ったのは、今見えてる星のことだよ」
どれだ?と首をかしげるリカに、夜空を指し示す。
そこには青白い光を放つ、6つの美しい星々の輝きがあった。
「えぇと・・・英語ではプレアデスって言うんだっけ。
サジータさんに習わなかった?」
「んーと、習ったような・・・どうだったっけな」
「日本語ではあの星が昴なんだ」
「・・・・僕を呼んだか?」
「わひゃぁ!す、昴さん!
いつからいたんですかっ!?」
「君が清少納言を諳んじていたあたりからか」
そういって悪戯っぽく微笑む。
「・・・もう、人が悪いですよ。びっくりしたじゃないですか」
「プレアデスはギリシャ神話で、猟師オリオンに追われて星となったプレアデスの七人姉妹という意味だ。
実際は数多くの星の集まりだが、大体6つか7つ見える。日本でも六連星と言われているしね」

「すばるの言ってること、相変わらずわけわかんねーな」
「ふふ、リカには難しいかな」
三人並んで星空を見上げた。
「綺麗ですよね・・・」
「ああ・・・」
新次郎は思わず隣の昴を見た。
「あ、いけね!リカ、マギーの店にいくとちゅうだった!
じゃぁな、しんじろー、すばる!」
物凄い勢いで、リカは走り去った。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
新次郎は隣に並ぶ美しい人に、どうしても目がいってしまう。
星々を見上げる澄んだ瞳・・・透明な肌に形のよい唇。
「なぁ、大河」
「えっ!?なんですか?」
ふいを突かれて、声が裏返った。
「さっき星のことを言っていただろう?
同じように僕のことも『昴』と呼んでみてくれないか?」
「えっ・・呼び捨てなんて出来ないですよっ」
「初めて会った時、昴は言った・・・僕のことは昴でいい、と」
「でっ、でも・・・やっぱり昴さんは昴さんですよ〜」
「他の誰でもない、君に呼んで欲しいんだ」
・・・こう言われると、勝てない。
意を決したように、新次郎はくるりと向き直った。

「じゃ、じゃぁ一回だけですよっ・・・い、いいですかっ。呼びますっ。
すっ、すすすすすす・・・・」
だんだん顔が熱くなってくる。何で名前を呼ぶだけなのに
こうも緊張するのか。
「すっ、・・・昴!」
「・・・らしくないね、新次郎」

そう言ってにっこり笑う昴。
その顔を見たら、今までの気恥ずかしさはすっかり吹き飛んで
新次郎は幸せな気持ちになってしまった。
「ずるいなぁ・・・昴さんは」
「ふふふ、やはり君は面白い」
扇を優雅に口元へ当てて、続けてこんなことを言う。
「そういえば、昴は中国では西方七宿に数えられて
白虎の座と言われるんだ。
白虎・・・ホワイトタイガー・・・・君みたいだね
・・・これもクロスワードと同じ。言葉遊びだけどさ」
「わぁ、ホントですねぇ・・・なんだか嬉しいです
・・・何より昴さんがそんなふうに、ぼくを思い出してくれるのが
・・・とても嬉しいです。」
今度は新次郎の屈託の無い笑顔。
(ずるいのは君だよ、新次郎・・・
その純真無垢な笑顔に、僕がどれだけ弱いか知らないで)
星は昴。星を見上げて思いを馳せる。
愛しい人を心に描く。
今も昔もそれは同じ。
それは片思いのようで。
実は思い思われ。
そんな二人を見守るように
星はいつまでも瞬く。
☆☆☆
小説って難しいですね・・・(がくり)見事に中途半端です。なんだこれ。
昴のことを調べていたら、色々面白いことが書いてあって全部入れたら変になりました。
漢和辞典で白虎の座、というのを見た時、ひゃぁぁ〜新昴〜!と萌えましたが
結構こじつけっぽいです(^^;
ここまで読んで下さってありがとうございました!
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