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さほど広くない駐車場にバックで大型トラックを入れようとして、ハンドルを回す手を止めた末森は、慌ててブレーキを踏む。思った方向にトラックが進んでいなかったようだ。
後退に入っているチェンジレバーを二速に入れなおし、数メートル前進させると、再びバックを試みる。今度は思う方向に進むようで、ゆっくりとした動きで所定の位置に着ける事が出来た。
末森は一昨日の夕方、広島でトラックに荷物を積み込み、そのまま大阪に向って走り出した。そして翌朝までに目的地に到着させ、そこで荷物を降ろす。昼間は車通りの少ない道を選んでトラックを止め、貪るように仮眠を取る。そして、夕方になると荷物を積み込み、再び広島に向けて発車する。長距離トラックの運転手としては普通の仕事だった。
広島と大阪を往復するときに高速道路は使わない。と言うよりは会社側が認めない。なにしろ荷主が会社側に払う料金には高速道路代は含まれておらず、遅れそうになって高速を利用しても、それはすべて運転手の自己負担となる。
ただ今日のように、特別な事情があるときだけは、会社側が負担する。末森が昨夜、大阪を発って国道二号線を走っていると、明石の辺りで事故が原因の渋滞に巻き込まれたのだ。全面通行止めは七時間におよび、明石を通り過ぎたのは夜空が微かに明るくなり始めた頃だった。
そうなるといかに運転手が焦ろうが、物理的に広島に到着するのは昼を過ぎる。そんな時は事前承諾なしに高速を使う事が出来る。だが、末森の不幸はまだまだ続いた。高速道路も大きな事故により、全面通行止めになったのだ。
結局末森が広島に戻ってきたのは、夕方だった。それから急いで十五トンもの荷物を手作業で降ろし、やっと車庫に戻ってきたのだった。
座席から腰を浮かし、後部ベッドにおいていた手荷物を下げてキャビンから降りる。鍵を掛けると、手荷物の中に入れていたワンカップの酒を取りだして、ふたを開ける。
末森の顔は幸せそのものだった。誰が見ていようが気に掛ける素振りも見せず、ゴクリゴクリと二口飲んだ。飲酒運転を心配する必要はない、彼の自宅は会社からチャリンコで五分ていどの距離だ。いや正確に言えば、チャリンコでも飲酒運転は成り立つが、よほどひどく酔っていない限りは、その事を咎める警官はほぼいない。
明日の仕事は夕方からだ、今晩の仕事はもうない。事故の影響で遅くなったのだから、誰にも文句は言われないし、誰にも文句を言えない。嬉しくもあるが、収入が減る事を考えれば悲しくもある。いや本当は、嬉しいのだ、酒を飲めることが。仕事さえなければ毎日でも酒を飲む末森だから。
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