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3D音場のところで述べたように、メインスピーカーの配置はできるだけ開角が広くなるように設置します。再生音のクォリティを確保するには、できるだけ開角を広くすることが望ましいのですが、広くなりすぎると今度は音像定位の点で違和感を生じてきます。定位に違和感を憶えない範囲で広くします。
因みにサントリーホールの1階中央通路付近から、ステージ一杯に広がったオーケストラメンバーを見るときの開角は約60度になります。ステレオ再生時にオーケストラのスケール感を味わうには60度近い開角を確保したいものです。
いよいよスーパーステレオシステムの核心部分に入ります。スーパーステレオシステムではサブスピーカーの設置場所が重要な意味を持ちます。メーカー指導の位置でもそれなりに威力を発揮しますが、Hi-Fiの頂点を極めるつもりで音質追求をするのであれば、このサブスピーカーの設置場所についても真剣に検討しなければなりません。
当ホールのレイアウトは私の18年にわたる研究の成果としてたどり着いた配置です。メーカー指導のものより相当異なっていますので、“平本
式スーパーステレオシステム”と呼ばせていただいています。
HSSの特長はと言うと、フロントサブスピーカーのレイアウトに尽きます。メーカー
推奨の壁面反射型のレイアウトに対して、リスナー対面型です。しかも、前面と側面のダブルで配置します。「間接音で部屋を満たせば音場になる」という考えではなく、「
スピーカーから発せられた音場情報は、出来るだけ正確にリスナーに届ける」という考えです。
私のスーパーステレオ研究は、当初は会場の雰囲気を求めてメーカー推薦の壁面反射型でスタートしました
。これは下図のミドルサブSPの位置にフロントサブSPを置き、正面の壁に向けて設置したものです。しかし、会場雰囲気と音像のクリアさは反比例の関係にあることがわかり、この方式の限界を知りました。
そこでクリアさを補うためにフロントサブSPを二組に分け、下図のように本来のフロントサブSP
の位置をミドルサブSPと称し、改めて正面にフロントサブSPを追加しました。音量に注意しながらバランスをとると、ホールの広がりがよりはっきりと表現されるようになりました。
しかしクリアさが満足できず、ついにミドルサブSPも反射型から対面型に変更しました。バランスを取り直すと、見事なまでの立体音像が浮かび上がることがわかりました。当初は水平方向だけリスナーに向けていましたが、その後の研究でスピーカーの正面をリスナーに向ける、つまり垂直方向もリスナーの方に向けることが、音場再生にとって非常に重要な要因であることが判明しました。水平・垂直両方向を自由に設定できるスピーカーとしては
富士通テン製のEclipseが最適であることがわかり、2007年12月〜2008年1月にかけて導入しました。その効果は絶大で、これによりHSSは完成したと言っていいでしょう。

SSP−5のフロントサブ出力をパラ接続にして
フロントサブとミドルサブの2組のスピーカーを鳴らしているのは、リスナーを取り囲むようにして音場を創るためです。フロントサブを追加すると音像が一層自然になります。
フロントサブがない場合は,メインの音が音場に溶け込んでいないという印象が拭いきれません。考えてみればフロントサブがないと標準ステレオの配置と同じですから、”異次元”の感じがするのは当たり前です。
フロントサブを追加するのはこの異次元臭を払拭するための対策になり、結果、何の違和感もない音像になります。したがってミドルサブとフロントサブがセットになって、HSSのレイアウトが完成します。
上下の位置は天井近くに取り付けます。演奏会場の天井は例外なく高く造られており、この高さを再現することが立体音像の構築にも大きく寄与します。
当初、フロントサブスピーカーは近くの店で、わりと素性が良さそうで安いものを買ってきました。特に厳密には音質チェックをしていません。特に
ミドルサブは天井吊り下げ金具が用意されているものを最優先して選別しました。
ところが、直方体のSPを天井高く吊り下げ、しかもリスナーの方にきちんと向けて取り付けるのは大変です。また、リスナーとの距離も近いので、サービスエリアも小さくなってしまいます。そこで、次の対策を取りました。
2005年10月にミドルサブSPを無指向性・点音源スピーカー Solid Acoustics社製正12面体スピーカーSA-355iに更新し
ました。このスピーカーの音質はかなり劣りますが、音場再生には効果抜群でした。
さらにその後の研究で、サブチャンネルの音質が、臨場感に大きな影響を与えていることがわかりました。特に高域特性の影響が大きく、スピーカーを正しくリスナーの方に向けて取り付けるこ
とが重要であることもわかりました。そこで、再生音の素直さと、取り付けの容易さの2点を重視して、
富士通テン製Eclipse TD-508Uの導入に踏み切りました。ミドルサブのみならず、フロントサブも同様の影響を与えるため、両方とも同時に更新しました。正12面体スピーカーはリアに移設しました。(2007年12月)
フロントサブは図のように部屋のコーナーに配するよりも、メインスピーカーのやや内側に配する方が効果的です。図でわかるようにリスナー前方には扇を広げたようにサブスピーカーが配置されており、前方空間に均等に音場情報を提供しています。
リアサブスピーカーはメーカー指導の配置を基本にしており、
これも天井に近い高い位置に取り付けました。当初は筐体が直方体であるスピーカーをやや内側に向けていました。メーカーでは小さなスピーカーでも十分低音が出るとしていますが、そうは言っても・・・との不安があり16cmのスピーカーを選んでいま
した。これはスーパーステレオに取り組んだ当初に購入したもので、以後リアスピーカーとして使い続けていました。
しかし2007年12月に、フロントとミドル用にEclipse
TD-508Uを導入したため、はみ出した12面体スピーカーを、これを契機にとリア用に移設しました。これによりリアスピーカーといえども、リスナーに向けて設置することが可能になりました。唯一の心配は、スピーカーユニットの数が多いとはいえ、口径が小さいため、低音再生能力が落ちるのではないかということでしたが、その心配は無用でした。むしろリスナーの方に正しく向けられたためか、音がすっきりするようになりました。
スピーカーがリスナーの方を正しく向いていない場合は、音場にコモリが感じられました。
さらに2008年1月にリアの12面体スピーカーもEclopse
TD-508Uに更新しました。サブスピーカーの音質が、システム全体に大きく影響することがわかった以上、リアの12面体スピーカーの音質が気になります。やはりここもEclipseにすべきだと思い、6個のサブスピーカーをすべてEclipseで統一することに踏み切りました。勿論リアSPの取り付け方向はリスナーの方に向けます。
結果は大正解で、音場の透明度があがり、恐ろしいほどに楽器の音像がリアルになりました。リアの音量を大幅に絞っても低音が出ることがわかり、このリアの音量減が、全体の透明感を一層高めたと思います。
スーパーステレオシステムにおいて、サブチャンネルの音量設定は最も気を使うところでもあり、時間をかけて調整しなくてはなりません。どのようにして当ホールの実態をお伝えしたらいいのか思案しましたが、リスニングポジションにおける実測データをお見せするのが一番良かろうと思い、データ測定しました。
測定データを時系列に紹介します。使用した音源は変遷していますが、HSSが進化するにつれて、サブチャンネルの音量に変化が見られます。CDプレーヤーの性能が向上すると、音場成分が豊かに再生されるようになり、
またサブスピーカーの更新によても、サブチャンネルの音量バランスを大幅に変えています。
2002年4月時点
CDプレーヤー:アキュフェーズ DP-75V
サブSP:フロント;TEAC製S-200 ミドル;TEAC製S-70
リア;audio-technica製 AT-5P500
この時点では、フロントサブとミドルサブは並列接続していたため、2006年5月時点のフロントサブ+ミドルサブが、下図ではフロントサブとして示されています。
フロントサブ(左)、リアサブ(中)、全サブ(右)

メイン(左)、サブ(中)、メイン+サブ(右)

2006年のレベル設定と比較すると、サブのレベルが高く、メインのレベルとほぼ同じレベルになっています。このことは、音像がクリアでなく、実像の完成度がまだ半ばであったことを意味しています。
2006年5月時点
CD/SACDプレーヤー:マランツ SA-11S1
サブSP:フロント;TEAC製S-200 ミドル;Solid
Acoustics社製SA-355i(12面体)
リア;audio-technica製 AT-5P500

測定に用いた楽曲は「カルミナ・ブラーナ」の冒頭部の一部です。合唱付きオーケストラ曲です。この測定値は一事例に過ぎず、このように設定しなければならないということではありませんが、一応の目安にはなります。
2006年時点では、サブのレベルが低いにもかかわらず、響きは豊かで音像は実にクリアです。
2007年12月時点
CD/SACDプレーヤー:マランツ SA-7S1
サブSP: フロント/ミドル;Eclipse TD508U リア;SA-355i(12面体)

(音量レベルはRMS値)
使用楽曲は「カルミナ・ブラーナ」の冒頭部です。
2008年1月時点
CD/SACDプレーヤー:マランツ SA-7S1
サブSP: フロント/ミドル/リア;Eclipse TD508U

(音量レベルはRMS値)
使用楽曲は「カルミナ・ブラーナ」の冒頭部です。
リアサブスピーカーを12面体スピーカーからEclipseに変えたことにより、リアのレベルが大幅に減少しました。
サブチャンネル音量の調整方法
マルチチャンネル再生システムでは、サブチャンネルの音量設定が成否を分けます。
音量設定をする手順を述べます。
@SSPの設定
先ずSSP-5の“FRONT/REAR
BALANCE”と、“FRONT MAIN/CENTER LEVEL”はセンターに、“MASTER
VOLUME”は最大にセットします。特に支障がない限り、以後固定します。“MODE”は”1”です。
リアサブ、ミドルサブ、フロントサブの順でサブチャンネルの音量設定を行います。
最初はメインとリアだけの音を出し、以後順次ミドル、フロントの音を追加しながら、レベル設定します。
Aリアサブの設定
リアサブは低音の出方に着目して、自然な響きになるように調整します。低音が出すぎると不自然な感じになるので、それが判断基準になります。
Bミドルサブの設定
次はミドルサブで、ホール全体の響きを決定します。レベルを上げすぎると、音像が鮮明さを欠くようになります。音像も遠めに感じるようになります。音像が鮮明さを保ち、なおかつ、ホールの広さを感じるようなバランス点を探します。
Cフロントサブの設定
最後はフロントサブです。レベルを上げると、
音像が鮮明さを増しますが、上げすぎるとギスギスした荒れた感じの音像になります。荒れた感じにならず、音像が鮮明さを増すバランス点を求めて調整します。
D微調整
一通りの調整が済んだら、各種のジャンルの音楽を聴きこんで、不自然な点がないかをチェックします。気になる箇所があったら、微調整を繰り返します。微調整には根気が必要です。時間を置いてチェックすると、一度はいいと思ったバランスも、問題点が見えてくることがありますので、何度も何度もチェックする必要があります。
この段階での調整はデリケートで、当日の体調の影響をも受けます。疲れていると感じ
たときは絶対にやらないことです。日を変え、時を変え、同じ曲群を繰り返し聴いていると、微妙な違いがきちんと判別できるようになるので、最後は自分の感性でまとめます。
大事な注意事項
なお、試聴の際は部屋を暗くします。明るい状態では、脳がコンサートホールの音響環境に順応しません。本件についてはラジオ技術誌に投稿した記事をご参照ください。
「視覚と聴覚の間の違和感をどうするか」 (401KB)
これから先、さらに進化するかも知れませんが、それを求めるのは欲張りすぎではないかと思えるほど、2008年1月時点で満足しています。NHK技研の24チャンネル再生を含め、これまでに発表されている方式で、これほどまでの臨場感を味わわせてくれるシステムはありませんでした。
スーパーステレオプロセッサーには1〜4の4つの「MODE}ボタンが用意されています。ディレイ効果の少ないものから大きいものまでの4種類です。4つのモードのうち「1」
を使います。「2」以上は封印します。
当ホールでは、椅子に浅く腰掛けて膝に手を置いた姿勢のとき(「リスニングルーム」参照)、メインスピーカーの開角が約57度、椅子の背に寄りかかったときが約55度です
。当ホールでは日常生活に影響を及ぼさないためには、現在のポジションが精一杯ですが、できればスピーカー開角60度は確保したいものです。
なお、メインスピーカーからリスニングポジションまでの水平距離は2.5m〜2.8mです。
当初はリスニングポジションを前後左右に移動させると、鋭敏に音質が変化しました。8個の、スピーカーから音が出ているので、そのバランスが少しでも崩れると、音質変化が大きくなるのは止むを得ないものと思っていましたが、その後の研究で、これはサブスピーカーの指向性の影響であることがはっきりしました。特にミドルサブの影響が大きいことがわかりました。2007年12月にEclipseに更新したところ、リスニングエリアが大幅に改善されました。
簡易防音処理を施して初めて実感したのが定在波です。防音処理を施すということは密閉空間を作ることで、これは余程の吸音処置をしない限り定在波から逃れることはできません。特に10帖以下の狭い空間では大きな影響が出ます。
当ホールはリスニングルーム兼リビングルーム兼応接室であるために、日常生活の美観を無視してまで、吸音措置をとることはできません。目下最大の懸案事項であります。
部屋の空間容積と壁、天井、床材が決まれば、定在波は計算で求めることが出来ます。と言っても私にはその力はありませんが、@Niftyのフォーラムに無料計算ソフトがアップロードされていて、これを用いて算出します。悲しいかな、材料の反射率の具体的な数値を持ち合わせていません。デフォルトで設定されている数値を目見当で修正して算出してみると、恐ろしいほど実態に近い結果が得られました。反射率が仮定のものであるだけに多少の相違はあるのでしょうが、大勢において実態を表していると思います。
計算結果と定在波の実測結果(日本オーディオ製レスポンスチェッカーRS−1使用)をご参照ください。
尚、RS−1のスイープ信号はワーブルトーンです。
StndWave.exeによる聴取位置での周波数特性(計算値)
メイン左側スピーカー駆動時
(画像をクリックすると拡大します)
StndScan.exeによる定在波(40Hz)の位置変化(計算値)
メイン左側スピーカー駆動時

(画像をクリックすると拡大します)
上記特性図は、リスニングポジションを、前壁から後壁に向かって中央線に沿って移動させたときの定在波の強さを表しています。
部屋の中央以外は、定在波の影響が避けられないことがわかりますし、壁際のポジションは最悪であることがわかります。
RS−1による実測周波数特性
メイン左側スピーカー駆動時(左) 右側スピーカー駆動時(右)

メイン左右スピーカー同時駆動時

メイン・サブ全スピーカー同時駆動時

(上記4画像はいずれもクリックすると拡大します)
当初、計算ソフトの存在を知らなかったため、いきなりRS−1で測定しました。正直言ってこの測定器は狂っているのではないかと思うほど、強烈な定在波が現れ仰天しました。その後計算ソフトでいろいろシミュレートしてみて、密閉度の強い部屋では、定在波は予想よりは遥かに強烈に発生し、不可避のものであることがわかりました。
なお、スピーカーの音圧周波数特性は、オーディオマニアの方ならば一度ならず目にしたことがおありと思いますが、リスニングポジションでの周波数特性は、見慣れていない方が多いのではないかと思い少し解説をします。
このグラフを見ると「何だ高域が全然出ていないではないか?これではHi-Fi以前の問題だ」と感じられる方も多いと思います。
RS−1(日本オーディオ製レスポンスチェッカー)の取り扱い説明書によると「リスナー席においては、音圧特性はフラットが最良という訳ではありません。2kHz以上では1オクターブにつき3dBずつ低下し、16kHzで9dB程度低下する特性が、不自然さのない音楽になります」となっています。
因みに、スコーカーとスーパートゥイーターの中間の高さにて、スピーカー前50cmで測定してみると、15kHzまでほぼフラットに出ています。
本当に空間での音は捕らえがたい不思議さを持っています。
この低域での定在波対策としては、グラスウール等の吸音材を20cm程度の厚さの波型にして、壁面の大部分を覆えばいいのでしょうが、大変な作業になります。とにかく、あのグラスウールのチクチク痛みが嫌なので、これに代わるロックウー(425×1360mm)を40枚ばかり買ってきました。40Hzのピークを現状より何とか6dB程度減衰させたいと思っています。ロックウール20枚を圧縮してウーファの後面と壁との間の隙間を埋めつくしてみたところ、3dB程度の改善がみられましたが、「定在波の暴れを±5dBに抑える」と言う理想環境には遥かに遠いことが良くわかりました。
室内の美観を一方的に破壊することも出来ず、定在波との戦いは今後とも続きます。
最後にHSSを成功させるためのポイントをまとめてみます。
(1)部屋の残響
リスニングルームの残響はできるだけ少なくしてください。床には厚手のカーペットを敷き詰め、壁面や天井には吸音材を貼り付けるのが望ましいです。またデリケートな音を聞き分けるために、暗騒音ができるだけ低いことが望ましいです。
また、部屋は10帖前後がようかと思います。スピーカーとの距離感は、遠過ぎても近過ぎてもよくないと思われます。(確認実験はしていません)
(2)サブスピーカーの選択
天井または、高い位置に取り付けます。
サブスピーカーの音質も無視できません。また、指向性の点から、正面をリスナーの方に向けることが大切です。
以上の2点から、Eclipse TD508Uを推薦します。水平、垂直の両方向に調整できるように、考慮されています。
(3)メインスピーカー
何と言っても音質はメインスピーカーで決まります。品質が良いに越したことはありません。完成品ではなくユニットを組み合わせている場合は、位相調整をすることで、音質が改善できます。
スピーカーの配置はできるだけ離して設置してください。リスナーから見た扇状の開角が60度程度になるようにしたいものです。
(4)サブスピーカーのレベル調整
大規模編成のオーケストラを音源にして行いますが、独奏楽器、歌曲もテストに加えます。特に歌曲はナマナマしさを判断する音源として欠かせません。
同じ楽曲群で日を変え、時を変えて、根気よくチェックし、少しずつ微調整をして追い込みます。
(5)部屋の明るさ
昼間、窓から戸外の明るさが入り込んでいる状態では、脳がホールモードになりません。カーテンを引いて薄暗くします。同じ音でも明るいときと暗い時とでは随分感じが違って聴こえます。
また、脳はいきなりのホールトーンには馴染みません。少なくとも5分程度は脳をホールトーンに誘導する時間が必要です。その際、使用する音源は独奏楽器から徐々に編成が大きくなる楽曲を使用することが望ましいです。睡眠導入剤ならぬ、ホールトーン導入曲です。
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