スチュアート10Vエンジンの製作


素材キット

 スチュアート社の最もポピュラーなスチームエンジンである10Vには、未加工の素材キット、機械加工済みで手工具だけで組み立てられるキット、すぐ運転できる完成品の3種類の製品があります。
 ここに挙げたのは素材キットで、鋳型から取り出したまま、もしくは適当な長さに切り出しただけという文字通りの素材で、何の加工も施されてはいません。
 名高いスチュアートのエンジンをいつかは作ってみたいと2003年に買ってあったものなのですが、いつかそのうちになどと悠長なことは言ってられない歳になってきましたので、取り掛かることにしました。
 実は作りかけのスチーム船が何艘もあるのですが、どうも私は船作りが苦手で、ついついこういう機械加工のほうに手が出てしまうのです。
  なお、このキットは直接スチュアート社から買いました。
  価格はキットが61.50ポンド、送料が32.15ポンド、計93.65ポンドで、当時の為替レートで約1万8千円でした。

図面と製作手引書

 キットには、詳細な寸法(もちろんインチ)入りの全パーツの原寸図と組立図とが描かれている、大きなA2判の図面が含まれていますから、ある程度の機械加工の経験があればこの図だけで製作可能でしょう。
 私はキットとともにA5判64ページの製作の手引書も買い、おもにこれを参考にして製作を進めています。
 この手引書のありがたいところは、パーツの寸法にインチとミリとが併記してあることです。そのミリ寸法も、単に換算した数値ではなく、端数を適宜丸めてあります。
  ただし、ネジだけはインチサイズのままです。
 その中でも5/16X26TPIなどの太めなものは前頁のチェダーのエンジンを作るときにタップダイスを購入済みなのですが、BAネジのものは持っていません。
 パーツの組み立てに多用されている7BAネジは代わりに2.5ミリネジを使うこともできますが、たくさん用意されているスタッドネジが無駄になってしまうので、PollyModel(リンク集参照)からタップだけを買いました。
 なお、BAとはBritish Associationの略なんだそうですが、このBAネジなるものは、太さピッチともに極めて半端な数値の、まことに不思議なネジです。

 追記
 2007年末から2008年初にかけての雑誌「Model Engineer」にそのBAネジ規格制定の経緯が連載されました。
 私の英語力ではその詳細は理解できませんが、およそこういうことのようです。
 太さが数ミリもしくはそれ以下というような細いネジは、太いネジの形をそのまま縮小して作るのではなく、細いネジはこうあるべきであるという観点から設計製作されなければならない。
 ということで、指数関数なども使い、スイスの時計ネジの規格も参考にしての討議の結果生まれたのがBAネジで、その半端に見える数値には深遠なる意味合いが込められているようです。

パーツの加工

 スチュアートのエンジンキットの主要パーツは鉄鋳物なので不整形ですから、四つ爪チャックか面板に取り付けての旋盤加工になります。
 取り付けるにあたっての留意点の第一は、パーツのどこを基準にして位置決めをするかということです。
 この点に関して製作手引書にこんな注意事項が書かれていました。

 鋳物パーツではその外形を基準にするのが原則で、穴があいているパーツであっても、穴を基準にしてはならない。なぜなら鋳造中に中子がずれたかもしれないからである。

 前頁のチェダー製のエンジンキットのシリンダー加工でのミスは、このことを知らなかったことが原因だったということに気付かされました。

コンロッドに手こずる

 コンロッドは真鍮鋳物の素材を、おもに四つ爪チャックでくわえて加工するのですが、つかみにくい形をしているのでかなり手こずりました。
 その結果、削りあがってからよく見ると、上下軸に対して対称であるべき外形がそうなっていません。
 しかし外形はともかく、穴や切込みの相互位置は正確なはずだと仮組み立てをしてみましたが、案の定とうまく動きません。
 やすりでの修整削りでしのぐことにします。

これにも手こずった

  このバルブギャーのためのエキセントリックシーブとロッドとが一体になったパーツもつかみにくくて手こずりました。
 下の16ミリ径の穴は、手引書にはリーマを通すとあっさり書いてあるのですが、そんな太いリーマは持っていません。
 素材の穴を12ミリドリルでさらい、そこに押し込んだヤトイをつかんで端面と外形を削ってから、ボーリングヘッドで16ミリに広げました。
 上記のパーツと色が違ってますが、撮影時の光源の違いによるもので、材質は同じ真鍮鋳物です。

やっと出来上がる

 やっと何とか出来上がりました。
 まずシャフトを電気ドリルでつかんで回転させてみましたが、とくにギクシャクするようなところもなく、スムースに回るようなので、さっそくスチームでのテスト運転をしました。
 ボア16ミリ、ストローク20ミリとやや大柄なエンジンなので蒸気の消費量も多く、あまり回転数が上がらないこともあって、思いのほか静かに回っています。
  オプションとして逆転装置の素材キットもあるのですが、自己起動できない単気筒エンジンに取り付けても仕方がないので、これで終了ということにいたします。

ただ回しているだけでは

 出来上がったエンジンを、別頁に製作の様子を載せましたパッフインボイラーと組み合わせてみました。
 このエンジンは、今までの真鍮製のものと違って、主要素材が鋳鉄なので錆びさせる心配もあり、見栄えのこともあって、塗装しました。
 オープンランチ・ヴィクトリア&アルバートUに載せたエンジンに塗装したときにはタミヤカラーというエナメル塗料を使ったのですが、これは溶剤の蒸発によって乾燥固化するタイプなので潤滑油などの油脂類に弱く、じきに剥げ落ちてしまいました。
 そこで今度は、油性ペイントや油絵の具のように、油脂分の酸化によって乾燥固化する性質もあるらしいハンブロールエナメルで塗ってみました。
 まだ塗装後さほど運転していないので効果の程ははっきりしていませんが、少なくともタミヤカラーよりは長持ちしそうです。
 スチュアート社はスチームプルーフだという専用ペイントを出していますが、ハンブロールかもしれません。
 さて、このようなセットを組んで運転を楽しむのもいいのですが、どうもただ回しているだけでは物足りず、オープンランチに載せたいという気がし始めました。
 やや大きめなこのエンジンに合ったハルがあるかなぁなどと思っていたところ、たまたま久しぶりに覗いたキングストンモールディングスのサイトに新製品としてアフリカンクイーンのハルが載っているのを見つけてしまいました。
 ビリングボート社のアフリカンクイーンは全長74センチですが、こちらは全長93センチとやや大振りです。しかし、この大きさなら何とか我が家の風呂桶に浮かべてテストなどが出来そうです。
 でも、未完成の船が3艘もあるんだよなぁ・・・

 続きはアフリカンクイーンの製作の頁をご覧ください。  


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