ウィンダミアスチームボート博物館


ウィンダミアってどこだ

 英国イングランド地方北西部のカンブリア州は、大小多数の湖が点在する湖水地方として、またベアトリクス・ポターが描いた「ピーターラビット」の世界の舞台として知られています。
 このたび(2004年4月)その湖水地方を訪れるにあたり、いろいろと資料を見ているうちに、ウィンダミア湖のほとりにスチームボート博物館というものがあることに気づきました。
 そこで自由行動の1日を利用して、この博物館へ行ってみることにしました。

 追記
 湖水地方に関してベアトリクス・ポターの名だけを挙げたのは、私の文学的素養の無さをあらわすものでして、まず思い浮かべるべきだったのは詩人ワーズワースでした。
 私にとってその名は聞いたことがあるというだけのものでしたので、遅ればせながら図書館から詩集を借り出して目を通しております。

 追記の追記
 ワーズワースという名前は、言葉 words の価値 worth という、まさに詩人の名にうってつけのものだということに今回初めて気が付きました。

ウィンダミアへはどう行く

 ウィンダミアへは、ロンドン市街の北にある始発駅ユーストンから、グラスゴー行きのヴァージントレインに乗ります。
 この列車には1等車(懐かしい名前ですね)がついていて、赤いコートに身を包んだ専任の女性係員が乗り込み、早発列車では朝食のサービスもあるそうです。
 もちろん私は2等車でした。

この駅もそっけない

 ヴァージントレインに揺られること3時間半、湖水地方の玄関口のオクセンホルム駅に到着しました。
 この駅もロンドン郊外の模型ショー開催地の最寄り駅イーシャー同様、まことにさっぱりとしており、さしづめ日本なら「湖水地方へようこそ」てなことを書いた看板の一つも立てるところでしょうが、その手のものは一切ありません。もっともあるイギリス人に言わせれば「湖水地方だって?あんなところへ行ったってな〜んにもないよ」だそうですが。
 ここからウィンダミアへはローカル鉄道があるのですが、当てにならないらしく、迎えに来た現地ガイドの運転する車で、スチームボート博物館の所在地であり宿泊地でもあるボーネス・オン・ウィンダミアに向かいました。

ボーネス・オン・ウィンダミア

 ウィンダミア湖(Windermereのmereは湖という意味なので、ウィンダミア湖と書くと言葉が重なることになるそうですが・・・)は英国最大の湖ですが、わが国最大の琵琶湖よりはるかに小さな湖です。
 その湖の岸辺にあるボーネス・オン・ウィンダミアという町は各種遊覧船の発着地として賑わっています。町の目抜き通りには種々雑多な店が軒を連ね大勢の観光客が行きつ戻りつしている様子は、夏の軽井沢銀座を思わせます。ただ軽井沢と大きく違う点は、犬を連れて歩いている人が多いということです。しかもその犬達はまことにしつけがよく、吠えたり互いにいがみ合ったりすることなく飼い主の傍らを静かに歩いており、片脚を上げて用を足しているような姿も見かけませんでした。
 なお、4月のイギリスは春にはほど遠い気候でまだまだ寒く、湖水地方はご覧のような空模様続きで雨が多く、ストーンサークルなどは吹き付ける雨の中という散々な状況での見学でした。しかし現地ガイドに言わせると、これが典型的英国気候なんだそうです。比較的ましなのは5月と9月だとのことでした。

博物館へたどり着きはしたが・・・

 ウィンダミア・スチームボート博物館は、ボーネスの町の中心から1kmほど行ったところの湖岸にありました。
 しかし、いかに町の中心から外れているとはいえ、あたりはまことに閑散としており人通りもさっぱりです。
 博物館の隣には放牧地が広がっており、羊たちがのんびりと草をはんでいます。
 はたしてこの博物館はまだやっているのだろうかと、いささか不安になってくるようなたたずまいじゃありませんか。

  下記の博物館のURLはクリックしてもはたらきませんので、お手数ながらコピー&ペーストでご利用ください。

http://www.steamboat.co.uk/

 追記
 この博物館の看板をよく見ると、WINDERMERE STEAMBOATS & MUSIUM と、名前の間に & が入っています。
 これは、もともと WINDERMERE STEAMBOATS CENTRE として知られていたものを、近年になって MUSIUM としたことを表しているようです。

スチームボートはいずこ?

 まだ開いていないチケット売り場を横目に、博物館へ近づきました。
 屋根に苔の生えた、この工場みたいな建物が目指す博物館なのかねぇ・・・
 まあたしかにそう書いてはあるけれど、それにしても冴えない建物だなぁ。壁に描いてある絵も帆掛け舟だよ。
 庭ではカモ達がのんびりとうずくまったりしています。のどかすぎはしないかい?

 余談ですが、こちらの動物たちはあまり人を恐れないようですね。私が模型スチームボートを走らせている池のカルガモ達には、こんなに近寄ることなどとても出来ませんから。

 展示室に一歩踏み入れて目にしたものは???なものばかり。
 スチームボートはどこにあるの?

スチームエンジンがあったぞ

 展示室の奥のほうの壁沿いにひっそりと置かれている、スチームエンジンとボイラーを見つけました。
 エンジンはボア2インチ、ストローク3インチ、ボイラーはファイアチューブ式の石炭焚きで、圧力は80psiだそうです。
 小型ボート用とは書かれていますが、実際にボートに搭載した状態で展示してくれないと、小型とはどのくらいの大きさなのか私には見当がつきかねます。
 しかし、エンジンには錆が浮いたりしてはいるものの、ボイラー共々かなりきれいですから、はたして実際に使われていたものなのだろうかという感じがしました。
 それにこれはこの博物館の収蔵品ではなく寄託品、つまり借り物のようです。

大きなエンジン

 比較的大きなエンジンも2台展示されていました。
 左のBellis1890年製というコンパウンドエンジンは、ボア3.25インチ、ストローク5.75インチで、出力はおよそ81HPだそうです。
 右のSisson1908年製のトリプルエキスパンションエンジンは、ボアが高圧6インチ、中圧8インチ、低圧11インチで、ストロークは8インチですから、写真では同じような大きさに写っていますが、右のほうがずっと大きなエンジンです。
 トリプルエキスパンションエンジンは、私にはスチュアートモデル製の模型エンジンでおなじみなのですが、実物を見るのは初めてです。

気に入ったエンジン

 このエンジンは、ボア2.187インチ、ストローク2.5インチの小さなもので、長さ20フィートぐらいのスチームボート用だそうです。
 私はこのエンジンが一番気に入りました。
 と言うのは、説明にこんなことが書かれていたのです。

 このエンジンは、模型作りによく使われている3.5インチ旋盤ですべての加工が出来るように設計されている。シリンダーだけが鋳物で、あとの部分は入手しやすい丸棒や角材などの鋼材で作ることが出来る。

 心高3.5インチの旋盤といえばマイフォード7シリーズの卓上旋盤がそうですから、わが工作室でも製作可能というわけなのです。
 しかし簡単なオシレーティングエンジン製作でも手こずっている私には、それはあくまでも可能性があるというだけのことなのですが、でも何となく前途がぐっと広がったような感じがして嬉しくなりました。

写すも触るもご自由に

 日本の博物館は館内撮影禁止で、展示物にも手を触れるなというのが普通ですが、この国の博物館、とくにこの博物館は違っていて、撮影に関してはこんな張り紙がありました。

 館内はどこでもどうぞご自由にたくさん写真をお撮りください。そしてその写真をお友達やお仲間に見せてあげて、よしこの博物館へ行ってみようという気を起こさせてください。

 触るほうもかなり自由で、エンジン類は触り放題でした。ですから私は上記の気に入ったエンジンのフライホイールを手で何回も回して、プシュプシュプシュという吸気排気の音を楽しみました。

予期せぬ展示物

 実物のスチームボートが繋留されているという室内ドックへ向かう途中に、模型のスチームボートが展示されていました。
 いいえ、博物館によくあるディスプレイモデルではありません。小さなスチームエンジンを搭載したワーキングモデルです。
 ウィンダミアモデルボートクラブのメンバーの作品だそうですが、どれもすばらしい出来栄えで、とくに細部まで丁寧に作りこんであるエンジンとボイラーなどはお見事としか言いようがありません。私も頑張らなくっちゃ。

室内ドック

 ここにはたくさんのスチームボートがありますが、そばに寄ることはできず、高いところの通路から見下ろすことしか出来ないのは残念でした。
 どれもがいわゆる動態保存で実際に走らせることが出来るようです。ただし中には、積み替えたのでしょうか、スチームエンジンではなくガソリンエンジンのようなものを搭載しているボートもありました。
 博物館がくれたパンフレットを帰宅後によく読んでみると、天気さえ良ければこのスチームボートによる50分のクルーズが、ウィンダミアスチームケットルでいれたお茶とビスケット付きで、一人5ポンド(約千円)の料金で運行されているのだそうです。
 そうとは知らず帰ってきちゃって惜しいことしたなぁ。
 しかしパンフには続けて、クルーズの定員はたったの12名ですから博物館に着いたらすぐに予約をしてくださいと書いてあります。私が行ったときには入館者はチラホラとしかいませんでしたが、12名そろわなくても出航してくれるんでしょうか。
 でも、一人で12名分払ってもそれだけの価値はありそうですね。

屋外ドック

 ここにはEsperanceとRavenという2艘が繋がれていました。
 レイブンのほうは老朽化のため危ないから甲板には乗るなという表示がありますが、エスペランスのほうは何もないので入ってみました。
 もとは蒸気船だったのかもしれませんがエンジンは内燃機関でした。
 これまた帰宅後に読んだパンフには、この船はアーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」という子供向けの冒険小説に登場するキャプテンフリントのハウスボートのモデルになったものなので、ガイドツアー以外では立ち入り出来ませんと書いてあるじゃありませんか。ごめんなさいね。

 なお、私は読んだことがないのですが、この「ツバメ号とアマゾン号」とかいう小説は、湖水地方を舞台としていて、英国の子供たちにはよく知られた話なんだそうで、この博物館の外壁に描かれていた帆掛け舟も、この小説に出てくるもののようです。

 追記
 その後、「キャプテンフリントのハウスボートを目にしたときは感激のあまり涙があふれそうになった」と書いてあるアーサー・ランサムの愛読者のホームページに出会いました。そうと知っていれば、もっとよく船内を見たり写真を撮ったりしてくるんだったなぁ・・・

ここで買ったもの

 この博物館にも売店があり、ミュージアムグッズというほどのものではありませんが、いろいろなみやげ物が並べられています。
 ですが私は行く前から買うものを決めていました。何だと思います?
 それはモデルボートの設計図です。
 掲示してある見本の中から一番簡単そうなオープンランチ「Bat」を選んで、2枚組みの図を買いました。実物はドックにありました。
 しかし簡単そうとは言っても、全てのパーツを手作りするいわゆるスクラッチビルドをするには相当な経験が必要そうですから、図を眺めるだけで終わってしまうことでしょう。

モデルボート用の池があった!

 博物館を出て庭をぶらついてみると浅い池がありました。
 ん?これはひょっとして?
 そうです、これはモデルボート用の池でした。あの建物はウィンダミアモデルボートクラブのクラブハウスなのです。
 木曜と日曜にはクラブ員によるデモ走航があるのだそうですが、残念ながら私が訪れたのは4月16日の金曜でした。
 イベントカレンダーによると、5月8・9日にはモデルボートの展示、走航、コンペがあり、模型業者も出店するそうです。
 またモデルボートだけでなく、模型水上機クラブの飛行会など、さまざまな催しが予定されています。

ボーネスでの思わぬ買い物

 ボーネス・オン・ウィンダミアの町へ戻って歩いていると、ショーウィンドーにプラモデルの船が並んでいる店を見つけました。
 中に入ってみるとその店は新聞雑誌、菓子やおもちゃ、簡単なDIY用品など種々雑多な商品を扱っていますが、ビリングボート製などの模型船キットの箱が棚に積んであるコーナーがあり、模型船のパーツも置いてあります。その中に前から欲しいと思っていた紐で編んだフェンダーがあるのです。日本ではどこで売っているのかわからなかったものが、こんな旅先で手に入るなんて思ってもみないことでした。これもスチームボート博物館やモデルボートクラブがある町ならではのことでしょう。

帰りの列車でビックリ!

 さてこれはもうスチームボートとは関係の無いことなのですが、ロンドンに戻る列車で出会ったことをお話して、この頁のしめくくりといたします。

 オクセンホルム駅に着いたグラスゴー発のヴァージントレインのドアが開くと、デッキはアロハシャツのような軽装をしたイギリスのおじさんたちで充満しており、そのおじさんたちは降りる気配がありません。仕方なく彼らをかき分けて車内に入ってみるとそこもおじさんたちでいっぱいで、私たちの指定席にもおじさんたちが座っているではありませんか。すぐどいてはくれましたが、立ち去りもせずそのまま通路にいてまわりの連中と立ち話をしています。
 なんとなく修学旅行列車に一般客が紛れ込んだような趣です。
 しかし、イギリスのおじさんたちは日本の高校生よりはるかに図体が大きいだけでなく、それぞれが酒瓶やらグラスやらを手にしてグビグビやって、もうすっかり出来上がっているのです。その酔っ払い達が大声でわめいたり笑ったりしているのですから、いやもうその騒がしいこと。車両の中ほどからはジングルベ〜ルジングルベ〜ルなんていう声も聞こえてくるので、オイオイ今は何月だっけ?と手にした切符の日付を確かめたくなるありさまです。
 この連中とロンドンまで一緒かしらと思うと気が遠くなりかかりましたが、幸いにも次の停車駅で全員降りてくれました。ヤレヤレよかった〜。
 しかし、酔っ払ったおじさんたちの行状というものは、どこの国でも変わりはないようですねぇ。


前のページへ
戻る
トップページへ
トップ
次のページへ
次へ