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小説 【十三階建の屋上】

著 末森拓夢


 焼け落ちた屋根が俺に対して無惨に告げる、炎の恐さを思い知ったかと。灰色の雲が糸を引くように、焼け残った柱から細く白い煙が天に舞いあがる。いくら虚勢を張った煙でも、やがて巨大な雲に飲み込まれ存在を無くす。細く白い煙は俺の人生と同じだな。

 いったい誰が俺の店に火を付けたんだ……亜紀だろ。間違いないよ、犯人は亜紀しか考えられない。なにしろ俺の全財産持って逃げたんだ。確かに放火した証拠も金を盗んだ証拠もないさ。だが、どう考えてもあいつだ。二日前から連絡は取れないし、俺の店にも顔を出さない。だいいち、俺が住む部屋の鍵も、俺が営む店の鍵も、亜紀しか持ってなかったんだ。そして部屋にも店にも同時に泥棒が入ったんだ。

 これで俺が持っていた全ての財産は無くなっちゃったんだ。お笑いだよ、馬鹿だよ、狂ってんだよ、俺は。俺は、俺は最初から解かっていたんだ、四十過ぎた中年に近づく、独身女性がいるはずはないだろ。チクショウ! 別に亜紀に対して苛立ちとか、恨みとか、憎しみとかの嫌悪感を抱いてはないさ。だけど、俺を裏切る必要は無いだろ。

 俺はこれからどうやって生きていけばいいんだ。全ての財産は無くなるし、唯一の自慢、俺の店は燃えちまったし。どうすりゃ良いんだ。どうすりゃ良いんだ。

 俺はやっぱり馬鹿だね。死ぬ時の方法は既に考えてるよ、と客に格好つけ口にしていたが、今の置かれた状況からすると、ただの虚言を口にしてたに過ぎない。どうやら俺の人生もここで終わりだ。俺が死んでもみんな納得するだろう、店は燃え、全財産はなくなったんだ。いい見せしめになるよ、亜紀に対しても。

 ちょうどいいや、目の前にある十三階建の屋上から飛び降りよう。痛いのは一瞬だろ?苦しみも辛さも不運も全て消えていけば良いんだ、俺みたいに。

『了』
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  4. ブルースカイ・シンドローム

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