フレーム割れ事件
そんなある日、ますます酷くなった異音に首をかしげながらの通勤中、信号待ちでふと下を見て目が点になりました。「なんじゃこのボルトは?」アンダーガードとフレームの隙間からでかいボルトがこんにちは、と顔を出しているのです。すぐバイクを降りてチェックしてみると、なんとそれはエンジンの後方、一番見えづらい所にある固定ボルトが、ポッキリ折れて脱落していたのでした・・・只でさえ見えづらいボルトが、真っ黒けに汚れていたので見落としていたようです。
うーん参ったなぁ、何かボルトを工面して固定しないと・・・と思っていた私に追い打ちを掛けるように、さらに酷いものが見つかってしまいました。
フレームが割れております
普通ならここで「駄目だこりゃ、ツカまされた、部品取りにでもして買い換えじゃ!」とでもなるのでしょうが、私はそう簡単には諦めません。なんとかこれを溶接することにしました。
溶接には、バッテリー溶接機を使います。嘘だと思うかも知れませんが、自動車用のバッテリーで溶接ができるのです。これは恐怖のサビ取り雑誌「オールドタイマー」から仕入れた情報です。バッテリーを2個調達(安物、使い古しでもイケル)し、アース用のクリップと溶接棒用のクリップを買ってきてジャンパーケーブルに使う太いケーブルで直列(24V)に配線するだけです。
母材のどこかをマイナス側で挟み、プラス側に溶接棒を咥えて母材に近づけると、驚くほど強力にアークが発生します。
しかし、ものごとはそう簡単には進みません。私はアーク溶接なんてやったことがない。コツもイロハも何も知りません。とりあえず溶接面の替わりにタオルを巻いてサングラスを二重に掛けてやってみましたが、一発目のアークが飛んだ瞬間、ビビッて腰が引けてしまいました。恐る恐るもう一度トライしても、今度は溶接棒がくっついて赤熱化してしまいます。サングラスもほとんど役に立たず、目も痛くなる始末。
それでも、何とか頑張ってちびちびと割れた部分を全体的に補修できました(と、その時は思った)。その時の写真(なぜか紛失)を当時鉄工所で働いていた兄に見せた所、即座に「これは全然付いてへん」と言われてしまいました。まさにその通りで、その後わずか一週間で再び同じ様に割れてしまいました。表面が薄く溶けていただけだったようです。
これはいかん、というわけでもう少し本格的に作業せねばとて、溶接面を買ってきました。前回は単に割れた部分の周囲の塗装を剥いだだけで作業しましたが、今回はV字に溝を切って(これを開先というそうで、後で知りました)、奥まで溶けこみが行き渡るようにしてみました。
相変わらずコツがわからないし(たった1回でコツがわかれば苦労しませんね)、アークの光や音(けっこう凄い音がする)にビビってなかなかうまくいきませんが、前回よりは2倍ぐらい(当社比)頑張って作業しました。しかし・・・今度は2週間持ったものの、やはりまた亀裂が回復して元の木阿弥になってしまいました。
2回目の溶接痕に三たび発生した亀裂
その後、しばらくおいて、さらに(今度は3倍ぐらい)頑張って溶接しましたが、またまた毎日乗っているうちに亀裂が発生、三度目の正直とはなりませんでした。いよいよ諦めるか・・・という気分にもなりましたが、どうせ駄目もとで取り組んでいるようなものだから、このさいとことんやってみることにしました。
どうも、溶接が下手くそなのに加え、亀裂が裏まで回っていてそこまで作業が行き渡ってないのが原因ではないかと思われます。そこで、ついに一念発起してエンジンを下ろすことにしました。そうでもしないと裏側から溶接などできないからです。
やってしまいました。もう一度走れるのでしょうか?
単気筒だし、ダイアモンドフレームなので割とすんなりとエンジンは外れてくれましたが、それにしても簡単とは言えませんでした。またエンジンを取り付けなければならないのかと思うと疲れますね。
もう最初の溶接失敗から半年以上過ぎていましたが、最後の気合いを入れて4度目の正直に挑みました。さすがに4回目にもなると次第にコツが解ってきて、アークをしばらく持続させることができるようになり、しっかりと溶接棒を溶け込ませて「いかにも溶接」という雰囲気になってきました。今までの借りを返すつもりで、執拗にやっていた所、穴まであく始末。電流が強すぎたようです。やはり専用の溶接機と違いこのあたりが弱い所です。
かなり雰囲気が出てきた
よーしできた、もう安心だろうと思ったその時、なんと反対側に同じ様な亀裂を発見!・・・片側に亀裂が走ったまま長らく使っていたため、反対側に負担が掛かってしまったためと思われます。やっと終わったと思った時にこれだ・・・しばらく途方に暮れていましたが、放置するわけにもいかず、またまた気合いを入れ直して反対側も同様に作業を進め、ようやく終わった時にはすっかり日も暮れてしまいました(周りが暗いとますます溶接は難しくなる)。
それからエンジンを搭載して、始動するときはちょっと緊張しましたが、無事再始動できました。
ついに4度目の正直が実を結び、どうやらちゃんと溶接ができたようです。それが証拠にその後2万キロほど走りましたが、亀裂の再発はなくなりました。いやー本当に苦労させられる車両です。