オープンスチームランチ「ヴイクトリア & アルバートII」の製作


ヴィクトリア&アルバートIIとは? 

 前項の模型船用スチームエンジンが出来上がったところで、それを搭載するオープンスチームランチ「ヴイクトリア&アルバートII」を作ることにしました。
 ヴイクトリア&アルバートIIとは、ヴィクトリア女王とその夫君アルバート公の名をつけた英国王室ヨットの、乗組員や荷物の運搬用に作られたオープンランチだそうです。 

英国ディーンズマリン社製のキット

 そもそも今回作ったスチームエンジンは、カルダークラフト社の模型タグボート「イマーラ」に載せるつもりで、チェダーモデルズのボイラーとエンジンのキットを買ったのです。
 ところが作り上げてみると、とくにボイラーはマホガニーのラギングに金色に光る真鍮の金具が巻き付いているなど、ちょっとした工芸品のような趣があり、そのままタグボートの船体内に押し込めてしまうのは惜しいという気がしました。
 そこで方針を変え、オープンランチを作って載せることにして、クリック社のキット「アンナ」を買ってみたところ、船体に対してボイラーが少々大きすぎることがわかり、急遽アンナ用のエンジンとボイラーを作ったのです。
 さてそこで、もう少し大きくて、しかも安いオープンランチのキットを探した結果見つけたのがディーンズマリン社のヴイクトリア&アルバートIIだったのです。
 模型の縮尺は1:12、全長814mm、全幅228mm、排水量4.2kgです。国内の模型店では扱っていないようなので、ディーンズマリン社から直接買いました。
 

届いたキットは

 注文してから19日ほどで届いた荷物は、船の模型キットの例にもれず、大きさのわりにはとても軽いものでした。
 中身もいやに簡単で、FRPの船体とホワイトメタル鋳物の艤装品セット、デッキ外装用のマホガニーとオビーチ(オベチェ obeche)の細長い薄板(上の画像には写っていない)、それにほぼ原寸大と大きいが簡単な図面が2枚だけです。
 デッキの材料がないけれど自分で作れということかなぁ。でもそんなことはないだろうとEメールで問い合わせたところ、申し訳ない、発送後すぐにデッキを入れ忘れたことに気づき、急送したのでまもなく届くであろう、と調子のよい返事。
 9日ほどで届きましたが、受け取った旨のEメールに、ほかに何か、例えばインストラクションマニュアルのようなものを入れ忘れてはいませんか?と付け加えたところ、以上で全てである、簡単な構造の船なのでインストラクションマニュアルは不要であるとつれない返答。
 でもそれだけでは気の毒と思ったか、今当社でも1艘製作中なので参考にせよと、その途中経過の画像をいくつかEメールで送ってくれました。そのうちの1枚を下にあげましたが、搭載するエンジンはチェダーモデルズのピンテールホリゾンタルのようです。
 

2枚の図面は

 図面の片方は、パーツの配置図のようなもので、内部を透視した平面図と立面図ですが、寸法は一切書いてありません。
 もう一方の図面は床板や隔壁などの型紙で、これをマリンプライウッドに貼り付けて切り抜けと書いてあります。そんな上等な合板は持ち合わせていないので、シナ合板でいくつか切り抜いて船体にあてがってみたが、どうもしっくりとは合わないし、平面図や立面図ともきちんと対応していない。困った図面だなと思いつつ、送られてきている製作途中の画像を見ると、これまた図面とは一致していない。どうやら適当に作れということのようだが、いかに簡単な構造の船とは言え、スケールモデルがそんなことでいいんかねぇ(^^;
 製作は、まずエンジンの据え付け位置に関係するスクリューシャフトを取り付け、次いでデッキを保持する角材を接着しました。接着時の固定用具には洗濯ばさみを使うつもりでいたのですが、いざやってみると、洗濯ばさみは、はさみつける力が弱いうえに、先がハの字型に開くためにしっかり止められないので、使い物にならず、各種クランプを総動員することになりました。

ガスボンベが大きすぎる

 船体に隔壁や床板の一部を取り付け、動力部を仮置きしてみました。燃料のブタンガスタンクには市販のボンベをそのまま使うつもりでしたが、こうして載せてみるとかなり大きく、船首部のデッキの下に収納できません。もっと小さいガスタンクが必要です。
 オープンランチ「アンナ」ではチェダーモデルズから買ったものを使いましたが、もう一つ買うのも面白くないので自作することにしました。船体の脇に置いてあるのが、ガスタンクの胴体用に有り合わせの銅板を丸めたものです。
 ガスタンク製作で最も難しいのはガスの注入口をどうするかということです。タグボート「ガーノック」のガスタンクでは、ガスライターから取り外した注入口を使いましたが、こんどはそれも自作しようと思うのですが、さてどうなりますか。

やっとガスタンクが出来上がる

 ガスタンクの材料には、ボイラー用として買ってあった、厚さ2ミリの銅板を使いましたが、この厚さは直径5センチの小さなガスタンク用としては厚すぎで、鏡板のフランジ加工に手こずりました。
 しかし、何といっても一番大変だったのはガスの注入口の製作でした。
 中国製の安価なガスライターから取り出した注入口を分解して構造を調べ、それをそっくりまねして作ることにしたのですが、ことはそう簡単ではありませんでした。
 まず、注入口には直径2ミリ足らずの小さなコイルスプリングが仕込まれているのですが、これまでに溜め込んだ手持ちのスプリングの中には、ちょうど良いサイズのものがありません。しかたなくスプリング用の細いステンレス線をミニ旋盤を使って巻いて作りました。
 次に困ったのは、2か所に使われるOリングです。サイズが小さいだけでなく、線の細いものが欲しいのですが、市販のOリングには適当なものがありません。そこで、Oリングが使われる場所のサイズを按配したり、見本にした注入口から外したものを再利用したりして何とか切り抜けました。
 こうしてやっと出来上がった注入口は、見本の約4ミリという直径内にはとても納まらず、倍ぐらいの太さになってしまいました。

内装工事

 ガスタンクが出来上がり、その置き場所も決まったので、内装工事に取りかかりました。
 船体内がほぼ丸見えのオープンランチですから、内装工事が必要なのですが、キットに付いてきた図面は極めて大雑把で頼りになりません。キットの箱に張ってある完成写真も粗悪な画質で、これまたほとんど役に立ちません。。
 しかたなく、カタログの写真と雑誌「Model Boats」に載ったあるクラブの集まりでの出品作の写真とを参考にしながら進めました。
  内装材にはおもにシナ合板を使いましたが、問題は舷側の内側です。同じオープンランチの「アンナ」は船体が真空成型のプラスチック製で舷側の内側も滑らかだったので、そのままでよかったのですが、今度はFRP製で内側には不規則な凹凸があるので、そのままというわけにはいきません。舷側の内側の内装にも木材を使いたかったのですが、相手が曲面なので止むなく曲げやすいボール紙で間にあわせました。

参考図書 「Model Boats」 Vol.49 No.578 pp.43  (1999) 

デッキを張る前に

 内装の木部は油性ウレタンニスを筆塗りしても刷毛目は目立ちませんでしたが、舷側のボール紙を貼った部分には歴然たる刷毛目がついてしまうのは予想外でした。仕方なく有り合わせのエナメル塗料をまぜたものをエアブラシで吹きつけましたが、考えていたような板張り風にはならず革張りのような仕上がりになってしまったのは残念でした。
 内装が仕上がったので次はデッキの取り付けですが、デッキを張ってしまうと船首の内部は閉ざされてしまい、後で船首の方が軽いとわかってもバラストを積み込むことが出来なくなります。
 そこでバランスを見るために、エンジンやラジコン装置などをすべて搭載し、風呂桶の水に浮かせてみました。その結果幸いなことに、程よい深さの喫水で前後左右のバランスも取れて浮くので、バラストは必要ないことがわかりヤレヤレと一安心しました。

自作のガス注入口は失敗でした

  デッキが張れたところで次は塗装なのですが、その前に困ったことが起きました。
 ガスタンクのガス注入口からガスが漏れだして止まらなくなってしまったのです。仕方なく分解して調べたところ原因はふたつありました。
 そのひとつは組み込んだ自作のスプリングが弱いこと、もうひとつは使ったOリングがサイズの割に線が太すぎてうまく機能していないことです。
 この原因を取り除けるような素材を持ち合わせていないので自作はあきらめ既製品を使うことにしました。既製品とは中国製のガスライターから取り外した注入口です。
 上の写真の右端が自作品、あとのふたつがガスライターのもので、取付ネジはM4P0.5とM3.5P0.35の細目ネジです。M3.5P0.35のタップは持っていないので、この際だから買っておこうかと工具店に聞いてみたところ受注生産品と言われてビックリ!M4P0.5のほうの注入口を取り付けました。

 追記
 その後、上述の中国製ガスライターのガス注入口の仕組みが変えられていることに気付き、ひとつ買って分解してみました。
 その結果、変えられた注入口は取り外すことができず、したがって模型ガスタンクに使うことはできないことがわかりました。
 なぜなら、以前の注入口は真鍮製で、ライター本体にねじ込まれていたので、そっくり取り外すことができたのですが、今度のものは外側がプラスチック製になり、ライター本体のプラスチックと一体成型(もしくは接着)されているので外せないのです。

ガスはタンクへどう詰める

 ガスタンクへのガスの詰め方は、ガスライターへの充填と同じで、ガスボンベのノズルをタンクの注入口へ押し付けます。すると注入口内のバルブが下がり、液化ガスの流入口が開くとともに、タンク内に残っていたガスもしくは空気の排出口も開きます。
 液化ガスの注入中は気体が押し出されてきますが、液化ガスが出てくるようになれば満タンです。
 さて、満タンはいいとして、使用後のタンクのガスの残量は見た目ではまったくわかりません。ではどうするか。
 すべて物には重さ(正しくは質量と言うべきでしょうけれど)がありますから、どのくらいガスが入っているかはタンクごと目方を計ればいいのです。
 そのために以前は上皿バネ秤を使っていたのですが、今ではご覧のように携帯便利なデジタル秤が千円でお釣りが来る値段で手に入り愛用しています。

  ところで下記の雑誌記事の著者は、ガス注入用として広く使われているこのロンソン型のバルブは、タンクに入るガスよりも注入中に外に漏れてしまうほうが多いからと、自動車のタイヤに使われているシュレーダー型のバルブを利用しているそうです。
 ただし、タイヤでは一方的に空気を送り込むだけでいいのですが、ガスタンクではガスや空気を逃がさなければならないので、バルブは注入用と排気用としてふたつ取り付けます。
 しかしこのバルブは小さなスチームボートのタンク用としてはいささか大き過ぎますね。

参考記事
Thornber: A GWR 1400 Class Locomotive in Gauge 1(Part IX)
   Model Engineer No.4276 (6 July 2006)

ブタンガス注入アダプター

 前項の画像のガスボンベにつけてある注入用アダプターはチェダーモデルズの製品ですが、その構造をすっかりまねて作ってみました。
 Aの部分には内ネジが切ってあり、ガスボンベの口金にねじ込みます。
 (その内ネジの切り方については「お答えと参考資料の画像」の頁の「ブタンガスボンベ用のバルブ」とその次の項とをご覧ください)
 注入パイプの先端Bをガスタンクの注入口にあててガスボンベを押し付けると、他端のCがガスボンベのバルブを押し開け、吹き出した液化ガスがテーパー部の小穴からパイプに入り、Bからガスタンクに注入されるのです。

塗装・艤装・完成

 この船は、喫水線から上がロイヤルブルー、下が白という、変った塗装色になっています。ロイヤルブルーとはどういう色調かわかりませんが、タミヤのフラットブルーというエナメル塗料をスプレーガンで吹きつけました。そしてラビングストレイクには金色のエナメルを筆塗りしました。下の白い部分は、このFRP製の船体の外面が白く仕上げられているので、そのままということにしました。
 デッキは、マホガニーとオビーチ(オベチェ)とのプランキングはクリヤーの、縁取りとコーミングのバルサの部分はコーヒーブラウンの水性エナメル塗料を筆塗りしました。
 そして全体につや消しクリヤーの仕上げ塗料を吹きつけましたが、木部へはつや消しクリヤーをかけないほうが良かったようです。本来ならば木部は、表面の下ごしらえを十分にしてから塗装し、研ぎ上げて艶のある滑らかな仕上げにすべきなのでしょうが、とてもそこまでは手が回りませんでした。
 艤装といってもたいしたものはなく、ホワイトメタル製のボラードやフェアリードなどが少々ですが、面倒だったのはコーミングの前後につく手すりの支柱の植え込みでした。船首の両側には王室の紋章取り付け用と思われる出っ張りがあるのですが、残念なことにデカールの類は何も付いてきませんでした。
 その後、エリザベス女王の横顔が浮き彫りになっている金色の飾りボタンを見つけたのでそこへ貼り付けましたが、それを見たSRBCのメンバーが言いました「カアチャンの一張羅から取ってきたりして怒られたんじゃないの?」。
 出来上がったオープンランチの総重量は約5.2kgなのですが、これはキットの箱に書いてある数値よりも1kgほど多いようです。搭載した動力部は、前頁で紹介した英国のチェダーモデルズ社の素材キットを使って作ったエンジンとボイラーで、船体キットメーカーが指定する同社のパッフィンバーチカルと同じものなのに、どうして1kgの差が生じたのかはわかりません。

 

初めての走航

 今日は久しぶりに暖かくて穏やかな天気なので、出来上がったオープンランチを走らせてみようと思い立ちました。行く先は初めてのスチームボートを沈没させてしまったあの沼です。
 岸辺でボイラーに点火しエンジンの調子を確かめ、そっと水面に下ろしていざ発進!
 予想したよりもやや遅いかなといった感じのスピードで快調に進みます。予想外だったのは、思わぬ量の白煙が煙突から立ちのぼったことです。白煙とは言っても煙ではなく、ガスバーナーとエンジンの排気中の水蒸気が凝結した湯気なので、今日のような暖かい日にはほとんど見えないのではないかと思っていたので意外でした。
 煙突から白煙をなびかせて進む姿はまさに蒸気船の趣で、なかなかの眺めです。
 今日は間にあわなかったので無人で走らせましたが、適当なフィギュアを探して載せ、今度は公園の池で走らせたいものです。
 
 さて次の建造予定ですが、カルダークラフトのライホープとイマーラという2艘のタグボートのキットが残っています。ライホープは蒸気船がエンストしたときの救援艇として電動にする予定です。イマーラはスチームエンジン駆動にするのですが、ボイラーだけしか出来上がっていないので、中断しているエンジン製作を再開しようと思います。


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