会誌に掲載された俳句
平成14年11月より原生林に投句
平成16年4月より地熱集に投句

平成二十年 踏生集


初市や多難予兆の幕開きぬ


新春の甘誘電話老いの声



気がかりなズボンの太さ着衣始


大小の柚子に値幅の摩訶不思議



大家族もとの二人の五日かな



平成二十年 地熱集


大墓地の一族の今北風強し


月冴ゆる保温カップにスープ注ぐ


漫然とただ茫々と枯葛野


平成19年1月、長良川(岐阜)河口堰と枯れ蘆 平成19年1月、長良川をまたぐ国道1号線
平成一九年 地熱集


追伸は一言がよし垂り雪


伏せ網に鴨遙かなり電話詐欺


茶の花の蘂の温もり病癒ゆ


鰤起し買い忘れたるひね生姜


はずれ籤棄つるは易し石蕗の絮


冬温し当てにならない体重計


敷松葉庭石被う月日かな


平成 一九年 原生林


黒焦げの焼き薯の芯凡に生く

     
だ ふ
釣り具とて懦夫には重し冬残照


ベランダへ小声で撒くや年の豆


パソコンのインク警告仕事始


釣り納め葱たっぷりの卵とじ


路線バス破魔矢の鈴の音が和す


救急のサイレン遠く除夜の鐘


裸木を抱きて貰う底力


熱々の鯛焼両手運は天


ニュージーランド モアブ、ユタ、USA


平成一八年 地熱集


冬木の芽拳をしかと握りしむ


貪欲に今年の予定日脚伸ぶ


ベンチ空く寒さ指より躬の内に


冬の谿ヘッドライトの頼りなさ


どんよりの空こそよけれ大根汁


寒い日を寒いと言わず三鬼の碑


マフラーをひしと締めたり朝の富士


平成一八年 原生林


襟閉めるもう存分の春の雪


冬晴や生きる幸せ無限遠


初恋の色はセピアに寒雀


訃報来る手の温もりに寒卵


五穀米炊けて男の寒の入り


山茶花の垣根は越えず故地住まい

   しるべ
六道の標なき無垢師走空


反論の意気地失せたり新走


梵僧の揃えし草履小春の陽


知らぬ地の交わす挨拶花八手


夕時雨去りて暗闇どっと来る


平成一七年 地熱集

ゆつくりと待つ時過ぎる冬木の芽


開けないホームページや春隣


疎遠より無縁になりぬ年賀状


声かけずかけられもせず初詣


生きる場は身分相応八手咲く


平成一七年 原生林

終らないインストールや空っ風


古稀過ぎて残る肩書しもばしら


新障子透ける朝日のぬくきかな


大皿の出番無きまま去年今年


我が住処ここが浄土と屠蘇を酌み


仇敵の賀状しみじみ年経ちぬ


平成一六年
地熱集

長年の苦労の酬い青木の実


切手はる手の冷たさや見舞状


公孫樹枯れて林に陽を渡す


亡き友の妻は賀状に生きる智恵


平成一五年 原生林


お茶の実の強き苦味や息白し


鉤止める棕櫚剥ぐ音の乾きけり


野の朝餉膝に転がる寒卵


浮寝鳥鉄橋を過ぎ目を覚ます


翳す手が語る人生落葉焚


ヒロインの気取りで歩む枯葉道



平成一四年 原生林


山椒の散りゆく枯葉香の強し




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