不妊症や不育症、月経前症候群(PMS)、更年期障害、過敏性腸症候群などでお悩みの方のための鍼灸院です。

Suimeikan Therapy Room
翠明館治療室 〒192-0912 東京都八王子市絹ヶ丘1-68-1 Tel 042-689-4216    

●鍼灸徒然

2012年5月21日(月) 時間治療
先日、NHKのクローズアップ現代で、”時間治療”について、放送されていました。先月に引き続きNHKネタですが、最近、医学で解明されている現象が、実は東洋医学ではすでに広く知られている現象と同じようなことが分かってきているので、東洋医学の考え方が、ある意味非科学的ではないということの裏付けになるのではと、思ってます。

”時間治療”というのは、今までと同じ薬を同じ量服を、ある特定の時間に服用することによって、症状をより効果的に改善していく治療法で、この原理は、20年くらい前には分かっていたようです。

番組で取り上げられていた症状は、リウマチと肝臓がんで、いずれも夜中に薬を投与することで、リウマチの症状を改善したり、癌細胞を副作用がほとんどなく小さくすることが出来たという報告でした。

では、なぜ時間を変えるだけで、薬の効果が異なるのかというと、人間の体にはある一定の生理的なリズムがあります。いわゆる体内時計があり、その時計によって、リズムがコントロールされているわけですが、今までは、脳にだけしかないと感がられていた時計が、実は体のすべての細胞にそういう時計があることが分かっています。

それぞれの細胞には、決まったタイマーがセットされていて、必要な時間が来ると、生理的な機能が働き出すようになっているようです。たとえば、肝がんの治療の場合、夜になると肝細胞の解毒作用が高まり、抗がん剤を効率よく解毒するので、正常な細胞に対する副作用が極めて少なくなり、多くの抗がん剤を投与することが可能で、効果的にがん細胞を少なくすることが出来るとのこと。リウマチに関しては、やはり夜中になると、リウマチの原因物質が多く分泌されるので、その分泌が高まる前に薬を服用することで、効果的にリウマチをコントロールすることが出来るとのこと。

実は、この時間によって体の生理現象が変化するということは、東洋医学の世界では、広く知られている現象でした。これらの考え方は”子午流注”といい、暦でお馴染みの、いわゆる十二支を時間に当てはめ、夜中の0時を”子”の刻から始まり、、それ以降2時間おきに、丑、寅、卯、辰、巳と移り変わり、昼間の12時が”午”の刻、それ以降、未、申、酉、戌、亥と、24時間を表現していきます。


それぞれの時刻に応じて、どの臓腑に気血が流れるのかが決まっていて、例えば、肝臓には、夜中の1時から3時”丑の刻”の時間帯に気血が注ぎ込みますので、その時間に治療をすると、効果的ということが言えます。ただ、現実的に夜中に鍼灸治療をするのは難しいので、たとえば、肝臓に効果的な漢方薬を夜寝る前に服用することで、効果を上げることは可能でしょう。

このように、東洋医学では、季節や時間による体の変化を注意深く観察してきたので、その変化に合わせて効果的な治療をしてきました。この時間治療の考え方は、単に治療をするための概念だけではなく、日常的な健康法としても利用することが出来ます。

たとえば、ダイエット。細胞が脂肪をためこむ働きをコントロールしている時計があり、その働きは午後3時ごろに弱まり、深夜に向かって高まることがわかっています。ですので、その働きが弱い時間帯に食事をして、夜遅くに食事をしなければ、食事制限しなくても、脂肪が増えることはないという訳なのです。子午流注では、明け方の6時頃から午後3時ころまでには、消化器系の臓腑に気血が巡っていますので、しっかり消化・吸収をして、効率よくエネルギーに変えてくれるのです。

今後、この時間治療は益々研究され、様々な症状の治療に役立つことを期待しています。

2012年4月16日(月) うつ
先日、NHKスベシャルで、うつ病治療の最前線について、放送されていました。日本人はもともとうつ体質で、潜在的にうつ病である人が多いようですが、うつ治療といえば、薬物治療が中心でした。薬物治療で効果のある人もいるのですが、効果のない人も少なからずいます。また、うつ病と思っていた人が、実は双極性のそううつ病だったという誤診もあるということが、最近分かってきてます。

うつ病のメカニズムは、前頭葉の背外側前頭前皮質(DLPFC)というエリアの血流不足によって活動が弱まり、扁桃体の抑制が利かなくなることによって、不安や意欲喪失などのうつ病独特の症状を引き起こします。

この放送では、このDLPFCを刺激して、このエリアの血流を良くすることで、DLPFCの働きを活性化し、扁桃体の上手くコントロールすることによって、うつ病の症状を改善することができることを紹介してました。

治療する方法は、医療用に開発された磁気刺激装置で、前頭部を刺激していきます。1〜2週間連続で刺激することで、徐々に血流が改善し、うつの症状が劇的に改善していきます。番組では、10年来数種類の抗うつ剤を服用しても症状が改善しなかったうつ病の人が、この治療で改善していく様子を紹介してました。

頭には、沢山の経穴があります。磁気刺激で頭部の血流が改善し、うつ病が改善するということが、西洋医学でもようやく分かってきているようですが、鍼灸治療では、頭部に鍼をすることで、脳の機能を改善することは、経絡という概念が成立したころから分かっていました。なので、頭を刺激することで、うつ病や自律神経失調症などの脳機能の低下から来る症状は、鍼灸治療の得意とするところです。

この磁気刺激装置は、日本ではまだ認可されていないので、一部の大学病院などで、臨床研究として使用されているにすぎません。ただ、日本には、鍼灸という治療方法が、全国各地で受診することが出来ますので、磁気刺激に頼らずとも、鍼の刺激で、十分にうつ病を克服することが出来るでしょう。

以前紹介しましたが、神奈川県にある精神科病院では、薬の効かないうつ病に対して鍼治療が実際に行われ、一定の効果を出しているようです。抑うつ気分や意欲の喪失、睡眠障害、食欲の低下などが続いている場合は、脳の血流が低下している可能性が高いので、頭部を刺激して、脳の血流を改善しましょう。

2012年3月15日(木) 命門
命門 命門は、第二腰椎の棘突起下にある凹んだところ、あるいは、第二腰椎と第三腰椎の棘突起の間の凹んだところにあります。読んで字のことく、命の門であり、生命力を養う効果があります。丁度、左右には腎兪という経穴があり、腎は先天の気が宿るところと考えられていますので、その中心にある命門は、まさにその人が持っている命の力を表しています。

古典には”左側を腎経の腎兪であり、右側を命門とする説もあり、その後も様々議論されていましたが、腎には、腎陰と腎陽の二つの性質があり、それによって体の陰陽のバランスが取られています。東洋医学の理論では、左を陰、右を陽と考えますので、腎陰を司るのが左側の腎、つまり腎兪で、腎陽を司るのが右側の命門ということになります。

命門には、火を司る作用があり、相火、真火、真陽、元陽、元気などと表現しますが、ようするに体を動かす原動力、生命力を発現する原動力を意味します。腎は水を司る作用があり、真水、真陰、元陰、元精などと表現しますが、ようするに、体にある津液の元であり、体の潤し、滋養する作用を意味します。

命門も腎もお互いに助け合いながら、相互作用によって、初めて健康体を保つことが出来ます。また、生命力の源ですので、生殖機能との結びつきも強く、男性では、精気を蔵し、女性では子宮に通じるところでもあります。

経穴上は、図のように、左右に腎兪があり、その中心に命門があります。丁度、命門のお腹側にはお臍があり、神闕という経穴があります。神闕はまさに親から命を育んでもらった大切な場所ですので、その丁度背中側に命門があるのは、うなづけるところがあります。 不妊症の方は、女性、男性に関わらず、この腎兪が軟弱で、命門が黒い染み状になっていたり、著しく凹んでいたり、逆に出っ張っていたり、異常な状態であることが多く見られます。生殖機能になんらかのトラブルがあることを意味しているのですね。

ですので、この腎兪や命門に、鍼をしたりお灸をして、腎陰と腎陽を強くし、またそのバランスを整えることで、生殖力をUPさせることができます。そのことは、単に妊娠力をUPさせるためだけではなく、長生きで、健康な体でいるためにもとても重要なことになります。

2012年2月14日(火) 本治と標治
東洋医学の治療原則には、本治と標治という二種類の方法があります。本治の”本”は、根源・本源という意味があり、部位でいえば体の内部に当たり、その症状の原因になるものをいい、また本来備わっている正気をいいます。標治の”標”は、”本”に対応する概念で、部位でいえば体の外部に当たり、その症状自体をいい、またその症状を引き起こしている邪気をいいます。

東洋医学のバイブルである”黄帝内経”には、”治病求本(治病は必ずその本に求める)”とあり、疾病の本源に対して治療を行わなければならないということを意味しています。

ただ、もう一つの原則があり、”急なれば標を治し、緩なれば本を治す”という原則で、急性疾患(急なれば)に対しては、その症状自身に対して治療を加えなければならないということと、慢性疾患(緩なれば)に対しては、その症状の大元の原因に対して治療を加えなければならないということを意味しています。

たとえば、不妊治療の場合、内膜症や子宮筋腫などで、月経痛が辛かったり、経血量が多量であったりする場合には、痛みを取り除いたり、出血を抑えたりするような治療(標治)を積極的に行い、その後、月経痛や経量多の原因である内膜症や筋腫の治療(本治)のための、瘀血を改善するなどの治療をすることで、月経痛や経量が必要以上起こらないような体にしていきます。

これからの治療は、別々に行う場合もありますが、一緒に本治と標治を行う場合もあります。基本的には、最初は現在の一番辛い症状に焦点を当てて、標治を中心に治療をしていき、辛い症状が改善してきたところで、その症状を引き起こしている原因や体質的なもを改善していく本治を中心に治療をしていきます。

女性の場合は、ほぼ毎月、自分の今の状態を確認できる症状がありますので、標治の効果を速やかに確認することが出来ます。ただ、大元の原因をしっかり改善する本治をしておかないと、せっかく改善した症状がまた再発することがあります。西洋医学は、標治が得意で、標治中心の治療になりますので、どうしても再発することが多く起こりますが、東洋医学は、標治で症状を抑え込んだら、本治で原因を徹底的に改善していくので、再発することが少ないのです。

日常的に、この本治をしっかり行っておけば、あらゆる症状の予防になります。いつまでも健康体でいられるように、日常生活に東洋医学の知恵を生かしてください。



2012年1月18日(水) 鍼灸師会
鍼灸の業界には、日本鍼灸師会というのがあり、会員数6千人余り。日本医師会は、16万人、日本歯科医師会は、6万5千人、日本薬剤師会は、9万7千人という数からすると、とても小さな団体です。

鍼灸師のどれだけの人が、日本鍼灸師会などの団体に所属しているかというと、20%程度しかいません。医師会には、医師の60%が所属していることからすると、かなり低いといえます。

なぜ低いかというのは、一つには加入が任意であるということで、わざわざ入らなくてもその業が行えるということにあるでしょう。弁護士の場合は、弁護士会に所属しないと仕事ができませんので、弁護士として仕事をする場合は、必ず加入します。鍼灸師や医師、薬剤師などの医療関係の業界団体は、すべて任意なので、入りたくない人は高い会費を払ってまで入ることはしません。

もう一つは、自分が身に付けたい知識や技術を学ぶことが出来ないということで、業界団体に入らなくても、沢山研究会や勉強会はありますので、そこで十分に身に付けることはできます。やはり、わざわざ高い会費を払っても、何も身に付かないのであれば、意味がないということなのです。

ただ、だからといって、その業界の団体に入らないということは、その仕事を通じてサービスを受けるユーザに対して、十分な責任を果たすことができません。鍼灸師としての臨床的な知識や技術は、鍼灸師会で行われている講習会でなくても、研究会や勉強会で身に付けることはできますが、その会を主宰している人の独自の考えに基づくもので、偏った知識であったり、特殊な技術であったりする場合があり、時として、それが思わぬ事故を起こすこともあります。それは、ユーザーに対して不利益になるばかりか、業界全体の不利益にもなります。そうならないためにも、業界団体に入り、そこでスタンダードで効果的な技術を身に付け、万が一事故が起きた時にも、ユーザーがしっかりとした補償が受けられような保証体制を整えておく必要があります。

鍼灸という、歴史の長い治療方法で、その長い歴史の中で培われてきた様々な流派を、一つのスタンダードな形にすることはとても難しい作業であることは、鍼灸師である私たちが一番よく理解しているところですが、少なくともユーザーにとって、鍼灸治療を受けた時に、同じような結果が得られるようでなければ、どのような流派の鍼灸であっても、鍼灸という治療が本当の意味でユーザーに受け入れられることはないでしょう。



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