「心ひとつ」
        

なぜか最近、塾のテンションが上がっている。
「成績上げようゼ!」と一人の男の子が言った。
この子はうちにきてビックリするほど成績が伸びた。
それに触発されて他の子らも集うようになった。

これはすごく素晴らしい傾向。
成績を上げるというのは、割と漠然としているが、
やれば何かをなし得る。という学びになる。

恋愛にも多くの学びがある。
だけど、子供達には、嘘や駆け引きや変なプライドなどに振り回される恋とは無縁であってほしい。今は、まだ。

塾が時々、ひとつになる日がある。
皆が同じになる時。
これは一対一でしていても感じる時がある。
あっ、心が通い合っているな、と。

生徒の中には、驚かれるだろうが、
毎日来る子もいる。
階段を上ると小さく会釈して、チョコンと座っているのだ。毎日来るというのは、開校当初、そういう子がいたから、なんとなくそういうことが出来る塾とイメージがあるのかもしれない。

僕は子供時代、先生に「川野君は○○な子だから...」と決め付けられるのが嫌だった。
○○だから、これは無理でしょ、みたいな。

だから、僕は子供に絶対、そういう決め付けをしない。
(大人もそう。自分は○○な人間と決め付けないほうがいい。)
自分の周りの壁をひとつひとつ壊していってほしい。

壁を壊していくと、すごく楽になる。
「川野君ならできるよ!川野君には無理だよ!」
そんな風に言われるのは、とても辛かったし、
僕は中学生時代、毎日「死にたい」と願った。

で、「どうせ死ぬのなら、笑って死のう」と。
精一杯生きて死のう、と。
だから、勉強を頑張ってみた。
だから、友達を笑わせるのに必死になった。

でも、それは少し疲れる行為だった。
壁を取り払うのと、無理をするのとは違う。

子供達を縛り付けるものは、たくさんあるだろう。
だけど、自分を「どうせ」と言って片付けてほしくない。

僕は君達を○○な人間として見ていない。
僕の小さな塾で、自分の壁を取り払い、心の器を大きくしていってほしいな♪

先生は、「学生時代通っていた塾は楽しかったな♪あの先生、面白かったな♪」と言われるのが夢です。

おじいちゃんになっても、続けていきたい仕事。
だから、年を重ねても心と体を健康に保ちたいと思います。

いつもいつも僕と犬がいる塾に通ってくれて「ありがとう」。

僕を信じてください。必ず成績は上がります。
後悔はさせません。
だから、君達も僕の前でどんどん壁を壊していってください。
人生は辛いことの連続。だけど、僕らの場所にいる時だけは、リラックスして僕に仲間に心を預けてください。
卒業までの短い間、供に歩きましょう。









「夕陽の少年」


しばらくここに居させて。懇願するように少年は言います。

父ちゃんの顔、よう知らんのよ。
母ちゃんは、自分の腕に傷をつけてばかりやし...

少年はチワワのチムチムが大好きで、いっつも一緒に遊んでいた。

なんか、先生が父ちゃんならいいのに...

毎月、お婆ちゃんが年金から月謝を払いに来る。
ツルツルの新札で....

いつまでも遊んだら良いよ♪
何気にそんなこと言ったら、少し遅くなってしまい、けたたましい声がしました。ヒステリックに子供を叩き、罵ります。

慌てて、駆け寄ると、少年は「母ちゃん、お薬飲めば治るから♪」と言いました。少年の腕を引き千切らんばかりに掴むお母さんの腕は、傷だらけでした。

彼女は自傷することで心を落ち着かせていたの?

母親を労わりながら、少年は夕陽の向こうに帰っていきました。

「先生、また月曜日....」

あの少年も、高校生になっていることでしょう。
塾の西の窓に夕陽が差し込む時、ふと彼を思い出します。







「本当の友達?」

殴られたままの子がいる。
殴られるのを拒否することで、友達なくすの、怖い?
人前で殴られて、隣に女の子、座っているのに?

これって世代が違うから?

彼はいつも僕に差し入れを持ってくる。

「ありがとう。でも、ポテトチップス、太るでしょ?」

「大丈夫だって、もう食べてよ」

二度目に会った時は、手作りのケーキだった。

皆で食べた。女の子たちは驚いていた。

「先生、今日も学校でたくさん殴られたわ。授業中、足、蹴られた」

「そっか、なあ、先生んとこでな、しっかり勉強してみ、授業というものが何か分かるから、授業中の他の子らの態度、見とき。そして、しっかり頭、使い。殴られることに対して、今とは違う感情が生まれてくるから。今のままでは、君も痛い。それに友達のためにもならんよ」

しばらくして、その殴るという子を連れてきた。
今では、殴りあうことなく、学んでいる。結構、根気がいった半年はかかった。人前で人を殴る行為がどんなに浅ましく弱々しく惨めか、を。殴られる側も成績が上がるに連れ、プライドが芽生えてきた。

「今では、遠い昔のようやわ〜、先生」。

そうやな、そうやな。








「俺の腹筋、スゴクね?」

サンドバックにされちゃった。
Tシャッをめくって彼は言いました。
「お父さんがサ、殴る訳サ」

あっ、でもサ、先生、俺の腹筋すごくね?

小さな段が六つあるね。

あっ、先生、今日もサ、ベンチプレス借りていい?
ダンベルとかサ〜、鍛えたいわけよ。

いいよ。

あっ、本当?よさこいのさ〜いさい!

気をつけて使い....

分かっちょよ♪
先生サ、今度、期末で20位内入らんと、俺、クラブ止めさせられるかもしれんのや、だから、俺、頑張るっち!

そうやな〜、授業中、喋らんようせんと、な。一対一と違うんやし、皆のことも考えるようにならんとナ。

あっ、あっ、あっ、でもな、先生んとこにな、通い出したら、親がな、言葉遣いがマシになったち言いよった。

本当〜そりゃ良かった。そなら、勉強すっか?

あっ、先生も体鍛えているんやろ?俺な先生の次くらいに頭が良うなって、腕相撲強うなりてえんや!先生、もっと勉強教えてナ。んで、もっと筋トレの仕方教えて。親父が殴るんは、俺が落ち着きないからやんか、んやけど、まだ落ち着けんから、殴られても、大丈夫なように胸筋つけたいけん。まあ、そういうことで、ヨロシク!