キックダウンケーブル修理


この240に乗り始めてから1年ほどした冬、次第にアクセルペダルが重くなったり、また異様に加速が悪くなるという症状が出てきました。最初のうちは「またグリスが切れてどこかが固着しはじめているのだろう」程度に思い、スロットルリンクカムを分解清掃したりしてみましたが・・・

リンクカム分解の図。

症状は改善するどころか日を追うごとに悪くなり、特に寒い日などはアクセルペダルがすっかり固着して踏めなくなって、思い切り踏みつけてやっと踏めるようになる、という状態でした。しかも、悪いことに加速が悪くなるという症状は時に右折の信号待ちで起きたりして、あやうく事故になるという恐ろしい状況になりました。もうのんきな事は言ってられません。

よくよく調べてみたところ、どうも固着していたのはアクセルペダルやケーブル周りではなく、スロットルリンクカムにさらにリンクしているATのキックダウンケーブルだったのです。

赤線で示してあります

このケーブルは、リンクカムからエンジンの後ろを通り、ATの横っ腹に付き刺さっています。ケーブルはスロットルの動きに連動し、アクセル開度をAT動作にリンクさせ、さらにアクセルペダルを一番下まで思い切り踏みつけた時にATの中のキックダウンスイッチをガチンと作動させるようになっています。

このケーブルが240の場合割と駄目になるものが多いらしく、その場合はケーブルassyで交換になる、と言われています。しかし、自転車野郎を何年もやってきた私にとって、ちょっとケーブルのアウターとインナーの間に錆が入って動きが悪くなったぐらいでいちいち全部交換なんてむちゃくちゃ贅沢な話です。そんなもの、ワイヤーを抜いてていねいに汚れを取ってグリスを塗ってまた元に戻せば綺麗に直るもんです。

しかし、そうは言ってもこんな所自分で直せるんだろうか?その頃はまだ不安が一杯でした。そもそもどこにつながっているのかも良く知らなかったし、簡単に外せるものかどうかも解りませんでした。しかし、これをもしディーラーに持って行ったらまた何万円という請求が来るに決まってます。おお怖い。何とかして自分で直すぞ。

ともかく応急処置としては、ワイヤーの端部からCRCを吹き込んでケーブルを潤滑させればOKなはず。バイク用の道具にワイヤーインジェクターという、まさにこういうときの作業にうってつけのものがあるらしいことを知りましたが、手持ちに無いのでCRCのノズルをワイヤーのアウターの端部にテープでぐるぐる巻きにして吹き込みました。しかし当然効率は悪く、大半は隙間から漏れてしまいます。

それでも一時しのぎはできました。この作業をしてからしばらくは調子が戻り、持ちこたえてくれたのです。しかし、やはり一時しのぎは一時しのぎ以上のものではありませんでした。

ATのオイルパン。

とりあえず、ヘインズで勉強してATのオイルパンを外しました。AT側に接続されているケーブルの端部はこのオイルパンを外さないとアクセスできないのです。しかし、これが一苦労でした。ATのレベルゲージを刺してある管がオイルパンの側面にねじ込んであるんですが、これが回らない。猛烈に固いんです。しかし何としてもこのパイプを外さないことには作業が全く進まないので、レンチにジャッキをカマしてまで必死で外しました。これが後で大変なことになります。

なんとかオイルパンを外し、慎重にATFをポリタンクに回収しておいてからチェックしてみます。うーむ確かにヘインズに書いてあるようにエンジン側から回り込んできたケーブルが刺さっていて、その中にワイヤーがはめ込まれているカムが見えるんですが、ワイヤーの外側のスリーブがどうもがっちりATのボディに結合してるように見えました。ちょっとやそっとひねったぐらいではどうも取れそうにない。ここまでの作業でへとへとになり、しかももう周りも暗くなってきたのでひとまずあきらめて元に戻そうと思いました。しかし!

このパイプのボルトが!

このパイプについてるボルトをオイルパンの側にねじ込むようになっている訳ですが、これがどうにも回らないわけです。外すときに猛烈に無理をして外しただけに、こうなることはある程度予想できた訳ですが、とにかく最初の山が噛んでくれず、パイプの向きが微妙に影響して真っ直ぐ入れられないため、全く歯が立たない状態になっていました。ここでもうぼう然自失状態です。もちろんクルマはジャッキアップされたまま。日はとっぷりと暮れました。

そのまま、哀れな240はまるまる1週間、ウマに乗ったまま過ごしました。近所の人がどう思ったかは解りませんが、「あらまぁスエイシさんとこのクルマ、壊れちゃったのかしら」てなところでしょうかね(笑)。

そして今回も強力な助っ人、師匠の藤永氏が助けに来てくれました。3人寄れば文殊の知恵、と申しますが、二人でも一人で悩むのとは大違いでして、作業は迅速に進みました。

ともかく目的はケーブルをちゃんと動くようにすることであるから、まずはケーブルを何とかして外すことにしました。ATの中のリンクカムにはまっているタイコをドライバーを駆使して外し、ATボディにはまっているスリーブを捻り取りました。結局このスリーブはOリングの弾力ではまっているだけだということが解りました。

それから慎重に経路を確認しつつ、エンジン側からケーブルをすっかり外すことができました。

こ、このサビ汁は・・・

エンジンについたままの状態でやるより、はるかに効率的に作業できます。両端から大量のCRCを吹き込みながら、インナーワイヤーをゴシゴシゴシゴシ・・・すると中から出てきたのは上の写真にあるような「サビ汁」でした。ううーむ・・・しばらくしつこくサビ汁が出なくなるまでこの作業をつづけ、仕上げにスプレーグリスをこれまた両端からしつこく吹き込みました。これでワイヤーの方はバッチリ!逆の手順で組みつけます。

後はねじ込めないレベルゲージの管の方。これも一週間おいて冷静に考えたら、ネジ山を修正すればいいだけではないか?ということになり、やすりでゴシゴシと潰れていると思われる先端部を中心に溝を切り直しました。で、落ち着いてオイルパンを装着し、今度こそちゃんと元に戻すことができました。済んでみれば簡単なことです。

師匠のポンプを借用中。

そして抜き取ってあったATFを戻し、ぶちまけたりして減った分は新しいのを補給(結構適当だったりします)して完了。さっそく試走に出かけます。おおー心なしかアクセルペダルが前より軽くなったような気がする!それにしてもよくまぁあんな酷い状態で走っていたもんだ・・・というわけで、ワイヤーを全く交換することなく修理完了となりました。めでたしめでたし。

ちなみにこれを書いている時点でこの作業をしてから2年近く経過していますが、その後まったく問題なく、キックダウンは好調です。


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T.Sueishi Last updated 1998.11.08